2019年9月23日(月)

飛べるか「空のタクシー」 新産業育てる規制に
ニッポンの革新力 再生への道標(中)

革新力
2018/12/20 7:01
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自動車よりも一回り大きいドローンが空中から降りてきて電気自動車(EV)に覆いかぶさるように着陸した。EVが上下に分かれ、人が乗る部分をドローンがつかんで飛びたつ。「目的地」に着くとEVの居住部分は再び車台と合体して走り去った。

11月27日、独高級車のアウディが航空機メーカーなどと組んでオランダの展示会で披露した「空飛ぶクルマ」だ。実際の4分の1の大きさの試験機とはいえ、公開の場で飛ばすのは初めて。「空飛ぶタクシー計画が進行中だ」(ベルント・マルテンス取締役)

ドローンを使い点検を効率化する(岐阜県各務原市)

ドローンを使い点検を効率化する(岐阜県各務原市)

渋滞緩和などにつながる空飛ぶクルマは次世代の移動手段として注目され、世界の企業が開発にしのぎを削る。日本でも実現に向けたルールを検討する官民協議会が8月に始まった。だが、メンバーの一人で機体開発を手掛けるテンマ(栃木県鹿沼市)の福井宏治社長は「海外に後れを取るのではないか」と気をもむ。思わぬところで規制が壁になるかもしれないからだ。

革新的な技術や発想も事業として育ててこそ社会に恩恵が広がる。一昔前は想定もしなかった技術や発想が登場しても十年一日の規制が足かせになるようでは力を発揮できない。

1級河川の木曽川をまたぎ、長さ約600メートルに及ぶ岐阜県の各務原大橋。11月、橋脚にまとわりつくようにドローンが飛んでいた。備え付けた棒をコツンと当てて経年劣化がないかを調べる打音点検だ。

高所作業用の専用車両を使う手作業に比べ費用を2割減らせる。橋を管理する岐阜県各務原市が全国で初めて導入した。NECなどが担う。ただ、現行法では目視点検も義務付けている。現場を統括する岐阜大の羽田野英明客員教授は「ドローンだけでいいなら効率化できるのに」と嘆く。

タクシー大手の日本交通は今秋、航空券などと同様に需給次第で値段を変える「ダイナミックプライシング」をにらんだ実験をした。客が少ない水曜と日曜の昼間は迎車料410円を無料にして、どれだけ利用が増えるかを検証した。

川鍋一朗会長は「将来は運賃自体の変動も検討したい」と意気込む。収益を最大化できるだけでない。高めの料金を払えば混雑時でもタクシーをつかまえやすくなるという利用者のメリットもあるからだ。スマートフォンアプリを通じ需給を正確に把握することで可能になったサービスだ。海外では既に実用化されたが、運賃に厳しい規制がある日本ではめどもたたない。

規制が産業育成に与える影響は政府も意識している。公正取引委員会はこのほどデータ寡占を防ぐルール作りに着手した。グーグルなど米IT(情報技術)大手に続き国内の自動車や銀行も異業種と組んでデータ活用に乗り出したためだ。

20世紀は自動車が数十年かけて普及したように、大きな社会変革は段階的に進んだ。規制も安定していることに意味があった。技術が進歩しデジタル化が進んだ現在は変化の速度が飛躍的に上がった。同じやり方では追いつかない。

国際競争も激化する一方だ。まずはやってみて問題があれば規制する――。米国や中国はこんな姿勢で変化の先取りを目指す。どの規制を緩和し、どの分野でルール作りを進めるのか、ゼロから見直すときだ。

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