2019年6月19日(水)

楽天参入・5G…スマホ大競争号砲 (2019ニュース羅針盤)

2019ニュース羅針盤
2019/1/3 6:00
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携帯電話サービスはNTTドコモなど3社の寡占だったが、構図が変わる。楽天が10月、13年ぶりの新規参入を果たすからだ。通信が100倍速くなる技術「5G」の実用化もあって、社会インフラとして携帯の役割が一層高まる。

買い物を楽しみ、動画をみて、人生を記録する。スマホはますます身近なものになる
コラージュ 内海悠

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◆寡占に風穴、値下げ加速へ 通信速度100倍実用化

「料金と技術で新風を吹き込みたい」。2018年12月7日、楽天カラーであるえんじ色のジャンパーをまとい、三木谷浩史会長兼社長がこう語った。この日、東京都内に携帯基地局の1号機を置く安全祈願祭を開いた。イー・モバイル(現在のソフトバンク)以来の新規参入事業者として、19年10月に携帯サービスを始める。

楽天はNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの寡占市場に料金競争を引き起こす。楽天の具体的なプランはまだわからないが、すでにドコモの吉沢和弘社長が「楽天に対抗する」として、19年4~6月に通信料金を2~4割下げる計画を発表している。消費者に最大年4000億円を還元する。

 「第4の携帯電話会社」として参入する楽天の三木谷浩史会長兼社長

「第4の携帯電話会社」として参入する楽天の三木谷浩史会長兼社長

総務省によると、既存3社の契約数シェアは9割にのぼる。寡占の中で世帯平均の移動電話通信料は上がり続け、17年に初めて年10万円を超えた。楽天がどこまで風穴を開けられるかが焦点だ。

19年は料金体系がわかりやすく改善されることも期待される。

携帯各社は、新たに契約する人の端末代を割り引くため、割引の原資を通信料に上乗せしていると批判されている。例えば10万円を超す端末でも、割り引きして実質0円で買えることがあった。

政府はこの仕組みにノーを強く突きつけ、通信サービスと端末をすべて分けて販売する「完全分離」を求めている。規制改革推進会議が18年11月、安倍晋三首相に実施を要請しており、携帯会社を規制する電気通信事業法の所管省庁、総務省も法改正を準備している。完全分離が実現すれば消費者は料金を比べやすくなる。一方、携帯会社や端末メーカーにとってはシェア変動を招く転機となる。

19年は複雑な料金の仕組みが改善され、引き下げられると同時に通信速度が上がる節目となる。現在の携帯を支えている通信網より100倍速い「5G」の試験サービスが夏ごろから始まる。スポーツのイベントで、観客のスマートフォンの画面に、選手の動きを360度取り囲むように撮影した映像を伝送するなど、様々なサービスに生かす取り組みが相次ぐ。

ソフトバンク先端技術開発本部の船吉秀人部長は「企業から、映像を生かすサービスで活用したいとの声が目立つ」と語る。5Gの本格開始は20年。同社はテレビ局と、映像をリアルタイムに加工する際に、遅れの小さい5Gを活用する実験などを進めている。

日本の携帯電話の契約数は1億7000万件にのぼる。うち3割はガラケーと呼ぶ電話、メール主体の従来型端末だ。値下がりや速度向上を通じ、ネットで多くのサービスを利用できるスマホへの転換が加速する見通しだ。(堀越功)

◆プロの読み 慶応大学特任准教授 クロサカ・タツヤ氏

動画・ネット通販 サービスの勝負に

 慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。三菱総合研究所を経て現在、慶応大院特任准教授、企(くわだて)代表取締役。企業の戦略立案や政府プロジェクトを支援している。43歳。

慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。三菱総合研究所を経て現在、慶応大院特任准教授、企(くわだて)代表取締役。企業の戦略立案や政府プロジェクトを支援している。43歳。

