2019年5月24日(金)

株式市場、マネーは再びアジアを目指すか
アジア総局編集委員 小平龍四郎

2018/12/28 11:32
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2018年の株式市場は28日で1年の取引が終わった。日経平均株価は残念ながら7年ぶりに通年の下落となった。視線をアジアなど新興国に向ければ復活を示唆するサインもともる。マネーは再び新興国を目指すのか。19年のグローバル市場を見通すうえでの重要な視点となる。

中国の上海総合指数が節目の2500を下回るなど、各国の日々の株価を追う限り、米国をはじめとする先進国と新興国の株価の連動性は高い。世界的に「同時株高」と「同時株安」がくり返されることが多い1年だった。日本の大納会を迎えるにあたり、少し落ちついて今年をふり返ってみる。

興味深いことがある。アジアなど新興国の株価を映すMSCIエマージング・マーケット(EM)指数は年始から11月末まで9.7%下落したのに対して、主要先進7カ国(G7)の株価推移を示す同G7指数はほぼ横ばい。しかし、12月だけの下落率はEMが約4%に縮まる一方、G7は約10%に急拡大する。グローバル株式市場は年の瀬にかけて乱高下をくり返したが、その中でもなお、新興国の株価は先進国よりも相対的に見て良好に推移した。株価が先見性を持つとすれば、来年の世界経済を見通すうえでの重要な示唆ともなるサインだ。

きっかけは何か。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が講演のなかで、景気を過熱もさせず冷やしもしない中立金利に言及したのが11月28日。これをきっかけに米利上げの早期打ち止め観測が急浮上。新興国から米国への資金流出に歯止めがかかり、株価が持ち直したというのが市場の見解だ。

11月下旬、シンガポール。米モルガン・スタンレーのチーフエコノミスト、チェタン・アーヤ氏は「ドル高圧力が弱まり、新興国市場の安定度は相対的に増す」との見解を投資家との会合で示した。アジアなど多くの新興国の経済運営は決して悪いものではなく「アルゼンチンやトルコなど例外的な国が新興国全体の見方を悪くしてきた」。米国の利上げが休止すれば、ドル高・新興国通貨安に歯止めがかかり、経済や市場が見直されるきっかけになるという。

実際、アジアにはタイのように7年ぶりの利上げに踏み切り、通貨が安定感を増した国がある。米国の景気減速と金融政策の変化で見直し買いが入るとすれば、こうした国だ。

今後のカギは米中摩擦の行方だ。みずほ総合研究所は、米中摩擦への対策として米国や中国向け輸出の生産拠点がベトナムなどに移るため、「中国以外のアジアはネットでプラスの影響を享受する」とみる。一方で、米中摩擦に勝者は存在せず「中国の成長率が6%を下回るところまで鈍るようならば、悪影響はアジア全域に及ぶ」(スティーブン・ローチ米エール大学シニアフェロー)といった声も少なくない。

新冷戦と言われるほどの緊張をはらんだ米中摩擦。焦点は貿易だけでなく、知的財産や構造改革、果ては両国の文化の違いに及ぶ。軍事衝突のリスクを口にする識者もいる。不確実性のなかで一筋の光明をともしながら、アジアの新興国市場は越年する。

(アジア総局編集委員 小平龍四郎)

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