2019年2月21日(木)

米FAMGAが描く 似て非なる自動車の未来

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2019/1/7 2:00
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 米国では次世代のクルマを巡るイノベーションの発信地が、すっかりデトロイトから西海岸に移った感がある。シリコンバレーでは新技術を武器とするスタートアップが続々と誕生している。一方で存在感が大きいのが米グーグルをはじめとする「テックジャイアント」だ。自社での開発に力を入れる一方、スタートアップへの出資や提携も相次ぐ。ただ、ひと口に次世代自動車といっても各社の注力分野は微妙に異なる。似て非なる自動車戦略の詳細をリポートする。

自動車業界は激変の時代を迎えている。「コネクテッド(つながる)」「オートノマス(自動運転)」「シェアリング(共同所有)」「エレクトリシティー(電動化)」の頭文字をとった「CASE」の進展により、従来のクルマにはない機能が必要となるからだ。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週1回掲載しています。

米テックジャイアントの「FAMGA(フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト、グーグル、アップル)」は、クルマをはじめとしたモビリティー分野の技術革新を推進するため、ソフトウエアや制御装置、バッテリー技術などの強みを生かそうと力を入れている。

さらに、「MaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)」や自動運転、電気自動車(EV)技術、クルマの販売を手掛けるスタートアップ企業への出資も進めている。下の図は未上場市場の取引のみを示している。緑の線は出資、オレンジの線は買収を表す。

米テクノロジー大手によるクルマ・モビリティー分野への投資(2013年~18年11月13日時点)
(注)ライダー技術訴訟の和解に伴う、18年2月の米ウーバーテクノロジーズから米ウェイモ(米アルファベット)への自社株譲渡は含んでいない。

米テクノロジー大手によるクルマ・モビリティー分野への投資(2013年~18年11月13日時点)
(注)ライダー技術訴訟の和解に伴う、18年2月の米ウーバーテクノロジーズから米ウェイモ(米アルファベット)への自社株譲渡は含んでいない。

アップル、マイクロソフト、アマゾンによる過去5年間の自動車・モビリティー関連スタートアップ企業への直接投資は比較的少ない。3社の取り組みの大半は研究開発プロジェクトや戦略的提携など社内で実施されているからだ。一方、米フェイスブックはこの分野の技術革新に取り組んでいない。

本稿では、自動車業界を悩ませている「CASE」の問題への米テクノロジー大手の対応に注目する。活動が活発な順に紹介していこう。

■グーグルは自動運転とシェアリングに注力

グーグルはすでに自動車業界で名声を確立している。自動運転技術の開発を手掛ける傘下の米Waymo(ウェイモ)は、自動運転の実用化を初めて果たした。

グーグルは成長分野であるモビリティーのシェアサービスにも取り組んでおり、モビリティーサービスを手掛ける多くのスタートアップ企業に出資している。

ウェイモは自動運転技術のリーダーとして広く認知されている。

出典:ウェイモ

出典:ウェイモ

最近は進展を疑問視する報道もあるが、ウェイモは走行距離や自動運転車の開発ではFAMGAのライバル各社を大きくリードしている。

ウェイモは10月、米国の公道での総走行距離が前人未到の1000万マイルに達したことを明らかにした。試験場ではなく公道で収集した運転データは、自動運転ソフトの開発や向上に特に有用だ。

ウェイモの自動運転車の公道での走行距離、計1000万マイルに(出典:ウェイモ)

ウェイモの自動運転車の公道での走行距離、計1000万マイルに(出典:ウェイモ)

ウェイモは、グーグルの親会社アルファベットが傘下に収める各社のテクノロジーを活用できる。特に注目すべきは、グーグルのオープンソースのソフトウエア基盤「テンサーフロー」と人工知能(AI)向け半導体「TPU(テンサー・プロセッシング・ユニット)」を活用し、ニューラルネットワークを訓練できる点だ。

ウェイモはソフトやセンサーを自前で開発しているため、外部サプライヤーへの依存は限定的だ。この自前主義のおかげで効率と統合性を高められると強調している。

同社は欧米大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)や英ジャガー・ランドローバーなどの自動車メーカーと提携し、自社の技術を車両に搭載している。

さらに、自社技術をライドシェア以外の様々なサービスにも活用したいと考えている。アルファベットのルース・ポラット最高財務責任者(CFO)は2017年1~3月期の決算発表で、「ウェイモは壮大な問題に取り組む研究開発部門『X』から誕生した素晴らしい事例だ。我々はライドシェアや自家用車、物流、配達で自動運転を可能にする多くのオプションについて研究し、公共交通機関に対応するために各都市との提携も検討している」と述べた。

ウェイモは3月、アトランタのデータセンターに荷物を配送する半自動運転トラックの展開に乗り出す方針を明らかにした。

ウェイモの物流事業への参入は、アマゾンはもちろん、米フェデックスや米UPSなどの物流大手にとっても直接の脅威になる可能性がある。

■シェアモビリティーにも参入

グーグルはここ数カ月、MaaS関連スタートアップ企業への出資にも力を入れている。7月には電動スクーターのシェアリングサービス、米ライムのシリーズCの資金調達ラウンド(調達額3億3500万ドル)に参加した。

出典:ライム

出典:ライム

グーグルは1月、インドネシアの配車サービス大手ゴジェックが実施したシリーズCの追加ラウンド(15億ドル)にも加わった。11月27日時点では、これはグーグルが参加した今年最大の資金調達ラウンドだ。配車サービスではウーバーテクノロジーズとリフトの米2強にも出資している。グーグルは無人タクシーの商用化を計画しているため、ライドシェア大手へのこうした出資が将来役に立つ可能性がある。

グーグル、ライドシェア分野に幅広く出資(ライドシェアのユニコーン<企業評価額が10億ドル以上のスタートアップ>の評価額と資金調達額)

グーグル、ライドシェア分野に幅広く出資(ライドシェアのユニコーン<企業評価額が10億ドル以上のスタートアップ>の評価額と資金調達額)

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