2019年4月26日(金)

天皇陛下の「平成30年」 変わらぬ象徴の姿

2018/12/23 17:12
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 全国戦没者追悼式、被災地訪問、そして国民を結ぶ象徴の旅。2018年=平成30年、多くの事柄が「在位中最後」となるなか、天皇陛下は皇后さまとともに例年と変わらず、全身全霊で公務をこなされた。両陛下の1年を写真とともに振り返る。

■戦後の平和に思い深く

全国戦没者追悼式で黙とうする天皇、皇后両陛下と参列者(8月15日午後、東京都千代田区)

全国戦没者追悼式で黙とうする天皇、皇后両陛下と参列者(8月15日午後、東京都千代田区)

天皇、皇后両陛下は即位以来、戦没者の慰霊を象徴天皇の重要な役割の一つと位置づけ、8月15日の終戦の日に日本武道館で開かれる政府主催の全国戦没者追悼式には毎年欠かさず出席されてきた。

黙とうの後、白木の標柱に向かって述べられるお言葉は、国民に直接、平和への思いを発する貴重な機会だった。

この終戦の日は、沖縄慰霊の日(6月23日)、広島・長崎の原爆忌(8月6、9日)とともに「日本人として忘れてはならない4つの日」として、天皇陛下が大切にされている。戦没者追悼式でのお言葉の文面は、年ごとに大きくは変わらないが、過去の戦争への強い思いがにじむ。

戦後70年の2015年以降は、先の大戦に対する「深い反省」との表現を使われてきた。在位中最後の18年は「戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ」と、戦後を振り返る表現が加えられた。

■沖縄の苦難を忘れず

戦没者慰霊のため国立沖縄戦没者墓苑を訪れた天皇、皇后両陛下(3月27日、沖縄県糸満市)

戦没者慰霊のため国立沖縄戦没者墓苑を訪れた天皇、皇后両陛下(3月27日、沖縄県糸満市)

天皇陛下は3月下旬、皇后さまとともに沖縄県を訪問された。沖縄を訪れるのは、皇太子夫妻時代を含め11回目。戦没者慰霊のため欠かさず訪れている国立沖縄戦没者墓苑(糸満市)では、面会した遺族らに「たくさんの戦没者を守ってくれてありがとう」と遺族会活動をねぎらわれた。

同行した翁長雄志知事(当時、8月に死去)は記者会見で「戦争で被った災難を気遣い、一人ひとりに声をかける両陛下の姿は、苦難の道を歩んできた沖縄の歴史をしっかりと記憶し、沖縄の人々に心を寄せ続けていくことの大切さをお示しいただいているようだった」と語った。

太平洋戦争で地上戦の舞台となり、終戦後も30年近く米国の統治下に置かれた沖縄。陛下は幾多の戦没者と戦後の苦難の歴史に格別の思いを寄せ、多くの琉歌(りゅうか)を詠むなど文化への造詣も深められてきた。今回の訪問では空手の演武を見学。多様な伝統文化に触れる機会を持たれた。

■島々を巡り、結ぶ

初めて訪問された沖縄県・与那国島で、日本最西端の碑を見学する天皇、皇后両陛下(3月28日)=共同

初めて訪問された沖縄県・与那国島で、日本最西端の碑を見学する天皇、皇后両陛下(3月28日)=共同

天皇陛下は退位の意向を示唆した2016年8月のお言葉で、「遠隔の地や島々への旅」を「天皇の象徴的行為として、大切なもの」と述べられた。

天皇、皇后両陛下がこれまで訪問した島は即位前も含めると、21都道県の55カ所。島々を巡り、その地で暮らす人々と心を通わせることは両陛下の重要な公務と位置づけられる。

利尻町ウニ種苗生産センターの育成室で、ウニの説明を受ける天皇、皇后両陛下(8月4日、北海道利尻町)

利尻町ウニ種苗生産センターの育成室で、ウニの説明を受ける天皇、皇后両陛下(8月4日、北海道利尻町)

退位を翌年に控えたこの1年も島々への旅は続いた。3月には沖縄県の与那国島を訪問。日本最西端の碑が建つ岬「西崎(いりざき)」に立ち寄り、島内の小学校で島の伝統芸能「棒踊り」を鑑賞された。漁協では水揚げされた巨大カジキを見学し、漁師に漁法について質問するなど、島民とも親しく交流された。

8月には北海道を訪問した際、離島の利尻島を滞在先の札幌市から日帰りで訪問。ウニの育苗を見学し、雄大な利尻山を背景に望む「オタトマリ沼」などの景勝地を巡られた。

■被災地の苦しみに心を寄せて

2018年も日本の各地で自然災害が相次ぎ、多くの人命が失われた。天皇、皇后両陛下は西日本豪雨と北海道地震の被災地を日帰りで訪れ、避難生活を送る被災者らを気遣われた。

西日本豪雨の被災者らに声をかける天皇、皇后両陛下(9月21日、愛媛県西予市の野村運動公園)

西日本豪雨の被災者らに声をかける天皇、皇后両陛下(9月21日、愛媛県西予市の野村運動公園)

9月、特別機や自衛隊のヘリを乗り継いで西日本豪雨の被災地に入られた。気象条件が悪く、日程の変更を余儀なくされたものの、岡山、広島、愛媛の3県を計2日にわたって訪問された。

仮設住宅の住民らと懇談した愛媛県西予市では、陛下は被災した女児の手を握り、家族らの話に耳を傾けて「怖かったでしょう」「頑張ってください」と語りかけられた。

北海道胆振東部地震の被災者や救助に尽力した人たちに声を掛ける天皇、皇后陛下(11月15日、北海道厚真町)

北海道胆振東部地震の被災者や救助に尽力した人たちに声を掛ける天皇、皇后陛下(11月15日、北海道厚真町)

震度7を観測した北海道厚真町では土砂崩れの現場を視察。町長らに当時の状況を熱心に質問された。町内の公共施設では約30分にわたり、当時の状況や避難生活について話を聞かれた。被災者の救助や復旧活動に力を尽くした警察や消防、自衛隊関係者にも声をかけて回られた。

■公務の多忙さ変わらず

天皇陛下は84歳の1年間で、憲法で規定された国事行為として最高裁長官の親任式や国務大臣ら98人の認証官任命式、新任外国大使40人の信任状奉呈式、大綬章や文化勲章の親授式に臨まれた。

内閣から上奏のあった書類への署名・押印は940件に上り、1989年1月の即位以来の累計は3万件を超える。

国内をくまなく巡り、国民を結ぶ旅は陛下が築かれた象徴像の骨格の一つだ。

こうした公務は憲法に明記されていない「公的活動」と分類される。この1年も恒例の地方訪問である「三大行幸啓」で福島、福井、高知の3県を訪れるなど全国各地に足を運んで人々と交流された。

訪日した海外の賓客とも精力的に面会し、国際親善にも務められた。

ただ、7月には脳貧血によるめまいや吐き気などの症状のため、公務を数日間、取りやめられたこともあった。陛下は皇居・御所で静養し、皇太子さまがその間の代理を務められた。

天皇陛下の誕生日を祝う一般参賀に集まった人たちに手を振る天皇、皇后両陛下(23日午前、皇居)

天皇陛下の誕生日を祝う一般参賀に集まった人たちに手を振る天皇、皇后両陛下(23日午前、皇居)

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