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週末レシピ フランス版のお好み焼き「そばガレット」

そば粉で作ったクレープ「そばガレット」 とろとろの半熟卵を潰して食べる=PIXTA

日本で「そば」と言って真っ先に思い浮かべるのは、ずずっとすする「日本そば」だろう。麺のそば以外では、そばがきが定番だろうか。そば粉に水分を加え練りながら熱して団子状にしたものだ。そばの産地では、そば粉を使ったおやきや、そばの実をコメのように炊いたそば米や、そばの実をいったそば茶などがあり、地方色豊かな料理が多い。

近年、スーパーフードとして注目のそばの実やそば粉を使った料理は、諸外国にも色々と存在する。今回はそば粉を使って作る、食事系のクレープ「ガレット」。フランス北西部・ブルターニュ地方の郷土料理を紹介しよう。

フランス料理だとか、クレープだとか言われると、なんだかおしゃれで難しいのではないかと想像しがちだが、小麦粉のクレープよりも単純で、素朴な味わいが楽しめる手軽な一品なので気負わず取りかかるべし。

<そばガレット生地:材料(4~5枚分)>

そば粉 100グラム / 炭酸水 1カップ/ 塩 小さじ1 / 卵 1個

生地は躊躇せず一気に流し、全体に丸く広げる=PIXTA
<作り方>
(1)そば粉に、炭酸水、塩、卵を合わせた液体を注ぎ、混ぜ合わせる。ラップをして最低30分ほど置く
(2)熱したフランパンにお玉1杯弱の生地を、躊躇せず一気に流し、全体に丸く広げる
(3)表面が乾いてきたら裏返し、数秒で焼き上がり

本来ガレットの作り方は、小麦粉のクレープのように両面を焼いてから具材をトッピングするのではなく、片面だけを焼いてその上に具材をのせ火を通す。ここでは先に両面を焼いて、生地を仕上げておこう。

パリ・モンパルナス通りは、通称ガレット通りと呼ばれるほど、ガレット店が密集している

日本では、場所柄「おしゃれ」とされている地域に、ガレット専門店が出店していることが多い。店構えも内装もおしゃれで、店員も客人もおしゃれに見えてしまう。現地では、こぢんまりとした家族経営店も多く、日本のお好み焼き店のような感覚だ。東京・月島にある「もんじゃ通り」のように、パリには「ガレット通り」と呼ばれるストリートもある。

好みの具材を好みの組合せで、自由に楽しめる ただし汁気の多い食材は、生地がやぶけてしまうので注意=PIXTA

日本で、お好み焼きはお好み焼き店で食べる。フランスで、ガレットはガレット店で食べる。ガレット店には、小麦粉で作ったデザート系のクレープもあるが、クレープ店で、そば粉のガレットを提供している店はほとんどない。もんじゃ店にお好み焼きはあるが、お好み焼き店にもんじゃ焼きがないようなものか。最近では、日本のカフェやビストロなどでもガレットを提供する店が増えてきた。大阪には、ガレットを提供しているお好み焼き店も存在する。

お好み焼きやもんじゃ焼きは、豚玉やミックスなど、具材によって呼び方に違いがあるように、ガレットも具材により名前がついている。定番は、卵と生ハム、エメンタールチーズをのせた「ガレット・コンプレ」。

<ガレット・コンプレ:材料(2枚分)>

そばガレット生地 2枚 / 卵 2個 / 生ハム 8枚 / ピザ用チーズ 適量

<作り方>
(1)フライパンで半熟の目玉焼きを焼き、取り出しておく
(2)フライパンにガレット1枚を敷き、目玉焼き1個、生ハム、チーズをのせる
(3)生地の四辺を折たたみ、形を整える。弱火で加熱しチーズが溶けたらできあがり

外側の生地はパリッとして、かむとモチッとした食感が特徴。生地の作り方で、最低30分以上と記したが、余裕があれば3時間から半日ほど寝かしておくと、焼き上がりの食感がさらによくなる。最初に半熟の黄身を潰してから食べよう。

