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ZOZOのスーツ・ドン小西氏が辛口チェック(日経MJ)

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NIKKEI MJ

全身採寸スーツ「ゾゾスーツ」を使ってぴったりサイズのビジネススーツをつくる――。ZOZO(ゾゾ)が7月上旬にオーダースーツの受注を始めてはや5カ月、商品が消費者のもとに届き始めた。最もサイズ感が重視されるスーツで、人手をかけないバーチャルオーダーは可能なのか。ドン小西さんらファッション界の専門家に見てもらった。

生地にうっとり、サイズにがっかり

記者が注文したのはお試し価格で2万4800円のスーツとワイシャツ。7月上旬に注文し、度重なる遅配の連絡後11月下旬に受け取った。

第一印象は「かっこいい」。既にネイビーのスーツは持っているが、それらと比べて生地に高級感がある。心が躍った。

ただ、喜びは一瞬で消えた。着てみるとぶかぶか。肩は体からはみ出し、胸囲やウエストも合っていない。肩幅を広くとって着こなすバブル期のスーツのような仕上がりだ。到着を待ちわびていただけに落胆は大きい。

プロから見た評価はどうか。松屋銀座店(東京・中央)の紳士服バイヤー、宮崎俊一さんはまず「生地は良い物を使っていて、縫製もスタンダードをすべて押さえている印象」と評価した。

一方で、サイズ感は「全く合っていない」と指摘。肩幅は最低4センチは小さくすべきだという。肩が合わないために背中に縦じわが寄り、襟部分も後ろ側に引っ張られて後ろ身ごろが背筋に沿っていないという。

「光沢のある高級な生地を使っている分、シワが目立ちとても残念な仕上がり」と指摘。100点満点で採点してもらうと40点といい、「材料の良さが40点で、フィッティングについては0点」と厳しい評価だった。

テーラー店は「コスパは良い」

老舗オーダースーツ店のベテランテーラーも同様に、「生地や縫製は良い」と前置きした上で、「パンツの丈を除き全てのサイズが合っていない」。点数は30点。「大きく作った方がクレームは少ないし修正もきくので、ひとまず大きくつくって送ろうとしたのでは」と手厳しかった。

一方、オーダースーツ店「麻布テーラー」のマスターテーラー波多野貴敏さんは、「ディテールにこだわりを感じる」と高評価。具体的には、袖口のボタンが開閉できる「本切羽(ほんせっぱ)」仕様や、裏地に高級素材のキュプラを使っている点が良いという。

「サイズ感には課題があるものの、この生地・縫製でこの価格を実現している点はすごい。店に行くのがおっくうな人には受け入れられるのでは」と、70点をつけた。

 今回依頼した専門家の全員が生地の品質を高く評価した。紳士服業界の関係者によると、今春、イタリアの高級生地メーカーに日本のブランドがケタ違いの量を発注したという噂が広がったという。実に数千反(たん)、大手メーカーの数百倍の規模だ。ゾゾのスーツに生地メーカーは明示していないが、ゾゾが高級生地を調達して作ったと考えれば辻つまが合う。

一方でフィット感への評価はさんざん。専門家3人の意見をまとめると、ジャケットの肩幅は4センチ、胸囲は2センチ大きく、パンツのウエストも4センチ大きく作られていた。

お直し1カ月超、「手持ちと比べて」

記者だけが「ハズレ」だったのか。同じくスーツとワイシャツを購入した自営業の30代男性に聞くと、「袖は短くてウエストは緩く、とても着られるものではなかった」と話した。即日、カスタマーサポートセンターに直しを依頼すると、修正部分が多く作り直しになり、約1カ月かかると説明されたという。

SNS(交流サイト)上でも評価は分かれている。ピッタリで満足感が高いという感想もある一方で、サイズが合わないという声は「大きい」「小さい」ともに多い。

ゾゾはビジネススーツのサイズ直しを1年間無償で受け付けている。サイト上で肩幅やウエスト、袖丈、着丈など、それぞれ何センチ修正したいか入力し、商品を返送すれば数週間~数カ月で仕上がるという。

