2019年4月20日(土)

八ツ場ダム観光、年16万人 国と地元の対立超えて
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2019/1/13 17:43
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樋田さんはダム問題に人生をかけた1世代前を思う。「不況や過疎問題が絡み合って最後はダムを受け入れるしかなかった思いは計り知れない」

八ツ場ダムを臨める展望台から。国交省主催のツアーを紹介している。(2018年12月、群馬県長野原町)

八ツ場ダムを臨める展望台から。国交省主催のツアーを紹介している。(2018年12月、群馬県長野原町)

国交省は八ツ場ダム工事事務所に地域振興課を置き、ダムを目玉にした誘客に全面協力する。「工事を見せれば、完成後にも来てもらえる」と遠藤武志副所長。

12月のツアー後、「チームやんば」のメンバーは酒を飲みながら今後の企画を話し合った。「水を入れる前、ダム底を歩いてもらうのはどうだろう」。地元からはそんなアイデアも飛び出した。

移転補償を受け地元を離れた住民も多い。移転対象470世帯のうち代替地に移ったのは94世帯だけ。振興資金を活用して移転・新築した小学校は温水プールやエスカレーターを備えるが、児童は20人しかいない。

樋田さんが経営していた温泉旅館は水底に沈み、移転先で19年中に再開する予定だ。ダムを訪れた人の消費を喚起することが今後の課題。「温泉の泉質にだって自信がある。いつまでも国には頼れないし、ノスタルジーに浸ってもいられない」

大規模公共工事は地域のありようを変え、ときには深い対立を生む。そうした歴史を乗り越えた先、ダム完成後の地域にはどんな未来があるのだろう。

◇  ◇

伸びる「インフラツーリズム」

国土交通省はダムなどのインフラを地域の観光資源とする「インフラツーリズム」の振興に力を入れている。活用を拡大させるための方法を議論する有識者懇談会も11月に設置した。

巨大な建造物を解説付きで見学できるツアーは人気を集め、開催数は右肩上がりで伸びている。国交省が2016年1月に開設したポータルサイトに掲載する民間ツアーは18年9月に41件と、16年9月の23件から倍増した。国など管理者のツアーや見学会も、16年9月の326件から1割増え、18年9月に360件になった。

サイトに掲載された367施設の見学者数(17年度)は計46万7千人に上る。このうち、ダムを見学した人が28万8千人で62%を占めた。河川の堤防や護岸の工事現場を見学する企画も人気が高く、河川関連の施設をめぐるツアーには7万6千人が参加した。

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