2019年5月22日(水)

トルコ大統領、シリア軍事作戦を警告

2018/12/13 18:00
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【イスタンブール=佐野彰洋】トルコのエルドアン大統領は12日、「数日以内」との期限を示しシリア北部での新たな軍事作戦に踏み切る可能性があると警告した。安全保障上の最大の脅威とみなすシリアのクルド人勢力への支援を続ける米国に業を煮やし、同勢力の排除を迫る事実上の「最後通告」を発した。現地には米軍も駐留しており、作戦開始に踏み切れば対米関係悪化は確実だ。

「数日以内にユーフラテス川の東から分離主義テロ勢力を取り除く作戦を開始する」。エルドアン氏は首都アンカラの演説でこう強調した。軍事行動の期限を切る発言は異例だ。米軍は標的にしないと明言する一方で、トルコからシリアに流れるユーフラテス川以東のどこを攻めるのかには言及しなかった。一方、米国防総省の報道官は12日の声明で一方的な軍事行動は「受け入れられない」と述べ、トルコをけん制した。

トルコはシリアと約900キロメートルにわたって国境を接する。2011年に始まったシリア内戦では過激派組織「イスラム国」(IS)が台頭。その掃討の過程で、米国が支援、重用したのがシリアのクルド人勢力、民主連合党(PYD)とその武装部門、人民防衛隊(YPG)だ。YPGは米国主導の有志連合の地上部隊として機能し、ISが「首都」と称したラッカやシリア北部一帯を支配下に収めた。

国内のテロ組織と同根であるYPGの勢力拡大に危機感を深めたトルコはユーフラテス川西岸の要衝マンビジュから、YPGを撤退させるよう米国に再三要求してきた。

しかし、これまでに実現したのは限定的な米トルコ合同軍事パトロール程度で、エルドアン氏は「時間稼ぎ戦術」だと米政府の態度を非難する。

親密なイスラエルと敵対するイランの影響力拡大を抑えるため、米国はIS掃討終了後もシリア北部への駐留を継続する方針だ。米軍にとってYPGの利用価値はまだ高く、トルコの要求をそのままはのめない。

11月にはマティス米国防長官が、YPGとトルコの交戦を避けることを目的とする国境沿いの監視拠点建設に言及した。

さらに今月6日には、米軍制服組トップのダンフォード統合参謀本部議長がYPG主体とみられる「3万5000~4万人」規模の部隊の訓練・装備を進めていると語り、トルコ側の猛反発を呼んでいた。

こうした米側の一連の言動にトルコ側は焦りを募らせ、大統領の強硬発言につながった。トルコは16年夏と18年1月にもYPG掃討を目的にシリア北部で越境軍事作戦に踏み切っており、作戦回避へ米側が何らかの妥協案を示すかが焦点だ。

エルドアン氏には安保面の必要性に加え、内政上の思惑もありそうだ。トルコでは19年3月末に統一地方選が迫るが、今夏の通貨危機の余波で景気の低迷が鮮明となっている。シリアでの軍事作戦や予想される米国との対立は国民のナショナリズムを刺激し、支持基盤の引き締めにプラスに働く可能性が高いからだ。

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