2019年6月25日(火)

資産圧縮ペース「変更するつもりない」 FRB議長会見全文

2018/12/20 5:55 (2018/12/20 7:01更新)
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19日の米連邦公開市場委員会(FOMC)終了後に記者会見したパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の発言は以下の通り。

――なぜ労働市場が引き締まっているにもかかわらず、インフレ圧力がそこまで高まらないのか。今後のFRBの政策判断にどのような影響が出てくるか。

「確かにインフレ率は私たちの見込みをわずかに下回っている。より広い目で見れば、2018年は金融危機後最も強い1年間で、失業率は低く、インフレ率は2%にわずかに届いていない。この状況はFOMCが忍耐力を与えてくれている。今後の利上げの道のりと最終的なゴールに関しては深く不確かな部分が多々ある」

――今回今後の利上げペースを引き下げたが、バランスシートの縮小計画も変更する議論をしているか。

「2013年から14年にFRBで働いていた時の経験を踏まえると、市場はバランスシートのサイズや資産購入のペースのニュースにとても敏感だ。私たちは金融政策の正常化をどのように進めるか注意深く検討し、効果的にバランスシートを正常化させられるように考えてきた。これまでのところ正常化はスムーズで、変更するつもりはない。引き続き金利を金融政策の積極的なツールとして活用していく」

――インフレ率の動きを見る限り、次回の利上げは少しゆっくりとしたペースになるのか。

「18年はとても強い1年であったことと、委員会が2019年の成長を楽しみにしており、プラスの見通しを持っていることをまず強調したい。我々は長期的な潜在成長率を若干上回る2.3%の成長を遂げると予想している。失業率はさらに低下し、インフレ率は目標近くにとどまる高成長になるだろう。今後発表されるデータが想定通りの道をたどるかどうか、経済発展が我々の期待に沿ったものになるかどうか、特に注目していくつもりだ。さらに言えば、我々は委員会が中立的だと考える予想範囲の下限にすでに達していると思う。したがって、この時点からはデータからわかる情報を重視し、何が適切な金融政策かを伝えていくつもりだ。つまり今後の利上げについては不確実性が多くなる」

――株式相場の下落、貿易摩擦の高まり、トランプ大統領による介入は、経済の見通しや利上げの判断にどのような影響を与えたか。

「我々は金融市場の環境を広くチェックしている。9月のFOMCから金融の環境が厳しくなっているのは事実で、今後の経済成長と利上げの予測に織り込んだ。声明文の書きぶりからもわかるように、そのリスクは認識しており、今後の進展を注意深く見ていく。企業や市場の関係者の間では、世界経済の成長減速に対する懸念があるようだ。その理由の一部には、貿易摩擦の高まりもあれば、他のこともあるだろう。関税の影響を機械的に見積もれば、米国経済への影響はそこまで大きくない。実際の影響は金融市場の変化やビジネスに対する自信の喪失から発生し、予測することはとても難しい」

「金融政策の議論や決定において、政治は何の影響力も持たない。我々は議会が与える使命を果たすことに集中していく。我々は独立しており、政治的ではない方法で仕事をするのがとても重要だ。FRBは任務に絶対的にコミットしており、我々が正しいと信じることを何物も邪魔することはない」

――なぜ委員会は持続的にインフレ目標を達成できないときに、引き締め政策を主張するのか。

「委員会はインフレ目標の未達を望んでいるわけではない。確かに物価上昇は驚いたことに弱まっているが、大きく目標を下回っているわけではない。2%の目標に近い水準だ。我々は2%を下回ることは目指していないが、2%前後を目指している。私は目標を達成したとは一度も言っていない。2%前後のインフレ目標を達成するには、2%前後にインフレ率を保つことが必要で、まだそこには達していない。そこに関して勝利は宣言しておらず、今後達成すべきものだ」

――インフレ目標が達成できない中で、利上げを決めたポイントは何だったのか。

「経済の健全性の話に戻る必要がある。18年を振り返ると、金融危機以来で最も良い1年だった。長期トレンドをはるかに上回る成長を遂げ、失業率は下がった。インフレ率は2%に向けて上昇しており、見通しも明るい。健全な経済の状況において、今回の利上げは適切な判断だ。現時点で政策が緩和的である必要はない。我々は中立的な見積もりの範囲の下限にあり、それが決定の根拠だ」

