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巨大監査法人、寡占に風穴 英当局が提言

信頼回復へコンサル部門との分離も

英国では建設大手カリリオンの経営破綻を機に監査法人不信が強まった=ロイター

【ロンドン=篠崎健太】巨大監査法人への風圧が英国で強まっている。日本の公正取引委員会にあたる英競争・市場庁(CMA)は大手4法人による寡占を問題視し、2社以上から監査を受けることを大企業に義務付ける提言をまとめた。会計監査とその他業務の分離案も盛り込んだ。東芝の会計不祥事で監査のあり方が問われた日本の論議にも影響を与えそうだ。

企業監査は決算書類が正しいかどうかを調べてお墨付きを与えるもので、株式市場に欠かせない機能だ。英国では1月の建設大手カリリオンの破綻を機に監査法人への批判が巻き起こった。経営悪化が急速だったとはいえ、外部から見抜く役割を果たせなかったためだ。監査法人を所管する英財務報告評議会(FRC)は6月、監査の質の向上を求める報告書を公表していた。

CMAが力点を置いたのが「ビッグ4」と呼ぶ、デロイトやKPMGといった4大監査法人グループによる寡占の見直しだ。

現在、英株価指数「FTSE350」採用企業の97%の監査をビッグ4が担う。CMAは、同指数が採用している大企業は少なくとも2社の監査を受け、うち1社はビッグ4以外と義務付ける案を掲げた。監査法人の競争を促し、複数の視点にすることで監査の信頼性を高める狙いがある。ビッグ4の占有率に上限を設けるのも一案とした。

大手は経営コンサルティングや税務支援など、監査以外の様々なサービスを提供している。CMAは「最高の品質を出すため、監査法人は監査に集中すべきだ」とも訴えた。ビッグ4は英国の売上高の75%以上を非監査業務から得ているとされ、利益相反の問題を避けるためにも、グループ内で経営や財務、報酬などの面で組織上分離することが必要だと指摘した。

上場企業による監査法人の選定に透明性を持たせるため、選定過程に対する当局の監視を強化すべきだとも主張した。アンドリュー・ティリー委員長は「監査市場の根深い問題への対処は長く遅れている」と強調。2019年1月21日まで一般から意見を募り19年の早い時期に結論を出す。

監査の不祥事を端緒に野党などから大手監査法人の解体論が出た。監督機関であるFRCの不備も批判されている。英政府の要請で同組織を調査したジョン・キングマン卿はFRCを「監査・財務報告・企業統治監督機構」という名称の新組織に改め、権限や体制を強くするよう提言した。

英国の企業統治や監査法人改革のあり方を参考にしてきた日本の論議にも一石を投じそうだ。複数の監査法人の関与案について、早稲田大学の柳良平客員教授(エーザイ最高財務責任者=CFO)は「監査の費用や事務負担は増すがダブルチェックで透明性や品質が向上する」と評価する。

英国で複数監査法人制が義務付けられれば、受け入れる企業側の態勢準備も大変だ。ビッグ4のロンドン拠点で働く公認会計士は監査の現場の実感として「質の向上のために必要だとは思うが、業務が煩雑になり、成り立つか疑問だ」と話す。企業の監査費用負担が高まるのも確実。株式上場の意義を厳しく問い直すきっかけになりそうだ。

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