発達障害の子供、スポーツで自信 専門の教室広がる

2018/12/17 11:28
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発達障害がある子供を専門に指導するスポーツ教室が広がってきた。障害の影響でコーチの指示を理解しにくいといった傾向があり、一般的な教室では入会を断られることもあった。国や自治体も教室の利用料を助成するなどとして普及を後押しする。専門家らは指導員の育成を課題に挙げている。(丸山景子)

発達障害のある子供たちが参加するフットサル教室。色で区別できるようゴールにカードを貼っている(兵庫県伊丹市)

「ナイスシュート!」。11月下旬、兵庫県伊丹市のフットサルコートに大きな声が飛び交っていた。互いのゴールネット中央には、チームのビブス(役割を識別するベスト)と同色のカードが貼られている。自陣と相手陣の混同を避けるための目印という。子供たちがイメージしやすいように練習内容はボードや写真を使って説明する。

教室は発達障害のある子供の療育支援に取り組む一般社団法人「たけのこ」(大阪府箕面市)が9月に始めた。教員免許などを持ち、障害について学んだ職員が指導にあたる。法人の西村篤理事は「運動を通じて、集団生活に必要な技能を身につけてほしい」と話す。

発達障害があると指示やルールを理解したり、他人や物との距離感をつかんだりするのが苦手とされる。兵庫県宝塚市の主婦(42)は一般のスポーツ教室に長男(11)を通わせようとしたが、「障害に対応できない」と断られた。フットサルを楽しむ長男の姿に「個性に合わせてくれるので安心できる」と話した。

2014年にオープンした「チットチャット・スポーツ塾」(大阪市)はボール遊びやけん玉などを個人指導する。当初から通う東大阪市の中学1年の男子生徒(13)は40分間の運動プログラムを途中でやめてしまうこともあったが、次第に集中力が増し11月には腹筋の回数で自己最多を更新した。「次は縄跳びを頑張りたい」と意気込む。

いずれの教室も、国が12年度に創設した「放課後等デイサービス」に指定されている。国と自治体による助成があり、利用料の自己負担は原則1割で済む。同サービスは18年4月時点で全国1万1728カ所に広がり、内容も学習指導やレクリエーションなど多様だ。保護者らの要望を受け、最近は同サービスで運動を指導する教室が増えているとみられる。

子供の入会を希望する保護者は多いが、運営する団体は指導員不足に悩む。個人教室を運営する一般社団法人「ふらっと」(大阪府大東市)の中川英美代表理事は「指導員は子供の予期せぬ言動への対応が求められる。経験が大切で即戦力の人材を育てるのが難しい」という。

障害児の運動指導に詳しい筑波大の澤江幸則准教授は「発達障害児の中には周囲と自分を比べて自信を失う子供もいる。スポーツを通じて達成感を味わうことは意欲の向上につながり、団体競技なら協調性も育める」と指摘。「指導者のレベルを一定に保てるよう、国や行政は研修などで後押ししてほしい」と話す。

▼発達障害 自閉症や学習障害(LD)、アスペルガー症候群、注意欠陥多動性障害(ADHD)などの総称。生まれつきの脳の機能障害が原因とされる。特定の物事へ強いこだわりがあったり、コミュニケーションが苦手だったりと様々な症状がある。文部科学省の2012年の調査によると、全国の通常学級に通う小中学生のうち6.5%が発達障害の可能性があると推計された。
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