2019年9月21日(土)

森村泰昌や維新派、大阪・北加賀屋に 造船の街 創作の母港(もっと関西)
アート

関西タイムライン
2018/12/14 11:30
保存
共有
印刷
その他

かつて造船業で栄えた大阪市住之江区北加賀屋で、アート関連施設の開設が加速している。今秋に美術家の森村泰昌の個人美術館と、解散した劇団「維新派」の資料室が誕生し、非公開の施設を含めると大小計40ほどになった。アーティストが地区の建物の外壁に描いた壁画も評判で、アートの街として定着してきた。

オープニングに多くの人たちが訪れた「モリムラ@ミュージアム」(11月3日、大阪市住之江区)

オープニングに多くの人たちが訪れた「モリムラ@ミュージアム」(11月3日、大阪市住之江区)

森村の初の個人美術館「モリムラ@ミュージアム」(M@M)は11月3日、北加賀屋にある築40年の2階建て元家具店を改修し、この2階部分(400平方メートル)に誕生した。同地区にとっても初の美術館。森村は「何度も来る人が徐々に増え、地に足のついたネットワークを作り上げられるようなプログラムを組みたい」と抱負を述べた。

開館記念展(1月27日まで)はゴッホの自画像をまねて作った出世作のセルフポートレイト作品「肖像(ゴッホ)」のベルギー版など計約30点を展示した。森村が1980年代に名画中の人物に扮(ふん)する作品を確立する過程や、同年代の美術動向がうかがえる。

アートによる街づくりを主導する不動産賃貸業、千島土地の芝川能一社長は、開館式典で「森村さんの施設を迎えることができ、街のブランドの確立につながる。アートで活性化し、世界から人が集まる街にしたい」と話した。

■文化住宅を改装

劇団維新派の資料を常設展示する「維新派資料部屋」(大阪市住之江区の千鳥文化)

劇団維新派の資料を常設展示する「維新派資料部屋」(大阪市住之江区の千鳥文化)

「維新派資料部屋」は11月26日、M@M近くのコミュニティースペース「千鳥文化」(2階建て)の2階角部屋(約10平方メートル)にオープンした。レトロな小空間に維新派を主宰した松本雄吉の蔵書や劇評掲載誌などを設置。維新派の制作を務めていた清水翼は「少人数でゆっくり過ごし、松本の創作の一端に触れてほしい」と話す。

千鳥文化は築約60年の元文化住宅で、2階は造船関連業の従事者らが暮らしていたという。昨年夏に建物の半分を改装し、2階の一画にまず美術家の金氏徹平の作品を展示した。家主の千島土地は、2階の残る4部屋も美術関係の展示を構想。同社地域創生・社会貢献事業部の北村智子部長は「北加賀屋はまだ通年公開施設が少ないので、ここはいつ来ても楽しんでもらえる場にしたい」と言う。

北加賀屋地区でアート関連施設の開設が進んだ理由は、千島土地の方針がある。同社は同地区の土地のほぼ半分の約23万平方メートルを所有。1960年代後半から、造船業の地区外への移転がみられだし、バブル経済崩壊後に工場跡や空き家が増えた。このため、同社は街の活性化の方策としてアートに目を向け、2004年に名村造船所大阪工場跡地(約4万平方メートル)を大規模イベントスペースに転用。09年からアートの取り組みを地域一帯に広げた。

■安い賃料が魅力

入居するアーティスト側からみると、物件によって条件が違うが、安価な賃料と使いいいように改装できることが魅力のようだ。その結果、ヤノベケンジら6人の大型美術作品の収蔵庫にした鉄鋼工場・倉庫跡の「MASK」のような大型施設やギャラリー、個人のアトリエなどが誕生した。

また、建物外壁にアーティストらが描いた壁画も画像共有サイトで紹介され、人気を呼んでいる。

千島土地は今後も、空き家や空き施設のアート関連施設への転用を検討している。大阪大学の木ノ下智恵子准教授は「音をさほど気にしなくてもよい地域特性に、制作や保管場所を探す美術家のニーズをうまく組み合わせた試み」と話す。

M@Mの開館日は毎週金~日曜。12月25日~1月10日は休館。12月24日と1月14日は開館。維新派資料部屋は火・水曜、12月25日~1月9日は休館。

(編集委員 小橋弘之)

保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報

新しい日経電子版のお知らせ

より使いやすく、よりビジュアルに!日経電子版はデザインやページ構成を全面的に見直します。まず新たなトップページをご覧いただけます。

※もとの電子版にもすぐ戻れます。