記者がカスタマーサポートセンターに修正方法を問い合わせると、手持ちの他のスーツとサイズを比べることを勧められた。商品の着用写真をメールで送れば、ゾゾのスタッフが直すべき箇所をアドバイスするという。

発売当初は返品不可としていたが、現在は返品も受け付けるようだ。ゾゾは返品・修正の件数を公表していないが、電話で対応してくれた女性は「サイズが合わないという声は多い」と話した。

今回のスーツが記者に合わなかった原因が採寸ミスか、採寸データをスーツの設計に落とし込む部分にあるのか、製造工程上の問題なのか、ゾゾに分析を求めたが明確な回答は得られなかった。

ゾゾはサイズ直しや返品といった顧客データを集めて徐々に精度を高めていく方針かもしれない。ただ、ゾゾブランドが柱に据えるのは、サイズ直しのいらない「あなたサイズ」の実現。確実に実現できる技術の開発とノウハウ蓄積を急がなければ、ブランドの根幹が危うくなりかねない。

ドン小西氏「仕事着ならいいんじゃない」

辛口な「ファッションチェック」で知られ、自らパターンもひくファッションデザイナー、ドン小西さんにもZOZO(ゾゾ)のビジネススーツをチェックしてもらった。

――製品の印象は。

「良くも悪くも百貨店のイージーオーダーレベル。立体構造とかをまったく無視している」

 「そのくせして、袖口のボタンが『本切羽』とか、内ポケット周りまで表生地を使う『お台場仕立て』とか、一番あと回しにしていい最後の最後のデコレーションの部分だけしっかりやっている。まるで色合いや盛り付けだけ立派な料理みたいな。素材はいい」

――「ゾゾスーツ」で採寸したのですが……。

「コンピューターで採りきれていないところが顕著に出ている。袖丈や着丈、総丈だけ合わせたスーツ。人間の体形は複雑で、ワイシャツならネックと裄丈測ればできるけど、スーツはそんなもんじゃない。そこがまだまだ未開発だね。一番大事な(採寸の)ソフト部分のデータ収集が明らかにうまくいっていない」

「まず、ネックが浮きすぎている。これはスーツとして致命的。こんなに抜けてたら駄目で、体形を見抜けていない。これは洋服ではなくゴミだね。このスーツは支障をきたさない程度の仕上がりになっている」

「でもこのシステム(自宅で採寸し、最短1週間で届ける)を短期間でやるというのはえらいよね。工場さんの勝利だと思う。でもそこはハード面の話。工場がしっかりしていても、着る人のパーソナルな部分を読めていないから、良いスーツになっていない」

――生地の印象はいかがですか。

「生地はケチっていないと思うよ。簡単にやぶけたりしない強度のある生地。そういうところはしっかりしている。風合いとかは無視しているけど、ファッションではなく仕事着ならいいんじゃないか。安いし」

「結論は今のご時世のスーツだね。そんなにこだわりがなくて、別に着られればいいわ、という人向け。電車乗ってて変に思われなければいいなくらいのエセスーツだよ。会社員は走ったり車に駆け込んだりしないといけない場面もあるでしょ。営業職で90度のおじぎをしなければいけなかったり、ときには廊下で上司に土下座しないといけなかったり」

――通常価格3万9900円という値付けは。

「百貨店で売っている高いものは、半分は百貨店がマージンを持っていく。無店舗無人化でやって、その分お客さんに安く還元するっていう新たなやり方はいい」

――スマートフォンで採寸しスーツを売るアイデアはどう見ますか。

「仕組みとしてはいいんじゃないか。今の客層に合っている。それに、百貨店のイージーオーダーの採寸している人ってゾゾのシステムよりもぼんくらかもわからない。ただ肩幅、袖丈のサイズが測れるだけ。全然その人の体形を見れていないって人は結構いるよ。今、百貨店でイージーオーダーの採寸している人なんてほとんど素人。それよりはいいと思う」

――総合評価はいかがですか。

「値段を考慮すれば60点かな。僕らプロから見たら仕上がりは20点、30点レベルだよね。もったいない」

(鈴木慶太)

[日経MJ2018年12月21日付]

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