喫煙率 全国一低い奈良 秘訣は?(もっと関西)
とことんサーチ

関西タイムライン
2018/12/27 11:30
保存
共有
印刷
その他

全国で最も喫煙率の低い都道府県は奈良県だ。思えば、奈良県に行くと喫煙所が少なく、喫煙者の筆者は困ることが多い。聞くと昔から低かったのではなく2000年代に入ってから急速に喫煙率が低下したのだという。どうして奈良で禁煙の機運が高まったのか調べてみた。

都道府県別の喫煙率は、厚生労働省の調査に基づき国立がん研究センター(東京)が3年ごとに算出する。最新の2016年データで最も低いのが奈良の17.1%。前回調査の13年から2回続けて全国最下位だ。近畿の2府4県では京都府が42位で下から5番目。大阪府が19位とやや高いほかは、全国平均を下回る。

まずは奈良県疾病対策課に喫煙率が低い理由を聞いてみた。担当者は「効果的な取り組みは特定できない」としながらも、「01年の調査では全国20位だったが、04年に45位になった」と教えてくれた。調べると、喫煙率は01年の29.0%から04年は24.2%と4.8ポイントも下がっていた。他の都道府県はおおむね1~3ポイントの低下にとどまる。

00年代初めになぜ喫煙率が大幅に下がったのか。鍵を握っていそうな人物として浮かんできたのは、京都大の高橋裕子特任教授(予防医学)だ。高橋教授は1994年、当時勤務していた奈良県の大和高田市立病院で全国に先駆けて禁煙外来を設立した。97年には専門家からメールで助言を受けながら禁煙に取り組む「禁煙マラソン」を始めるなど、同県で禁煙を推進してきた内科医だ。

高橋教授によると、97年ごろから禁煙外来や禁煙マラソンの報道が増え、当時の初診患者は年間約600人に上った。禁煙マラソンも約200人が参加したという。高橋教授は「報道などで取り組みが紹介され、県民にたばこはやめられるという意識が芽生えた効果が04年の調査に表れたのではないか」と分析する。

教育も一定の効果があったとみる。03年から小学1年生向けに禁煙に関する絵本を作って学校に配布。保護者向け副読本には「ニコチンパッチ」や「副流煙」など当時はなじみの薄かった言葉も記載した。「家庭で子供から話を聞いた親を禁煙に誘導することを狙った」(高橋教授)

近畿で2番目に喫煙率が低いが京都府(17.5%)ではどうだろうか。京都府健康対策課の担当者に質問すると、NPO法人「京都禁煙推進研究会」(京都市)が01年に始めた「防煙教室」を挙げてくれた。

防煙教室は小中高の児童や生徒らに、たばこのパッケージを見せて日本と外国の販売方法の違いやニコチン依存症になる仕組みを教える。同法人の土井たかし理事長(56)によると、開始から数年後に京都市の取り組みとして位置づけられ、08年ごろから実施校が増えた。現在は京都府とも連携して年間100校近い学校で開催している。

京都は特に若い世代の喫煙率が低い。国民生活基礎調査を基に計算してみると、20~24歳は14.0%で全国平均(17.7%)はもちろん奈良(17.3%)をも下回る。土井理事長は「子供が非喫煙者の道を選ぶよう促すのが狙い。若者の喫煙率低下につながっているのではないか」とみる。

喫煙率の低さで先行する奈良県と京都府だが、共通の課題も見えてきた。女性の喫煙率だ。奈良県疾病対策課の担当者は「男性の喫煙率が年々低下しているのに対し、女性は下げ止まりの傾向」と話す。実際、奈良県の男性の喫煙率は27.6%で全国45位と低いが、女性は7.4%で31位にとどまる。京都府も男性は46位の27.0%に対し、女性は17位の9.2%だ。

奈良も京都も早期の取り組みが喫煙率の低下に奏功したが、効果は主に男性に表れた。奈良県は18年度から女性を対象に講習会を開き、禁煙を支援する医療機関の紹介などを始めた。ただ、土井理事長は「喫煙防止の取り組みは効果が出るまで時間がかかる」と指摘する。女性の禁煙推進に向け、息の長い取り組みが求められそうだ。

(大阪社会部 宮沢翔)

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]