マレーシア検察、ゴールドマンを起訴 1MDB問題で
【シンガポール=中野貴司】マレーシア検察当局は17日、政府系ファンド「1MDB」による巨額の資金流用に関連し、米投資銀行ゴールドマン・サックスの子会社と元社員2人らを起訴した。1MDBの債券発行を引き受けたゴールドマンが証券関連法に違反したとして、刑事責任を追及する。

トミー・トーマス司法長官は17日、「ゴールドマンは債券発行の幹事会社として最高の水準を期待されたが、実際は程遠かった。その責任は免れない」とコメントした。
起訴されたのは国際事業を担う英子会社ゴールドマン・サックス・インターナショナルに加え、ゴールドマンの元幹部ティム・ライスナー被告、ロジャー・ウン被告らだ。2012年から13年にかけて、1MDBが発行した合計65億ドル(約7350億円)の債券を引き受けた際の行為を対象とした。
具体的には、マレーシアのタックスヘイブン(租税回避地)であるラブアンの当局に提出した募集に関する書類が虚偽で、政府や投資家を欺く内容だったとして、証券関連法の重大な違反にあたると判断した。
検察当局は65億ドルの債券発行のうち27億ドルが不正に流用されたほか、ゴールドマンは債券引き受けで約6億ドルの手数料収入を得たと認定した。これらの不正行為に対して罰金を求刑し、元幹部にも懲役刑を求める。一連の不正流用を主導した華人系実業家ジョー・ロー氏や1MDBの元職員も同時に起訴した。
1MDBを巡っては、米司法省も11月、マレーシア当局が今回起訴したゴールドマンの元社員2人を起訴している。ロイド・ブランクファイン前最高経営責任者(CEO)が、ジョー・ロー氏と面会していたとの情報もあり、組織として不正にどの程度関与していたかも焦点となっていた。
マレーシア当局が17日、ゴールドマンのグループ会社も起訴対象に含めたことで、同社の経営への打撃は避けられない。当局は不正流用された27億ドルと手数料収入約6億ドルの合計33億ドルを超える罰金の徴収を目指す構えをみせている。虚偽の情報開示だけで巨額の罰金が科せるかは不透明だが、今後も米司法省などと連携して全容の解明を進める方針だ。
ゴールドマン・サックスはマレーシア当局の訴追を受けて声明を発表。「起訴は間違っている」と指摘し、当局と争う姿勢を示した。一方で「引き続き捜査には協力する」と説明した。17日の米国株式市場ではゴールドマン株の取引が売り優勢で始まり、下げ幅は一時3%まで広がった。
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