トッピングだけでなく、形も自在に楽しもう 四角でも三角でも、春巻きのように巻いてもよい

ずいぶん前になるが、ブルターニュ地方でも最北西に位置する県にあるコンカルノウという小さな港町を訪れた際、オバちゃんが一人で切り盛りするガレット店で昼食をとった。コンプレを注文すると、オバちゃんに「卵はどうする?」と聞かれ「目玉焼き」と答えると、同席していた地元フランス人が「ミロワールで」と、私の分の焼き加減も指定してくれた。日本ではホテルのモーニングなどで、卵の焼き方、焼き加減を聞かれることはあるが、ガレットの卵までとは驚いた。

フランス語で、目玉焼きは「ウッフ・オ・プラ」などと呼ぶ。写真のガレットにのっている目玉焼きは、鏡を意味する「ウッフ・ミロワール」と呼ばれ、黄身が潰れていない、黄身の上に幕が張っていない、ツルんとした鏡のような半熟状態の目玉焼きを指す。

コンプレ以外に、焼きたて熱々のソーセージを巻いたり、サラダをトッピングしたり、ブルーチーズにハチミツをかけたりと、具材も形も様々だ。好みの具材を好みの組み合せで楽しもう。これぞまさに、フランス版お好み焼きといわれるゆえんだろう。

「ガレット・デ・ロワ」 生地にソラマメか陶器の小さな人形を入れて焼く マメが入ったカット部分を食べた人が、その日の王様になれるという習慣がある=PIXTA

ところで、フランスで「ガレット」と呼ばれるものは、そば粉のクレープだけではない。

以前、知り合いのフランス人シェフが経営するビストロで、「今日はガレットないの?食べたいなあ」と言ったところ、「何のガレット?」と返された。私は具材を聞かれたのかと思い「コンプレでもエピナ(ホウレンソウ)でも何でも」と答えると、「ああ、そば粉のガレットのことだね」と。

そもそもの語源は小石を意味し、料理・菓子の名称では、平たく円形状に焼いたものを指す。日本でも知名度を上げてきた「ガレット・デ・ロワ(王様のガレット)」は、1月のキリスト教の公現祭(エピファニー)に食べる伝統菓子だ。他には、良質な乳製品の産地でもあるブルターニュ産のバターをたっぷり使用した、サブレのようなクッキーも、ジャガイモ生地で作ったパンケーキや薄切りにして円形に焼いたものなども、すべてガレットと呼ばれている。

そば粉のガレットのお供には、なんと言っても、リンゴの微発泡酒「シードル」が定番。ブルターニュ地方や隣のノルマンディ地方では、ブドウよりもリンゴの生育に適した風土のため、ワインよりもシードルが親しまれている。

ガレットのお供にはシードルが定番 シードルボウルに入れて飲むのがお約束=PIXTA

シードルは、シードルボウルと呼ぶ茶わんに入れて飲むのがお約束。以前、「サムゲタン」の回で紹介した「マッコリ」も茶わんに入れて飲む。知り合いの韓国人が「チヂミには絶対マッコリだよ」と言っていた。ガレットには茶わんでシードル、チヂミには茶わんでマッコリ。粉モノには、微炭酸なアルコールを茶わんに入れて飲むのが合うのだろうか。

そしてもう一つガレットに合うのは、「スープ・ドゥ・ポワッソン」だ。直訳すると魚のスープとなる。南フランス・マルセイユで有名な、魚介のスープ「ブイヤベース」の具が入ってないバージョン、フランス版のあら汁だと思ってもらえればよい。

日本でも、漁港で揚がったばかりの魚で作ったあら汁は濃厚でおいしい。ブルターニュ地方は港町が多く、新鮮な魚が漁獲されている。

「スープ・ドゥ・ポワッソン」 香り豊かで濃厚な、フランス版のあら汁

魚のあらと香味野菜を煮出して漉し、スープのベースを作る。そこに、トマトなどの野菜と白ワインを加えて煮込み、ミキサーにかけてできあがり。ルイユという、ニンニク風味のマヨネーズのようなソースを溶かしながら食べると格別だ。

クリスマスまであと数日。そばガレットをホットプレートなどで焼き、手巻きずしの要領で、おのおのが好みの具材をトッピングして食べるとパーティーが増す。この連休にガレットを作っておしゃれを気取るもよし。また平成最後の大みそかは、年越しそばの代わりにそばガレットで年越し、というのもアリではないか。まずは、気負わずにトライしてみよう。

(世界料理探究家 T.O.ジャスミン)

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