2019年5月26日(日)

改元へ 高まる祝賀ムード (2019ニュース羅針盤)

2019ニュース羅針盤
2019/1/1 6:00
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「平成」が31年で幕を閉じる。5月1日には皇太子さまが即位し、元号も改まる。4月30日の天皇陛下の退位は江戸後期の光格天皇以来約200年ぶりで近代以降では初めてだ。皇位継承の儀式や改元に向けた準備が進む。

新天皇が即位し、新しい元号で迎える日本にはどんな未来が待っているだろうか
コラージュ 内海悠

新天皇が即位し、新しい元号で迎える日本にはどんな未来が待っているだろうか
コラージュ 内海悠

◆天皇退位は200年ぶり 元号絞り込み本格化

天皇、皇后両陛下が退位後に仮住まいされる東京都港区の高輪皇族邸の周辺では「最近この辺の公園が次々ときれいになるね」などと会話する住民が増えた。散歩が日課の両陛下が退位後もお住まいの周辺を散歩されるのを想定した区の対応とみられる。

仮住まいの間に皇太子ご一家が退去した東宮御所にバリアフリー化などを施し、終わり次第、両陛下は東宮御所に移られる。退位した天皇陛下は「上皇」、皇后陛下は「上皇后」、皇位継承順位第1位となる秋篠宮さまは「皇嗣(こうし)」という呼称となる。

憲政史上初の退位に向けた準備で関係者が気をつかうのが、天皇と上皇が並び立つ「二重権威」の問題だ。憲法は天皇を「日本国および日本国民統合の象徴」とするが、上皇についての規定はない。

上皇の活動範囲をどこまでとするか、宮内庁は頭を悩ます。天皇、皇后が各界で活躍した人を慰労する園遊会や、日本に招待した国賓をもてなす宮中晩さん会に上皇、上皇后は出席されない見通しだ。海外要人との会見も親交の深かった人を除いて避ける考えだ。

新元号への関心は徐々に高まっている。元号は645年の「大化」から「平成」まで247ある。(1)良い意味を持つ(2)書きやすく読みやすい(3)俗用されていない――などの条件がある。新しい元号も前例通り中国古典を典拠に漢字2文字とする方針だ。

政府関係者によるとすでに複数の有識者に考案を打診しており、絞り込み作業が本格化している。アルファベットの頭文字は混乱を避けるためM(明治)、T(大正)、S(昭和)、H(平成)と重ならないようにする見込みだ。

「平成」は当時の小渕恵三官房長官が額に入れた文字を掲げて発表した。テレビ時代にふさわしい方式だった。「昭和」はラジオニュースで発表された。新元号も官房長官が発表する見通しだが、どんな形式になるのか注目される。

政府は新天皇が即位する5月1日を19年限りの祝日とし、10連休で祝賀ムードを高める。JTB広報室によると海外旅行の予約は「例年の3倍で、遠方の欧州が例年の5倍」だそうだ。「クルーズ船旅行が完売に近い」という。

企業活動にも影響が出そうだ。株式市場は長期の休みに入る。4月末から5月上旬にかけては例年なら上場企業の3月期決算発表の時期だが、これらが大型連休前後の限られた日に集中してしまうおそれもある。(島田学、朝倉侑平)

◆プロの読み 社会学者 鈴木洋仁氏

皇室の存在、より身近に 一世一元これからも

 すずき・ひろひと 京都大卒業後、東京大大学院博士課程修了。東京大大学総合教育研究センター特任助教などを経て、現在は東洋大研究助手。専門は歴史社会学。著書に「『元号』と戦後日本」など。38歳。

すずき・ひろひと 京都大卒業後、東京大大学院博士課程修了。東京大大学総合教育研究センター特任助教などを経て、現在は東洋大研究助手。専門は歴史社会学。著書に「『元号』と戦後日本」など。38歳。

30年にわたった「平成」を改めて振り返ってみるとき、よく分からない時代だったという思いを強くしている。昭和と比べたときの特徴は結局、「とらえどころがない」ということに尽きるのではないだろうか。天皇陛下の退位による時代の終わり方も昭和天皇の闘病を経た前回と違い、重苦しさがない。この点も平成の雰囲気をよく表していると思う。

陛下の退位が決まった2017年以降、インターネットでは次の元号の予想が飛び交い、いわゆる「大喜利」のような形で盛り上がった。元号をネタにするなど、昭和時代には考えられなかったことだ。

皇室は国民に寄り添い続け、国民の側も皇室を身近に感じるようになってきた。そうした中で、皇室や元号の"カジュアル化"が進んでいることを示す象徴的な現象と言える。

日本の元号は西暦645年の「大化」に始まり、1989年から続く「平成」まで247を数える。江戸時代までは同じ天皇の在位中でも慶事や災害などの折に、頻繁に改元が行われた。あえて時間の流れに節目を設け、社会の空気をリセットする意味があった。

明治以降は、天皇一代につき元号を1つとする「一世一元」が原則となった。明治には日清・日露戦争、昭和には太平洋戦争というように、国民の記憶に深く刻まれるような戦争が断続的にあったため、人々の記憶は元号と強く結びつき、天皇の在位を物差しにして時代を捉えるようになっていったと考えられる。

一方で、戦後は平和が長く続き、西暦の使用も普及。元号によって時代を認識することは困難になった。たとえば、「平成7年に何があったか」と聞かれ、いったん西暦に換算してから考える人も多いはずだ。最近は「昭和っぽい」という言葉が単に「古い」という意味で使われている。年月を経ていくうち「平成」も同様に古さを表す記号に変わるだろう。

必要性という意味では元号の存在感は薄れている。だが、1300年以上続く元号を、積極的に廃止すべき理由も見当たらない。中国で発祥した元号は日本のほか、ベトナムなどにも伝わったが、現在でも一世一元の制度として使っているのは日本だけだ。長い歴史を積み重ねてきた日本の元号には、時代区分というだけでなく、伝統や文化という側面もある。日本人は今後も元号を使っていくのではないか。

外国人労働者の受け入れが今後拡大する。日本には様々な背景や考え方を持った人たちが集まり、国の形は大きく変わる。次の時代は、新たな「日本らしさ」を模索する時代と言えるかもしれない。その時に日本の文化でもある元号の在り方を考えることは、意義のあることだと思う。

◆デスクの補助線 政治部次長 大場俊介
内政・外交も慌ただしい幕開け
 「自粛」で幕を開けた平成と比べ、今回の代替わりは政府や企業が10連休の経済効果を期待するなど祝賀ムードに包まれそうだ。新天皇の即位と改元を挟んで内政・外交の日程も相次ぐ。
4月には統一地方選、夏には参院選がある。トランプ米大統領が来日し新天皇と面会する案も浮上する。国際会議が相次ぎ、日本を舞台にした首脳外交も活発化する。安倍晋三首相は新たな時代を迎えた高揚感を20年の東京五輪・パラリンピックにつなげ、翌年の自身の自民党総裁任期満了を迎えたいところだろう。
2016年8月に天皇陛下が退位の意向を示されてから2年半近く。この間、退位を一代限りの特例法で認めることや、退位の時期、新元号の事前公表の是非などをめぐり首相官邸と宮内庁、保守派を巻き込んだ綱引きがあった。
 天皇は国政に関する権能を有しないと憲法は定める。皇室が政治に影響を及ぼすことも、政治が皇室を利用することもあってはならない。代替わりの節目に皇室と政治の距離感にも目を向けたい。

〔1月1日付日本経済新聞朝刊〕

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