2019年8月26日(月)

せかい旬景 タンゴの国で考えるスポーツの未来と男と女

2018/12/15 5:50
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スポーツや報道における男女格差の解消について――。この秋、第3回夏季ユース五輪がアルゼンチンの首都ブエノスアイレスで開催された。大会に伴い国際オリンピック委員会(IOC)が企画した「ヤング・リポーターズ・プログラム」という若手ジャーナリストの育成を目的としたプログラムに参加する機会を得た。その実習のテーマに掲げられたのが冒頭の一文だ。

ユース五輪の開会式で繰り広げられたアトラクション(10月、アルゼンチン・ブエノスアイレス)

ユース五輪の開会式で繰り広げられたアトラクション(10月、アルゼンチン・ブエノスアイレス)

「何が正しいか自分で見極め、信じる道を進むことです」。元五輪競泳選手で現在もジャーナリストとして活躍するドナ・デ・バローナ氏。プログラムの一環で彼女の体験談を聞く機会があった。10代から活躍し1964年の東京五輪で2つの金メダルを獲得したが、当時女性が大学の奨学金を得られなかったため競技キャリアを諦めねばならなかったという。その後はテレビのスポーツキャスターに転身し、スポーツにおける男女平等を訴え続ける。駆け出しのヤングリポーターたちを前に彼女の言葉は力強い。

ヤングリポーターからの質問に答えるデ・バローナ氏(中)

ヤングリポーターからの質問に答えるデ・バローナ氏(中)

「どうして女子選手は男性コーチと一緒に紹介されなければいけないのか」。同じ競技でも男子に比べて女子選手の扱いが小さかったり、「美人」などの形容詞つきで紹介されたりと、参加者が各国の事例を持ち寄った。「女性記者というだけで知識がないと決めつけられることがある」と自らの体験を訴えるリポーターも。日本でも伝統的に女性が立ち入れない場所があることを例に加えた。

ヤングリポーターはおそろいのユニフォームを着用

ヤングリポーターはおそろいのユニフォームを着用

プログラムには18~24歳の若手スポーツ記者、フリーのカメラマン、ジャーナリズム専攻の学生など世界各国、地域から計35人が集まった。男女比はほぼ半分で日本からは記者を含め2人。内戦が続くイエメンからのアナウンサーやハリケーンの被害から生活再建が途上にあるドミニカ共和国のラジオ局記者。バックグラウンドは十人十色だ。3週間寝食をともにし、記事執筆、テレビ放送、ソーシャルメディア、写真の4分野で、座学や実際の競技を通じ取材の基本を学ぶ貴重な時間を過ごすことができた。

卓球混合団体で銀メダルを獲得した張本・平野組

卓球混合団体で銀メダルを獲得した張本・平野組

この記者育成プログラム以外でもユース五輪ではオリンピックに先駆けて様々な新しい試みが行われた。大会自体が男女平等をテーマの一つとしており、卓球、柔道、水泳など多くの競技で男女混合種目を実施。卓球混合団体では日本の張本・平野組が銀メダルに輝くなど、その活躍に拍手を送るとともに新鮮さを感じた人も少なくないだろう。

また圧巻だったのはスタジアムを離れ街の大通りで無料公開された開会式だ。ブエノスアイレスのシンボル「オベリスコ」を舞台に、アクロバットやアルゼンチンタンゴが繰り広げられ、選手、観客、街が一体となった情熱的な演出に夢中でシャッターを切った。こんなふうに2年後の東京も世界中をくぎ付けにできるだろうか。

ブエノスアイレスのシンボル「オベリスコ」を舞台に行われた開会式

ブエノスアイレスのシンボル「オベリスコ」を舞台に行われた開会式

次回の夏季大会はセネガルの首都ダカールで開催される。「五輪」の名を冠した大会で初のアフリカ開催だ。またアルゼンチンのマクリ大統領は今大会をステップに五輪招致を検討すると表明。ユース五輪は、アスリート、記者、開催国、それぞれにチャンスのある大会でもある。

2020年東京五輪を間近に控える。世界のアスリートたちの躍動に関心は集まるが、報道する側も問題意識を持ちスポーツの未来につながる大会になることを期待したい。

(写真部 小幡真帆)

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