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森保ジャパン、成長につながるアジア杯に

2019年新年早々、サッカー日本代表はアジアカップを戦う。4年に一度、アジア・サッカー連盟(AFC)が主催して大陸王者を決める公式戦で、今回は1月5日から2月1日までアラブ首長国連邦(UAE)で開かれる。最多4回の優勝を誇る日本は、森保一監督が新旧の融合を進めており、格好の試金石となる。

5回目の優勝という結果はもちろん手に入れてほしいけれど、チームと選手に求めたいのは大会を通じて成長すること。成長の先に成功があるというイメージだ。

日本代表のチームと選手に求めたいのは大会を通じて成長することだ=共同

西野朗さんから7月にバトンを受け継いだ森保監督は充実の秋を過ごした。2列目に抜てきした堂安律(フローニンゲン)、南野拓実(ザルツブルク)、中島翔哉(ポルティモネンセ)が躍動。11月16日のベネズエラ戦に引き分けた以外はコスタリカ、パナマ、ウルグアイ、キルギスに3点以上のゴールを挙げて勝ってきた。

苦労しながらでも勝ち上がる

アジアの戦いはこうはいかない。互いに持ち味を出し合おうとする親善試合と違って、アジアカップで対戦する相手は1次リーグのトルクメニスタン(1月9日)、オマーン(13日)、ウズベキスタン(17日)にしても守備的、あるいは超守備的な戦いを仕掛けてくるだろう。そういう思い通りに事が運ばない試合を一つでも多く経験し、苦労しながらでも勝ち上がることに、この大会の価値はあるといえる。

前回までのアジアカップは16チームの参加で、4チームずつ4組に分かれてグループリーグを戦い、各組上位2チームが決勝トーナメント1回戦(ベスト8)に進めたので、どんな相手とトーナメントで対決するか、ある程度見通すことができた。

2列目に抜てきした堂安ら若手が躍動した=共同

それが今回は24チームの出場となり、決勝トーナメント1回戦がワールドカップ(W杯)と同じベスト16になった。4チームずつ6組に分かれてグループリーグを戦い、各組上位2チームは無条件で決勝トーナメントに進めるが、3位からも4チームまで成績順に生き残れることになった。そのため、トーナメントの山形が複雑になり、決勝トーナメント以降の日本の対戦相手が読みづらくなった感は否めない。

その分、日本としてはスカウティングの網を広げ、どこが勝ち上がってきても遺漏なく戦える対策を立てておかなければならない。そういう準備力で日本はアジアの中でトップラクスの力を備えているのでぬかりはないと思うけれど……。特に難しいのは決勝トーナメントの1回戦。前回オーストラリア大会のハビエル・アギーレ監督もここ(ベスト8)でUAEに1-1からのPK戦で屈してしまった。

日本の場合、海外組とJリーガーを組み合わせて戦う分だけ調整は他チームより複雑になる。Jリーガーは長いシーズンを終えて一度休みを取っている。海外組は中断期間に入って既に日本に帰国した選手もいれば、イングランド・プレミアリーグの吉田麻也(サウサンプトン)のように、クリスマスも正月休みも関係なく、働きづめの選手もいる。そういうコンディションが不ぞろいな選手たちをうまくまとめて、森保監督は優勝までの7試合をマネジメントしていかなければならない。

幸い、日本に選手層の厚さはある。森保監督も既にいろいろなシミュレーションをしていることだろう。

8月のアジア大会では21歳以下代表を率いて7試合を戦い、苦労しながら韓国との決勝までたどり着いた

W杯ロシア大会でベスト4に入るチームは必ずどこかのタイミングでターンオーバー(先発の入れ替え)を採用した。日本代表も1次リーグ3戦目、ポーランド戦で先発を2戦目から6人も入れ替えた。そういうやり繰りを森保監督は、ロシア大会はコーチとして西野監督の下でつぶさに観察していた。8月のアジア大会(ジャカルタ)では21歳以下代表を率いて7試合を戦い、苦労しながら韓国との決勝までたどり着いた。そういう経験を森保監督は今回のアジアカップで役立ててくれるだろう。