――FRBは11月に金融政策の枠組みを再検討するパネルを立ち上げたが、そのパネルに何を期待しているのか。ドットチャートはそこでの議論に入るのか。

「経済がとても強い今、我々の戦略と手法、金融政策を巡るコミュニケーションが正しく機能しているかどうかを点検するのにはいい時期だ。私たちがやろうとしているのは、オープンになり、経済に関わるたくさんの団体と議論を持つことだ。目的は新しいアイデア、より良いアイデア、古いアイデアなど様々な意見を聞き、私たちにできることがないか考えることにある。法律やインフレ目標の変更を目指しているわけではなく、インフレ目標を達成するためにより良い方法を模索している」

「ドットチャートは一般的にFOMC参加者に関する有益な情報を提供するが、これはコンセンサス予測ではない。我々は何かに投票しているわけではなく、一人ひとりが書き留め、データが入ればそれぞれにアップデートしていくものだ」

――バランスシート縮小の市場への影響について懸念はあるか。

「金利市場の動きは注視しているが、バランスシート縮小の経済成長への影響は小さく、重要な問題を作り出しているとはみていない。短期金利の動きは政策金利など、様々な要因によって左右される」

――市場のボラティリティー(変動率)が高まっているが、来年のいつまで穏やかな利上げを続けるのか。FRBの利上げが経済の向かい風になっていると判断するデータは何か。

「来年の成長率の見通しは2~2.5%で堅調だ。経済は失業率を低下させインフレ率を2%程度にする。これは比較的ポジティブな見通しとみてよい。今後はこの見通し通りにあるかをデータで確認することになる。『データ次第』とは、データを見ながら、経済見通し、中立的な金利、失業率の水準を見直しながら、金融政策の見通しを調整していくことだ」

――トランプ大統領のツイートは懸念材料か。

「それはまったく懸念していない。これまでと同様、FRBのメンバーはどう任務をこなすかよくわかっており、最良の頭脳と多様な見解を集めている。毎回のFOMCのサイクルでは実業界や金融市場の人々の意見だけでなくコミュニティ開発を手がける機関なども含めて広く対話をしている。聞き取り調査も何千という人から実施し、米国内で何が起こっているかを広く吸収している。それらの情報をもとに最良の金融政策を決定しているので、我々の決定が邪魔されるということはない」

――景気変動抑制的な資本バッファー(CCYB)を作動すべきというブレイナード理事の意見について。

「CCYBは金融システムが平常以上に不安定になったときに備えて資本を蓄積する方策だが、そういう状況になったときには利用したいツールだ。我々はその可能性について年1回のペースで議論しており、今年も年初に行った。今後も早い機会に議論をするつもりだ。現在の金融システムの脆弱性は普通の水準だが、状況を常に注視し必要なら理事メンバーとともにCCYB導入の可能性を議論する用意がある」

――金融政策は緩めの必要はないとしているが、ドットチャートは来年に引き締め気味になることを意味しているのか。

「現時点では引き締め気味ではない。ドットチャートはFOMCメンバー個人の意見を反映しているもので、最終的にはそのときの環境が反映する。いずれは中立金利を超えるのが適当という時期もくるかもしれないが、現時点で将来の引き締め気味を示しているわけではない」

――経済指標にまだ現れていない材料が金融市場に現れているのか。

「各地区連銀の経済状況を報告するティール(青緑色)ブックを見ると企業の幹部だけでなく文字通り何百という非営利団体や労働組合の人々の意見を知ることができ、個人的にも非常に興味深いものだ。私の経歴は少人数の人と仕事をすることが多かったので、こうした個別の具体的なデータは経済の状況を良く知る上で助けになる。その情報から1つ言えることは現在、人々が景気の先行きに懸念を持つムードが強まっているということだ。それがデータにすぐに大きく現れるとは限らない。金融市場の状況はやや引き締め気味になっていることは金利予測の際に我々も踏まえており、将来の利下げの局面でも頭に入れておく必要がある」

