海外投資家の日本株売り越し、31年ぶり高水準
日経平均株価が年初来安値を更新したのは、海外投資家の姿勢の変化という要因も大きい。2018年の海外勢の日本株の売越額は5.3兆円あまりと、「ブラックマンデー」(暗黒の月曜日)暴落の年以来となるのがほぼ確実だ。世界的な株安だけでなく、経済政策の停滞も影響している。日銀の上場投資信託(ETF)購入の影響も出ている可能性がある。
東京証券取引所が20日発表した12月第2週(10~14日)の投資部門別売買動向で、海外投資家は1613億円の売り越しだった。18年の売越額は5兆円を超え、ブラックマンデー暴落があった1987年(7.1兆円)以来の規模になる。世界的な金融危機に見舞われた08年(3.7兆円)も上回る水準だ。
18年は、世界的に株安が進行した。ドイツ証券の柳沢正和氏は「リスク資産を手放して現金化する動きが広がり、日本株にも売りが波及した」と話す。
ここまで売りが膨らむのは「経済政策の停滞」という日本特有の悪材料があるからだ。安倍晋三政権発足当初、金融緩和、財政拡張、構造改革を進める「三本の矢」が打ち出されたが、外国人の期待が特に高かった構造改革がほとんど進んでいないことが嫌気されている。「投資家は政策の詳細や効果を見定めることができず、日本株を持つ理由を失っている」(UBS証券のキース・トゥルーラブ氏)
日経平均はアベノミクス前(12年11月第1週末)と比較すると現時点でも2.3倍の水準を保つ。日銀によるETF買いの効果もあったとみられ、アップルやアマゾン・ドット・コムなどハイテク株がけん引した米S&P500株価指数(8割上昇)さえも上回るほどの値動きだ。
この結果、世界的な株安で運用成績が全般に悪化するなか、含み益が相対的に多く残る日本に売りが集中しやすくなっているようだ。
日銀は10年にETF買いを決定し、現在の累計購入額は約22兆円にのぼる。運用目的で大量の日本株を保有する日本生命保険(18年の一般勘定で9兆円)、第一生命保険(同、3兆円)をはるかにしのぐほどの規模になっている。
外国人はアベノミクス当初に日本株を積極に買い、累計買越額は15年には約20兆円に達した。だが、その後は売り越しに転じ、足元では10兆円弱に半減している。外国人による日本株売りを、日銀のETF買いで吸収するような構図になっている。
個人投資家は18年、925億円の売り越しとなっている。日本株の買い手は、企業の自社株買いが大半を占める事業法人(買越額2.5兆円)や投資信託(同1.1兆円)に限られる。
海外投資家は日本株の売買シェアの7割を占める。「目に見える物価の上昇や設備投資の増加など、経済政策の効果が表れること」(UBSのトゥルーラブ氏)が日本株を再び買う条件になるが、消費者物価指数などの経済統計は弱く予断を許さない状況だ。