ベトナム経済成長率、18年7%増 金融危機後最大
【ハノイ=大西智也】ベトナム統計総局は27日、2018年の実質国内総生産(GDP)成長率が7.08%だったと発表した。政府の当初目標6.7%を上回り、米リーマン・ショックが起きた08年以降最大の伸びだった。スマートフォン(スマホ)などを生産する韓国サムスン電子の輸出が好調だった。米中貿易戦争の影響で、繊維業界を中心に中国からベトナムに生産シフトが進んだ影響もあったとみられる。

サムスンはベトナム北部に2カ所のスマホ工場を持ち、南部には家電工場を構える。同社はベトナムの総輸出の約25%を占め、関連企業の進出も続く。現地報道によると18年のサムスンのベトナムからの輸出額は前年比12%増の600億ドル(約6兆6千億円)になったもようだ。
ベトナムは外資系製造業が経済成長をけん引している。台湾塑膠工業(台湾プラスチック)やJFEスチールが出資する合弁企業の高炉が17年に稼働。出光興産やクウェート国際石油などが運営する製油所が今夏からフル生産に入った。
国内勢でも不動産最大手のビングループが12月にスマホを発売、19年6月から自動車販売を計画する。農機やテレビなども国産化の動きがあり、技術力を高めつつあるベトナム企業が経済成長に貢献し始めた。
建設部門は9.16%増と高い伸び。ハノイやホーチミンなどの大都市ではマンション販売が活況。中間所得層の拡大で、コンビニエンスストアや食品スーパーなどの進出も続く。インフレ率は3.54%となり、政府が目標としていた4%以内に収まった。
米中貿易戦争では中国からの生産シフトがプラスに働いているもようだ。みずほ総合研究所は貿易戦争の影響でベトナムのGDPが0.5%程度増加すると指摘。アジアの主要国で「最もプラスの影響を受ける」とみる。
18年以降のベトナム経済も堅調との見方が多いが、世界銀行はベトナム経済の成長が緩やかに鈍化するとみている。19年は6.6%、20年は6.5%と予測する。
ベトナムは公的債務のGDP比率を65%に設定。公共工事の抑制や予算配分を遅らせており、政府開発援助(ODA)の新規案件は事実上ストップしている。ホーチミン市内の都市鉄道工事では日本企業への工事代金の未払いが生じている。
こうした影響もあり、18年のベトナムへの外国企業による直接投資は前年比1.2%減り、4年ぶりに前年を下回った。国営企業の民営化など経済改革は遅れ、持続的な経済成長には課題も多い。