携帯電話会社の今後の競争は通信サービスに加え、動画などコンテンツの配信やインターネット通販、ポイントといった総合的なデジタルサービスの戦いになるだろう。国内の携帯契約数そのものはあまり伸びない。ネットの利用に適しているスマホを通じ、消費者にいかに多様なサービスを提供するか、各社が知恵を絞る。

総合的なサービス競争に向け、弱みを補いあう合従連衡がすでに起きている。KDDIと楽天が18年11月に発表した業務提携だ。KDDIは、楽天がネット通販を広げるために築いてきた物流やネット決済の仕組みを借りる。楽天は今年10月から通信サービスを円滑に提供していくため、自前で通信網を築く地域ではないところでKDDIの通信網を借りる。

新規参入の楽天はポイントサービス「楽天スーパーポイント」を持ち、ネット通販大手でもある。既存事業の集客ノウハウなどを持ち込むと同時に、独自プランで契約者の獲得を狙うだろう。ただ、最初はつながりやすさなど品質で大手に見劣りする可能性がある。顧客を奪うのは簡単ではない。

消費者にとって最大の関心事である通信料金は、端末販売代金と切り離されてわかりやすくなり、引き下げ競争が起こるだろう。

現在の携帯電話サービスを支える「4G」の通信網は設備投資が一巡している。このため利益を生み出しやすい。料金をシンプルにすれば、販売現場での説明などにかける費用を減らし、値下げの原資にすることもできる。

ただ、携帯会社にとり難しい局面でもある。19年は通信網が5Gへ切り替わり始めるタイミングで、投資が必要だ。NTTドコモの場合、今後5年間で計1兆円を投じる。顧客獲得のための値下げと、次世代通信への投資費用の捻出のバランスに悩みそうだ。

期待の大きい5Gだが、ビジネスとして利益を生むまでには時間がかかる。個人も企業もサービスの対象になるものの、どのような収益モデルを描くのか、世界の携帯会社が模索している状態だ。

海外の通信関連企業の多くが、まず動画、次にネット接続可能な「つながるクルマ」で使われるとみている。ただ動画の場合、今でもネットでみられる。5G時代にふさわしい動画がどんなものか、まだはっきりとは見えていない。

一方で、5Gは地方の課題を解決する力を持っている。例えば患者の医療画像を診断できる専門家が地域にいないとき、離れた場所にいる医師が診ることができる。画像の乱れが小さいからだ。地域ごとのニーズに基づく限定された通信網を設けたり、関連する事業者で通信網を共有したりする工夫があっていいのではないか。

◆デスクの補助線 企業報道部次長 緒方竹虎
互いに競い豊かな市場築け
 日本の携帯電話市場がNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社寡占になったのは2013年。ソフトバンクが、イー・モバイルを子会社に持つイー・アクセスを買収し、今の形になった。楽天の参画で6年ぶりの4社体制になる。
 この6年の間、スマートフォンが急速に普及した。生活にも仕事にも欠かせない情報機器となっている。だが、要因は主に米アップルの「iPhone(アイフォーン)」など端末の進歩によるところが大きい。携帯3社が競い合った結果とは言い難い。
 携帯会社に投げかけられる批判はいま、かつてなく高まっている。契約者が払う通信料を新規加入者の端末割り引きにあてる手法は、最たるもの。2年間の契約で加入して途中で解約すると高額の一時金を求められる2年縛りや、加入手続きが2時間以上にもなる長い待ち時間など、挙げればきりがない。
 競争を起こすため、政府は楽天に携帯電波を割り当てた。楽天は、料金を含め、ビジネスの手法を先陣きって変える役割を背負う。
 その点で、KDDIと手を結んだことにはくぎを刺しておきたい。通信サービスを円滑に提供するためという意義は認めるが、期待されているはずの競争をほどほどの線で収めようという力学が働かないか。互いに価格やサービスを磨きあい、社会インフラとしての豊かな携帯電話市場をつくってほしい。

〔1月1日付日本経済新聞朝刊〕

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