2019年1月18日(金)

土鍋 家族をつなぐ力秘める
モノごころ ヒト語り

コラム(社会)
2018/12/15 11:39
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年末年始にかけて、鍋料理を囲む機会が増えますね。大勢でにぎやかに鍋を囲み、温かいものを好きなように食べ、お酒も進む。作る側にとっても材料をぬかりなく準備しておけば、後は必ず誰かが「鍋奉行」を買って出てくれ、手間がかからない。この季節には最高の料理である。

上段左からみそ汁鍋、炊飯鍋。下段左から燻製鍋、焼き陶板鍋、蒸し鍋=三重県伊賀市の長谷園にて

ガイロメ粘土。粒子が粗く「呼吸する土」といわれる=三重県伊賀市の長谷園にて

土鍋の利用は1万年前の縄文時代早期、尖底(せんてい)深鉢形土器での煮炊きから始まるが、中世から近世にかけても庶民は素焼きの土鍋で煮物をし、囲炉裏の周りで食事をした。こうしてみると土鍋料理は生きることと直結していた。

江戸時代後期には食器としても使われ始める。火鉢のようなものに炭を入れ、土鍋を載せて調理し、座敷で鍋ごと料理を提供する店が増えた。炭火は火力も弱く、7寸ほどの小さな鍋を使った。これを「小鍋立て」といった。あさり鍋、豆腐鍋、マグロとネギを煮たねぎま鍋、どじょう鍋、しゃも鍋など実に多彩。味はしょうゆか味噌だった。

伊賀焼は現在も土鍋製作を続ける古陶の一つ。伊賀の土は、太古の古琵琶湖湖底のもので耐火度が高い。主成分は石英粒が残る蛙目(ガイロメ)粘土と泥状になると粘りのある木節粘土。これを7対3ほどに混ぜて使う。粒子が粗いため、空隙(くうげき)が多く、遠赤外線効果や保温性にも富む。耐火鍋は1250度で焼成後、再度火に掛けても熱膨張しないので割れない。ゆっくり加熱でき、十分熱を蓄えれば、強火でなくても沸騰し経済的だ。

昨今、スーパーには多彩な「鍋つゆの素」が並ぶが、2002年ごろから、レトルトのストレートタイプを販売し始めたのはミツカンだ。1980年代から家族の形も変化し、「孤食」や「個食」が社会問題になる中、鍋料理には「家族の団らん」や「絆を再生する」力があるとし、家庭用鍋料理の普及に取り組んだ。

ここ十余年で家庭でも多様な味の鍋料理を楽しめるようになったが、一方で高齢化や単身世帯が増加し孤食化は進み続けている。近ごろは、単身者や遅く帰宅する家族のための「おひとり様鍋」や「進化系土鍋」に変化してきた。燻製(くんせい)用、スノコの上で肉や野菜を蒸すものなど、器としても楽しめる。

我が家も大きな土鍋の登場回数は減ったが、最近発売の個食鍋つゆの素と1人用土鍋は、食事制限だらけの老体に役立っている。

(TEM研究所研究員 真島麗子)

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