――トランプ米大統領はFRBは「市場を感じるべきだ」と発言したが、市場は何を伝えようとしていると思うか。

「我々は一つの市場だけを見ることはしない。経済全体に重要なのは、長期的に続く金融環境の重大な変化だ。ある程度のボラティリティーは経済に大きな影響は与えない。9月の会合以来、金融環境の引き締まりはある。我々は経済モデルにそれを反映させている。市場の動きは注視するが、マクロ経済的観点からでは、一つの市場が支配的な指標となることはない。長期的に継続する変化が重要だ」

――(これまでの四半期ごとではなく)来年からすべての会合が利上げが検討される会合となる。不透明さが強い中で、市場とのコミュニケーションについてどう考えているのか。

「定期的な議長会見を行うことがコミュニケーションの面で非常に役立つと考えている。毎会合後にFOMCの考えと、それに関連した景気判断や政策見通し、世界経済動向について説明することができる。それはFOMCの考え方や今後の政策について伝えるのに役立つだろう。年8回の会合があり、それぞれの会合で利上げが検討できるようになる」

「次の会合で起きることを伝えたい場合には、講演や記者会見などでそれを行う方法がある」

――賃金上昇はさらに加速するか。

「賃金上昇は続くと予測しており、それはいいことだ。賃金上昇は必ずしもインフレにつながるわけではない。極めて労働市場が逼迫していた1990年代後半の例がある」

「生産性にインフレを加えた以上に賃金が上昇しても、高インフレにならなかった。労働力が不足しているとの情報が多く寄せられているので、引き続き賃金は上がるだろうが、それがインフレを意味するとは考えていない」

――労働市場のたるみはどれくらい残っているか。

「大半の指標は、長期的に持続可能な水準か、それより高い水準にあることを示している。しかし、若い働き盛りの労働者、特に働き盛りの男性の労働参加率は依然として金融危機前の水準よりかなり低いところにある。その他の年齢層は男女とも前回の周期ピーク付近に戻っている。このピークを超えられるかどうかだ。(低い労働参加率の)問題が周期ではなく構造的なものなのかどうか。景気の強さを考えれば、労働参加率が考えられていたより高くなる可能性がある」

――長期金利はここ数週間で大きく低下した。景気やインフレの見通しに対する懸念とみているか。それとも住宅ローン金利の低下などポジティブな影響とみているか。

「我々は様々な金融指標を参考にし、一つのデータに固執することはない。長期国債については、株式市場のリスク回避の姿勢と一致している。しかし我々はこれが継続するかはわからない。長期国債の金利は市場のリスクセンチメントに応じて3%近辺を行き来している。もし金利が長期間にわたり低い水準にとどまれば、(市場が)低い成長率を予想していることの示唆と考えられる。しかしこれが起きるかどうかはわからない。我々は来年は、失業率の低下と健全な経済のもと堅調な成長を見込んでいる」

――市場は10月の「政策金利が中立金利の近辺にある」との発言を、FRBの見方が変わったとして捉えたが、この捉え方はあっているか。

「我々は中立金利のレンジの下位に達した。今後は、利上げのペースやさらなる利上げの行方について不確実性がある。我々はデータから、適切な政策の道のりを判断することになる」

――世界の動きに注視していると言ったが、具体的にはどのようなイベントを指しているのか。

「世界景気全体をみている。2017年は世界的に同期した経済成長がみられ、世界各地で経済の見通しが引き上げられた。一部ではこれが18年も継続するとの見方もあった。しかし実際はこうした見方が見直されている。世界全体で見れば健全なレベルの成長がみられるが、17年に見られた強い成長は見られない」

「英国による欧州連合(EU)離脱や、イタリアとEU間の交渉などのイベントリスクも注視している。米国の金融機関や監督機関は、EU離脱に対する長い準備期間があった。様々な結果に対応する準備はできているとみている。米国に対して大きな影響はないはずだが、今までに起きたことがないため、不確実性が多く、注視していく」

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