株高の持続性、19年度の企業業績が焦点に
車や電機、アナリストの慎重予想増える
27日の東京市場で日経平均株価が大幅続伸し、一時、2万円台を回復した。前日の米国株式市場でダウ工業株30種平均が5日ぶりに反発し、上げ幅が過去最大になった追い風が大きい。日経平均が今後も堅調に推移するかどうかは、2019年度の企業業績にかかっている。この点で気がかりなのは、19年度の企業業績を慎重に見るアナリストが増えている点だ。
アナリストによる業績予想の傾向は「リビジョン・インデックス(RI)」と呼ぶ指標で確認できる。RIはアナリストが業績予想を上方修正した企業の数から下方修正した数を引き、インデックスの構成銘柄数で割って算出する。RIがプラスなら先行きに強気の見方が多く、マイナスになれば弱気の見方が増えていることを示す。

野村証券が2020年3月期を基準に算出したRIによると18年10月以降、ほぼマイナス圏で推移する。先週時点では製造業がマイナス20.7、非製造業は同7.7と、製造業で慎重な見方が多い。業種別では自動車がマイナス50、電機・精密が同40などと、外需企業のマイナスが目立つ。中国など新興国景気の減速懸念や、人手不足などによるコスト増を背景に、アナリストが下期以降の業績見通しをより厳しくみるようになった。
例えば半導体製造装置最大手の東京エレクトロンの場合、20年3月期営業利益のアナリスト予想平均(QUICKコンセンサス)は直近で2736億円。11月末に比べ230億円強下がった。12月7日付のリポートで業績見通しを下げたUBS証券の安井健二氏は、東エレクが手掛ける半導体装置が19年に前年比マイナス8%になるとの想定で業績予想を見直した。11月末時点と比べた業績予想の下方修正幅が大きい銘柄にはトヨタ自動車やパナソニック、ファナックなど外需企業が目立つ。
野村の松浦寿雄氏は「来期については今のところ10%の経常増益を見通しているが、やや強い。19年1~2月にかけてもアナリスト予想の下方修正は避けられない」と指摘する。
足元で進む円高も懸念材料だ。上場企業の今期の想定レートは平均で1ドル=108円80銭。現状の為替レートでもまだバッファーはあるが、下期に限ればトヨタや旭化成、TDKなど110円ちょうどに設定する企業が全体の過半を占める。ここからさらに円高が進めば、業績の逆風となりかねない。
問題は年間を通じて影響を受ける来期だ。大和証券の企業業績見通しでは想定為替レートを1ドル=110円、1ユーロ=130円と置いている。通年でみた場合、対ドルで1円の円高は通年の経常利益を0.46%押し下げる要因になるとしている。大和は1ドル=105円、1ユーロ=125円の円高シナリオなら、主要企業の19年度の経常増益率は7.9%から6.5%に鈍化すると試算している。
日経平均株価は25日までの大幅な下げで、指標面では割安さが目立っていた。1株あたり利益の何倍まで株価がついているかを見る指標である株価収益率(PER)は今期予想ベースで10倍台まで下げた。投資家の関心が来期業績にシフトするなか、市場では「19年度は銘柄ごとの業績格差が大きくなると予想され、業績の見極めが重要になる」(インベスコ・アセット・マネジメント)との声が多い。(菊池貴之)