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豊島逸夫の金のつぶやき

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バーナンキ・ショックの再来懸念

2018/12/21 10:18
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異常な米国株安に歯止めがかからない。20日も米ダウ工業株30種平均は一時670ドル急落した後、464ドル安で引けた。「パウエル・ショック」の兆しがちらつく。

2013年の「バーナンキ・ショック」は、当時のバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長が量的緩和(QE)の縮小を示唆したことがきっかけだった。

今回はパウエル議長が量的引き締め(QT)の継続、すなわちFRBの資産圧縮プログラムを粛々と実施すると示唆したことが市場の不安をあおる結果となっている。

QEのときと同様、QTについても市場にとって初の体験。QE依存症になったマーケットには、病状の回復も定まらぬのに点滴を外されるような不安感がある。

市場は異音を発している。株価の大異変という症候が顕著だが、米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、パウエル議長は「ボラティリティー(変動率)の高まりはたいしたことない」と切り捨てた。それから1日が経過して、市場がFOMCの経過を反すう・消化してみると、これが不用意発言との声もあがる。パウエル議長が市場との対話を間違えたとの指摘が聞かれる。

FOMC後に10年債と2年債の利回り格差は0.1%を割り込む局面もあり、長短金利が逆転する「逆イールド」という合併症も進行している。

クレジットリスクが顕在化してきたことも信用不安への懸念を高めている。

連日の株急落で投資家の追加証拠金不足が目立ち始めた。ハイイールド債市場ではエネルギー関連投資が多く、原油急落が招くリスクが意識される。金融正常化の過程でマネー潤沢の時代は終わった。過剰流動性の典型的受け皿であったハイイールド債市場にも宴(うたげ)の後の二日酔い気分が漂う。

株空売りを仕掛けたヘッジファンドでは、年末に思わぬサンタクロースからのプレゼントを得てほくそえむ事例も少なくない。

米国株が「弱気相場入り」を宣告されたので、さらに空売り筋が勢いを得た。

マクロ経済指標の良い材料は、「データ次第」のFRBが利上げ回数を増やすとの連想で、悪い材料に仕立てあげられる。悪い材料が出れば、市況の法則通りに悪材料視される。

20日にはムニューシン米財務長官が、FOMC後の株急落を「市場の過剰反応」とパウエル議長を弁護した。「今の株価はとても割安」とお買い得のごとき発言をしても、市場は冷ややかに見守るだけだ。逆に「パウエル議長の発言に市場は失望したが、FOMC内には利上げ慎重派もいる」との余計な一言が、FRB内部の亀裂を示唆したかのような印象を与える結果になった。物言えば唇寒い季節。政権幹部が語れば語るほど不用意発言になる可能性も高まる。

19年利上げ2回とパウエル議長が言い切ったことについても、あれはデータ次第の予測であり、約束ではない、と蒸し返され、市場の視界不良は強まる。

政府機関の一部閉鎖観測も浮上した。中国のハッカー攻撃に同盟国で対応の件も株売り材料となっている。しかし、これらも売りの口実に利用された感がある。

変動制指数(VIX)が危険水域とされる30台に接近していることは要経過観察だ。VIXはひとたび大きく動くと落ち着くまでに数週間は長引く傾向がある。

日本株への伝染により、日経平均株価が2万円割れの可能性も米国市場では話題になった。円が安全通貨として復活して、1ドル=111円攻防を演じたことも注目されている。FOMC直後の日銀金融決定会合という巡りあわせは、日米金融政策の方向性の違いを強く市場に印象づけた。日銀の黒田東彦総裁が慎重に語れば語るほど、疑心暗鬼の市場では円高シナリオが意識されている。

豊島逸夫(としま・いつお)
 豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・公式サイト(www.toshimajibu.org)
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
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