2019年9月23日(月)

尾高・大フィルの来年を占う「第九」(もっと関西)
カルチャー

関西タイムライン
2018/12/21 11:30
保存
共有
印刷
その他

大阪フィルハーモニー交響楽団が29、30日、ベートーベンの「第九」演奏会を開く。4月に就任した音楽監督、尾高忠明が始めたベートーベン交響曲全曲演奏の最終回だ。年末恒例の第九だが、今回は尾高がオーケストラを鍛えてきた成果を示し、来年の飛躍を見通す機会となる。

第九に出演する合唱団と来年、ブラームスに取り組む(2017年12月)=飯島 隆撮影

第九に出演する合唱団と来年、ブラームスに取り組む(2017年12月)=飯島 隆撮影

尾高は音楽監督への就任を打診された際、ベートーベンの全交響曲の演奏を考えたという。緻密なアンサンブル作りに定評のある尾高は、同じく音楽監督を務めた札幌交響楽団でも2002年と11年に全曲演奏。その経験から「指揮者とオケが一つの音楽語法を共有するために、これ以上の方法はない」との確信があった。

ベートーベンの交響曲は大フィルを長年率いた初代音楽監督、朝比奈隆(1908~2001年)が、ブルックナーと並んで最も重視したレパートリーだ。大フィル以外も含めると全曲演奏に9回取り組み、世界で最も多く録音を残した指揮者とも言われる。

■全曲演奏の成果

しかし現在の大フィルで朝比奈時代を知る団員は半数に満たない。「朝比奈先生のベートーベンは素晴らしく、畏敬の念をもって聴いていた」という尾高。「ベテランと若手を私が橋渡しすることで大フィルの伝統を引き継ぎ、自分自身の色も出していければ」と考えた。

尾高が心がけたのは、ベートーベンの革新性を楽団員とどう共有するか。言うまでもなく、ベートーベンの交響曲はどのオケにとっても最重要のレパートリー。半面、第7番などは演奏機会がかなり多く、慣れや気の緩みが生じてしまうこともある。

尾高はリハーサルの際に演奏を細かく中断し「ベートーベンはびっくりさせようと思ってこのハーモニーを書いていますね」などと楽団員に語り掛けた。新鮮さを強調し、初心に帰ってもらうためだ。「大フィルの皆は素直に聞き、言った以上のことを音楽で返してくれた」という。

尾高は今年、ベートーベンの全交響曲を作曲年代順に演奏してきた(11月)=飯島 隆撮影

尾高は今年、ベートーベンの全交響曲を作曲年代順に演奏してきた(11月)=飯島 隆撮影

作曲年代順に演奏し、11月に第8番までの演奏を終えた。「私と楽団員たちが音楽に対しどのような考えを持っているか、お互いに輪郭が見えてきた」と手応えを語る。これまでの演奏を聴いた音楽評論家の横原千史氏は「朝比奈時代から続く迫力ある大フィルサウンドに、尾高ならではの切れ味あるリズムと正確な音程が加わった印象だ」と高く評価する。

最終回として満を持して臨む第九。尾高は昨年末にも大フィルのミュージック・アドヴァイザーとしてこの曲を指揮した。「この1年の成果が問われるバロメーターだ」と気を引き締めつつ「私のやりたいベートーベンを楽団員が分かってくれた。よりレベルアップできるはず」と自信ものぞかせる。

■ブラームスに挑む

尾高率いる大フィルが19年に挑むのは、ブラームスの交響曲全曲演奏。この作曲家の全曲演奏は全4曲の交響曲に協奏曲を組み合わせることが一般的だ。しかし大フィルが組み合わせるのは「埋葬の歌」「運命の歌」などの管弦楽伴奏付き合唱曲。珍しい試みだ。

楽団の専属合唱団である大阪フィルハーモニー合唱団はアマチュアだが、厳しいオーディションによって団員が選ばれる。昨年末の第九で共演した際に「ここまで良い反応をしてくれるコーラスがあるのか」と尾高を驚かせたほどだ。合唱曲に取り組む意義について尾高は「歌と一緒に演奏することで、オケにも自然な歌心が生まれる」と強調する。今回の第九は、来年の楽団を見通す意味合いもある。

第九演奏会はフェスティバルホール(大阪市北区)で開催。ブラームスの演奏会は来年5月から11月までの全4回、ザ・シンフォニーホール(同)で開く。

(大阪・文化担当 西原幹喜)

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報

新しい日経電子版のお知らせ

より使いやすく、よりビジュアルに!日経電子版はデザインやページ構成を全面的に見直します。まず新たなトップページをご覧いただけます。

※もとの電子版にもすぐ戻れます。