初春大歌舞伎、石川五右衛門に挑む片岡愛之助さん 壮大な物語、テンポよく(もっと関西)
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関西タイムライン
2019/1/4 11:30
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お正月の恒例、大阪松竹座(大阪市中央区)の壽初春大歌舞伎。夜の部の「金門五三桐(ごさんのきり)」で、片岡愛之助が石川五右衛門を勤めている。近年はテレビドラマなど歌舞伎以外にも活躍の幅を広げ、いまや押しも押されもせぬ人気役者。「ホームグラウンド」である大阪松竹座で歌舞伎の舞台に立つのは3年ぶりだ。初役で演じる古典の五右衛門への意気込みを聞いた。

■望外の大役担う

「今年もいろいろなことに挑戦し、歌舞伎を見たことのない人に興味をもってもらいたい」と話す

「今年もいろいろなことに挑戦し、歌舞伎を見たことのない人に興味をもってもらいたい」と話す

配役を聞いた時は「花形でなく初春大歌舞伎。いいんですかという感じで、とにかく驚いた」と愛之助。タイトルに「三代猿之助四十八撰の内」とあるように、「金門五三桐」は三代市川猿之助(現・二代猿翁)の代表作。「おこがましくて、やりたいと思いもしなかった」と明かす。

天下を狙う大盗賊石川五右衛門が、南禅寺の山門の上でキセルを吹かして「絶景かな、絶景かな」というセリフが有名な「南禅寺山門の場」。歌舞伎では「楼門(さんもん)五三桐」のタイトルでこの1幕だけが上演されることが多く、通しでの上演は長く途絶えていた。今回上演するのは、三代猿之助が1974年に通し狂言として復活させ、後に四十八撰に加えたものだ。

真柴久吉(豊臣秀吉)と五右衛門の対立を軸にした壮大なストーリーで、大明国の遺臣の復讐(ふくしゅう)や、五右衛門の養父、武智(明智)光秀の敵討ちなど、複雑な背景が絡み合う。愛之助が演じるのは、久吉の嫡男久次の乳人役、此村大炊之助(このむらおおいのすけ)(実は宋蘇卿)と五右衛門の二役。空中で葛籠(つづら)から飛び出す「葛籠抜け」の宙乗りなど、見せ場が満載だ。

愛之助はシスティーナ歌舞伎で初演した「GOEMON 石川五右衛門」で五右衛門を演じたことがあるが、古典では初めて。「GOEMON」はスペイン人とのハーフという設定で、赤毛の五右衛門がフラメンコを踊る奇抜な演出。再演を重ね、フラメンコダンサーやジャニーズ事務所の今井翼との共演でも話題になった。「今回は古典にのっとって、しっかり深く作りたい」(愛之助)といい、スーパー歌舞伎で知られる猿翁らしく、テンポのいい芝居運びで、深く心情が描かれるという。

■猿翁から励まし

一方、「役の性根は変わらない」とも。GOEMONでも山門の場面や葛籠抜けは何度も演じてきた。「五右衛門は盗賊でありながら、弱きを助け強きをくじく義賊のようなところが魅力。スペクタクルに富んだ五右衛門をお見せしたい」と意気込む。複雑な物語だが、「初めて歌舞伎を見る人にも分かりやすく、古典を楽しんでもらいたい」と補綴(ほてつ)・演出の石川耕士と相談して脚本に手を加えた。

公演に先立ち、猿翁の自宅を訪れた。「『私に遠慮することなく、自分の五右衛門を作ってください』と言われ、非常にうれしかった」とほほ笑む。市川寿猿や市川笑也、市川猿弥、市川笑三郎ら、猿翁一門の経験者が共演に加わるのも心強いところだ。

一般家庭から歌舞伎の世界に入り、正月公演で主役を任されるようになった。自身を巡る環境の変化について聞くと、「そういうことは考えたことがない。僕はいただいた目の前の役を精いっぱい勤めるだけ」と気負った様子はみせない。

今年は3月の博多座での花形歌舞伎や、6月の三谷幸喜の新作歌舞伎への出演、9月の京都南座での花形歌舞伎など予定が目白押しだ。「今年もいろいろなことに挑戦し、歌舞伎を見たことのない人に興味をもってもらいたい」と愛之助。「松嶋屋に入れてもらい、(十三代)片岡仁左衛門や片岡秀太郎という上方歌舞伎に全力を注いだ人たちを師匠としてきた。1カ月でも多く上方で歌舞伎がかかるようにしたい」と関西での歌舞伎に決意を新たにしていた。

(大阪・文化担当 小国由美子)

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