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豊島逸夫の金のつぶやき

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FOMC後の株急落、スタグフレーションの影

2018/12/20 9:41
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連日、記録的な乱高下にさらされている米国株式市場は米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長からの励ましの言葉を期待していた。ダウ工業株30種平均も寄り付きから300ドル超上げていた。

しかし、その記者会見が進行するにつれ、ダウ平均は一時、500ドル超安まで売り込まれた。この時点で、値動きや取引材料を受けてコンピューターで自動的に注文を出す「アルゴリズム取引」の機械的なプログラム売りを発動させたキーワードは「自動操縦(autopilot)」という単語だった。FRBの資産圧縮プログラムは既定路線に沿って自動操縦で実行するという意味で使われた。イエレン前FRB議長が決めた既定路線では、2019年からFRB保有の住宅ローン担保証券(MBS)売却によるFRB資産圧縮を月間500億ドル、年間6000億ドルのペースで本格化させる予定だ。円換算では毎月約5.5兆円、年間では60兆円ほどに達する金額である。いっぽう、金利政策に関しては、19年には2回利上げと述べた。これもサプライズだ。

本欄でも詳述してきたように、市場とFRBの間には19年の利上げ回数予測に関してこれまでにない差があった。市場では1回かゼロ回予測に傾いていた。対して、FOMC参加者の金利予測(9月FOMC時点)では、2回、3回、4回がそれぞれ4人いた。いずれ、どちらかの方向に収れんするはず。今回のFOMCが、そのヒントになるとみられていた。結果的には、FOMC参加者側が市場側に近寄った。19年の2回利上げは、FOMC側とすればかなりのハト派的予測修正だ。しかし市場から見れば、2回というのはゼロから1回よりは多い。株価が異常な乱高下を続け、長短金利が逆転する「逆イールド」現象が発生。市場は明らかに異音を発しているのに、金融政策の緩和的修正がこれではまだ足りないと不完全燃焼状態になったのだ。この失望感が売りの連鎖を生んだ。

しかも、FRBの19年米国経済見通しも下方修正された。国内総生産(GDP)は2.5%から2.3%、インフレ率は2.0%から1.9%に引き下げられたのだ。経済・物価上昇が鈍化しているときに、利上げと資産圧縮の両面作戦で引き締めるのか。オーバーキル(締めすぎ)のリスクを市場は懸念する。さらに、関税引き上げにより国内物価が上昇するような事態になれば、物価が上昇して景気が停滞する「スタグフレーション」のリスクさえ意識される。保護主義の副作用で物価は上がるが経済成長は鈍化するという最悪シナリオだ。

22年以降の長期でも、FRB経済予測ではGDPが1.9%、失業率は4.4%、インフレ率は2%と、明らかに景気後退を見込んでいる。

中立金利も3%から2.8%に引き下げられた。中立金利の水準を示す22年以降の予測金利は、FOMC参加者が適切とみる政策金利の水準を表す「ドットチャート」によれば2.5%予測が4人。2.75%が5人。3%が5人と前回に比し3%以下の予測が増えている。

さらに、ドットチャートを精査すると、20年以降、利上げサイクルは終了して、22年以降は利下げもありうる形になっている。18年から22年以降にわたる金利トレンドラインが一貫した右肩上がりではなく、頭打ちから緩やかな利下げを示唆しているのだ。

仮に利下げとなれば、中立金利が2.8%程度なので、利下げ幅も限定的で景気浮揚の政策効果が十分に発揮されるとは思えない。その場合は、資産圧縮を縮小・停止するのか。あるいは量的緩和を再開するのか。市場の疑念は募る。

株が下がればFRBが助け舟を出すという「パウエル・プット」を期待した市場は裏切られた。プットは売る権利。「FED(FRB)には逆らうな」から「FEDを疑え」への移行がますます顕著だ。

金融政策不信を映す株安である。

豊島逸夫(としま・いつお)
 豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・公式サイト(www.toshimajibu.org)
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
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