大正製薬HD、仏大衆薬を買収 1800億円で
大正製薬ホールディングス(HD)は19日、米ブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS)の仏子会社で主に一般用医薬品を手掛けるUPSAを買収すると発表した。買収額は16億ドル(1820億円)。フランス国内に事業基盤を持つUPSAのブランド力や販売網を手に入れ、海外事業を強化する。
UPSAは1935年創業で、アスピリンなどの鎮痛薬や座薬などを販売している。94年にBMSが買収した。フランス国内を中心に年4億8千万ドル(約550億円、17年12月期)を売り上げ、純利益は6600万ドル(約75億円、同)。
大正HDは、栄養ドリンク「リポビタンD」や風邪薬「パブロン」を販売する大正製薬を傘下に持ち、2018年3月期の連結売上高は2800億円。近年は大衆薬市場の低迷に加え、訪日外国人観光客の需要も一服し、売り上げは伸び悩んでいた。
同社はインドネシアやフィリピンを中心とした東南アジアでも展開しているが、その多くは09年に同じくBMSから買収した事業が中心。今回、フランスに拠点を置くUPSAを傘下に収めることで欧州への足がかりができる。大正HDの海外売上高比率は現在の11%から25%程度まで高まることが予想される。
買収金額は約1820億円となり、大正HDの純利益(316億円)の約6倍で、UPSAの純利益の24年分に相当する。大正HDの18年3月期末時点の現預金や有価証券を含めた手元資金は2500億円あり、潤沢な資金を生かして海外事業をテコ入れする。
BMSは医療用医薬品で世界的な事業再編を進めており、今年6月にUPSAについて売却を含めた再編を検討していると発表。18年中に方針を決定すると発表していた。UPSAの売却については10月に米メディアが1回目の入札が不調に終わったことを報道。12月に入り複数の仏メディアが、買収交渉にファンドのほか大正HDが参加していることを報じていた。
海外の製薬会社では大衆薬事業を巡った事業再編が相次いでいる。スイスのノバルティスは今年3月に大衆薬事業を130億ドルで売却したほか、4月には独メルクも34億ユーロでプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)に売却することを発表。米ファイザーも大衆薬事業の切り離しを発表しており、医療用医薬品に特化する動きを加速している。
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