4年後と似た環境も体験

さらに先を見すえれば、4年後のW杯はUAEの隣国カタールで開かれる。開催時期も今回に近い。4年後のW杯と同じような環境で一試合でも多く戦うことは、カタールのW杯をにらんでも、いい訓練になるだろう。

F組の日本は仮に1位突破すると、シャルージャ、ドバイ、アルアイン、アブダビと決勝まで試合会場を転々とする。2位抜けだとF組最終戦からアルアインにとどまり続け、準決勝からアブダビで試合と移動が格段に楽になる。それで2位になった方が有利という話が出ているが、私に言わせれば、ロシアや米国やブラジルのような国土の大きな国ならいざ知らず、UAEくらいの国で移動を嫌がるようでは話にならない。

冒頭でも述べたが、成長につながるような苦労をしてこそ成功は身になる。日本には2位抜けなど考えず、移動をものともせずに全部勝って、「どうだ」と胸を張れる優勝を目指してほしい。楽な道と厳しい道があるとき、あえて厳しい道を行く。それが王道というものだろう。今の日本にはその道を行くだけの力はあるはずだ。

川崎は「走れない」のではなく、走らなくてもすむやり方を深めたようだ=共同

今年1年を簡単に振り返ると明治安田生命J1リーグは川崎が見事な2連覇を果たした。序盤のもたつきから逆転優勝に導いた鬼木達監督の手腕をまずたたえたい。このチームには個性的な選手が多い。今季、最優秀選手(MVP)に選ばれた家長昭博にしても足りないところを探したらあるが、そこを言挙げするより、いいところを引き出す方向でチームに溶け込ませた。

チーム全体の1試合の平均走行距離で川崎は最下位だった(107.323キロ)。それでも得点57は今季リーグ最多、失点27は今季リーグ最少だった。これはこのチームが「走れない」のではなく、走らなくてもすむやり方を深めた証しに思える。攻撃型のチームなので相手陣内に押し込むことができる。押し込んだ後でボールを失っても、その回収作業が素早く厳しい。それゆえに相手陣内で戦い続ける時間が長くなる。自陣ゴール前と相手ゴール前の間を何度も行ったり来たりすることなくサッカーができる。だから全体の走行距離を効率よく短くできるのだと思う。大したものである。

来季へ神戸の動きから目離せぬ

来季に向けては神戸の動きから目が離せない。今季はアンドレス・イニエスタの参戦で大いに話題を提供してくれたが、来季はさらに元スペイン代表でFCバルセロナでもイニエスタの同僚だったFWダビド・ビジャまで加える。神戸だけでなく、対戦相手のホームゲームのチケットセールスにまで好影響を及ぼしてくれているのだからありがたい。

来季、神戸には新たに元スペイン代表FWのビジャ(右)も加わる=共同

こういう海外のスーパースターに、若い選手が影響を受けてくれるとメリットは倍加する。かつてブラジル代表のドゥンガ、イタリア代表のスキラッチ、オランダ代表のファネンブルグがいたころの磐田がそうだった。この3人から多大な影響を受け、ぐんぐん吸収して伸びていった中山雅史、藤田俊哉、服部年宏、名波浩、福西崇史、高原直泰らが後の磐田の黄金時代を築くことになった。神戸もスーパーな外国人選手と並行して、伸び盛りのイキのいいJリーガーを集めるようになったら、本当にすごいチームになっていくのだろう。

今季はJリーグで地道に頑張ってきた指導者の活躍が光ったシーズンでもあった。アジア・チャンピオンズリーグに勝った鹿島の大岩剛監督、V2川崎の鬼木監督は言うに及ばず、YBCルヴァン・カップを制した湘南の曺貴裁監督、天皇杯準優勝の仙台・渡辺晋監督もチームを着実にレベルアップさせた。降格の危機にあったチームをシーズン途中で引き継ぎながら、9連勝で9位まで順位を上げた宮本恒靖監督もJ1監督1年目とは思えない水際だった仕事ぶりだった。

W杯ロシア大会での西野監督を含め、日本人監督の存在感がぐっと増した一年だったように思う。この流れが来年さらに強く、太くなることを願っている。

(サッカー解説者)

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