TATERU、350件融資資料改ざん 上場前から横行

アパートの施工・管理を手がけるTATERUは27日、建設資金の借り入れ希望者の預金残高を水増しするなどの改ざんが350件見つかったと発表した。約30人の社員が、銀行から多くの融資を引き出すために書類の改ざんに関与していた。スルガ銀行で表面化した投資用不動産向け融資(アパート融資)での書類改ざんが業界全体で横行している可能性がある。

TATERUは東証1部上場で、2017年12月期の売上高は前の期比77%増の670億円。9月に審査書類の改ざんが発覚した後、弁護士などで構成する特別調査委員会を設け、不正の実態調査を進めてきた。調査結果によると預金残高を水増ししたり、他人の預金通帳の写しを顧客のものとして金融機関に提出したりした。
資料の改ざんは2010年ごろには始まっており、同社が東証マザーズに上場した15年以前から横行していた。さらに上場の数年前には改ざんが金融機関に発覚し、取引が止まった。同社は担当者個人による不正との認識にとどめ、幹部が改ざんの禁止を部内に通告した。だが、調査は実施せず、不正行為は続いた。
不正に関与したのは、全社員の6%にあたる31人の営業社員と認定した。調査対象とした2269件の物件のうち、15%にあたる350件で不正が見つかった。
背景に「営業部には部下は上司の命令に服従すべきであるという厳格な上下関係が存在」し、「下から上に対して率直に物を言いにくい風土であった」と指摘。過度なノルマ達成を目的に、資金の少ない顧客との契約を進めるため書類を改ざんしたと結論付けた。社長などの経営陣の関与については、決裁権限が営業本部長にあることを踏まえ、「証拠は認められなかった」とした。
取締役の処分も発表した。報告書では「不正行為を認識していたと認めるに足りる証拠は認められなかった」としつつも、営業部門を統括する古賀聡常務が同日付で辞任する人事を発表した。このほかに古木大咲社長ら10人の取締役が、3~6カ月間、月額報酬の10~50%を減らしたりする。
TATERUは調査結果を受けて「再発防止に努める」と謝罪。内部通報制度の充実やコンプライアンスの順守を徹底するといった再発防止策を公表した。
不正が認められた物件には、山口県地盤の西京銀行が融資を実行した案件も含まれるもよう。西京銀は同日、TATERUの調査結果を受け、「当行行員が融資審査関連書類の改ざんその他の不適切な取り扱いに対し関与したり、不審に思いつつ見逃し融資手続きを進めたりした事実は確認できませんでした」とのコメントを発表した。
アパート融資は土地の評価額を下げて節税効果が見込めるため、土地を持つ富裕層の相続税対策向けを中心に伸びてきた。全国的に資金需要が増えない中、地方銀行にとって数少ない成長分野だった。
こうした需要が一巡し、融資先を自己資金の乏しい会社員らに拡大。スルガ銀での不動産業者が借り入れ希望者の年収や資産内容を改ざんした書類に基づく不適切な融資につながった。行員も不正を知りながら融資したり、積極的に改ざんに関与していった。
スルガ銀問題や需要一巡が響き、日銀によると銀行全体の7~9月期の新規融資は前年同期比14%減の7344億円と、7四半期連続で前年実績を下回っている。
非上場の中小不動産業者が主導していたスルガ銀の不正と異なり、東証1部上場のTATERUで不正が横行していたのは、より深刻だ。TATERUなどのサブリース業者を巡る一連の問題発覚を受け、国土交通省は19年度から実態調査に乗り出す。結果次第では、新興系の業者だけでなく新たな不正が、発覚する可能性がある。