野村・永井CEO、「日経平均、2万円割れは異常値」
日経平均株価が2万円をはさんで乱高下している。株価の急変動で個人投資家の動きは鈍く、証券会社では収益の先行き懸念が強まる。2019年の日本株はどうなるのか。国内証券最大手、野村ホールディングスの永井浩二グループ最高経営責任者(CEO)に見通しを聞いた。
――12月に入り相場が乱高下している。なぜか。

「米中貿易摩擦や米政府機関の閉鎖など米国発の悪材料が重なり、投資家が一斉にリスクオフに走った。クリスマス休暇で市場参加者が少ないところで、アルゴリズム(自動のプログラム取引)主導で相場の変動が大きくなった」
「日経平均株価が2万円を下回る水準は売られすぎだ。日経平均の採用銘柄全体の株価純資産倍率(PBR)は一時、1倍を下回った。これは日本を代表する銘柄が解散した方がいいという意味で、明らかな異常値だ。日本企業の利益は19年も1ケタ台半ばの伸びが見込める。投資家心理が落ち着けば株式相場も回復する」
――相場の反転はいつか。
「中国が対米貿易交渉で一定の妥協をすれば市場は好感するだろう。先週ロンドンに出張してきたが、日本株を売った多くの投資家がいつ買い戻そうかを考えているようだった。いつまでも現金で持っておくということはない」
――19日に上場した国内最大規模のソフトバンクは株価が公開価格を下回り、個人の投資心理を一段と冷え込ませた。
「個別案件については言及を差し控えたい。一般論で言えば、配当利回り5%超というのは安定配当株として持つのに悪い資産ではない。(同社の)通信障害や、相場の地合いの悪さが重なって上場初日は下落したが、下値は限定的だろう」
――野村HDは19年4~9月期が赤字になるなど厳しい経営環境が続く。19年の優先課題は。
「個人・法人向けビジネスともに収益を伸ばしにくい中、硬直した費用を削減する必要がある。不動産費など全社の固定費を4年で600億円減らす。20年に向けてホップ、ステップ、ジャンプを目指したがつまずいた。巡航速度(の成長)に戻さなければいけない」
――国内の個人営業の改革が遅れている。
「少子高齢化、デジタル化の潮流に店舗が追いつけていない。地方の1県1店舗は残すが、東名阪で1日の来店数が1ケタしかない店舗があれば配置を見直す。銀行のような人員リストラは考えていないが、成果報酬体系を徹底する」
「野村には530万口座があるが、資産形成層の開拓には力を入れてこなかった。この発想を変え、取引表示画面や操作の快適性、利用時の満足感を高める。『いけていない』サービスを抜本的に改良する。LINEと共同出資して設立する証券会社を通じて顧客の間口も広げる」
――後任の社長候補に求める能力は。
「国内、海外すべてを仕切れる能力があればいいが、なかなか見当たらない。私心のなさというのが条件になるだろう」
(聞き手は関口慶太)
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