2019年4月23日(火)

ドイツ、外国人労働者の受け入れ拡大 人手不足に対応
専門人材、6カ月の職探し可能に

2018/12/19 23:03
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【ベルリン=石川潤】ドイツのメルケル政権は19日、欧州連合(EU)域外の外国人労働者の受け入れを拡大するための「専門人材移民法案」を閣議決定した。ドイツ語が話せて職業訓練を受けた人材であれば、就職先が決まっていなくてもドイツに入国して6カ月間職探しをできるようにする。ドイツでは難民増加が社会問題となり、メルケル政権が揺らぐ原因になったが、人手不足の解消が急務と判断した。

国会での議論を経たうえで2020年初めからの実施を目指す。これまでも大卒者であれば、職探しが認められていたが、より幅広い人材を受け入れられるようにする。当面の生活費を自分で負担できることが条件だ。就職先が決まっていれば、どんな仕事にも就けるようにする。

ドイツが外国人労働者の受け入れを拡大するのは、少子高齢化で人手不足が深刻になっているためだ。特に地方の中小企業で優れた技能を持つ専門人材が不足しており、今後3年間で3分の2の企業で新たな人材が必要になるとの調査もある。2025年ごろにベビーブーム世代が退職した後、どう人材を確保するかが課題になっていた。

19日に記者会見したハイル労働社会相は人手不足が「成長の妨げ」になっていると指摘。アルトマイヤー経済相は人材が確保されれば、経済成長率が0.5~1%押し上げられる可能性があると話した。外国人労働者の受け入れで、人手不足を理由に設備投資に慎重になっている企業の背中を押す狙いもある。

もっとも、ドイツにとって移民の受け入れは重いテーマだ。1960年代にトルコ人労働者らの受け入れを進めたが、ドイツ語教育などをおざなりにした結果、ドイツ社会になじめない移民が増えて、社会の分断を招いてしまったという苦い経験がある。

アルトマイヤー氏は「過去の過ちを繰り返すつもりはない」と強調。当時は単純労働者が中心だったが、今回は職業訓練を受けたドイツ語を話せる人材が受け入れの対象だと説明した。

ドイツでは2015年にシリアなどから100万人を超える難民が流入した。今でも外国人受け入れへのアレルギーは強く、当時のメルケル政権の姿勢を批判する極右政党、ドイツのための選択肢(AfD)が勢いを増している。そのなかでの外国人受け入れ拡大は、さらなる反発を引き起こす可能性もある。

外国人材の受け入れは連立与党のドイツ社会民主党(SPD)が積極的だが、メルケル氏が率いるキリスト教民主同盟(CDU)やその姉妹政党のキリスト教社会同盟(CSU)には慎重論も多い。19日の閣議では、ドイツで難民申請が認められていないのに、すでに18カ月以上働いている外国人の滞在延長に道を開く別の法案も決定した。ドイツに再び難民が押し寄せることになるのではないかと、懸念する声も消えない。

政府内には、ほかの欧州諸国が外国人労働者の受け入れに消極的な今こそ、優秀な人材を確保して経済成長につなげる好機との意見がある。このままでは人手不足でじり貧になるという危機感がメルケル政権に決断を促した格好だが、実験の帰結はドイツだけでなく、欧州や世界全体の移民政策に大きな影響を与える可能性がある。

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