2019年3月21日(木)

米IT巨人のセキュリティー戦略 特許から読み解く

CBインサイツ
コラム(テクノロジー)
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2018/12/17 2:00
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CBINSIGHTS

 米フェイスブックの利用者データ流出問題は、「データ資本主義」時代が直面する課題を我々に突きつけた。あらゆる個人データをサービスの改善につなげてイノベーションをけん引する一方で、「守り」を固めることは企業の大小を問わずに共通の経営課題となっている。フェイスブックをはじめとする米IT(情報技術)の巨人たちはどんなセキュリティー対策を目指しているのか。各社が出願・取得した特許からその方向性が浮かび上がる。

米IT大手の「FAMGA(フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト、グーグル、アップル)」はデータセキュリティーを強化している。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週1回掲載しています。

こうした企業は私たちの行動を追跡し、金融情報を保存し、職場や住所、買い物履歴などを把握している。このため、個人情報の盗難や悪用のリスクに常にさらされている。

例えば、フェイスブックはログイン情報などが流出したことが9月25日に発覚し、最大9000万人分のアカウントが乗っ取りに遭う恐れがあると発表した。

一方、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は米政府と契約し、極秘情報を含む政府の様々なワークロードに対応するリージョン(データセンター群)の「シークレットリージョン」を手掛けている。こうした情報を守るには、確実なデータセキュリティー機能が必要だ。

米IT界の巨人の特許から各社の情報セキュリティー戦略を探った

米IT界の巨人の特許から各社の情報セキュリティー戦略を探った

もっとも、この分野で革新を迫られているIT大手はフェイスブックとアマゾンだけではない。FAMGA各社はいずれもデータセキュリティーに関するシステムを開発して特許を出願し、プライバシーとセキュリティーを強化するために専門人材の採用を進めている。

本稿ではCBインサイツの特許分析データに基づき、各社のデータセキュリティー分野での特許出願の動向について調べる。

データの匿名化や準同型暗号(暗号化したまま計算・統計処理できる暗号方式のこと)などの手段はまだ使われるようになったばかりだが、我々の暮らしを一変させる可能性を秘めている。FAMGAはこうした分野の開拓にどれほど深く関わっているのだろうか。

企業の研究開発やイノベーションの取り組みの方向性を見極める上で、特許は有意義な指標だ。個々の特許は将来のプロダクトの概略にすぎないかもしれないが、全体的な出願状況に目を向けると、戦略の方向性や各社が重視する分野が見えてくる。

フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト、グーグル、アップルによるデータセキュリティー分野の特許出願件数(2013~17年)

フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト、グーグル、アップルによるデータセキュリティー分野の特許出願件数(2013~17年)

■広告主とのデータ共有のためのセキュリティーに注力

フェイスブックとグーグルはネット利用者を追跡し、そのデータを広告主に売却している。利用者をターゲットにして収益を上げつつ、利用者のプライバシーも守れる新たな手段を見いだそうとしている。アップルはプライバシー対策が最も進んでいるという評価を維持しながら、広告事業への参入を進めている。

<フェイスブック>

フェイスブックは2018年1月、「利用者を特定できる情報の匿名化」という特許を出願した。同社は個人情報を生データに混ぜることで、元のデータの内容を反映しつつも外部企業が利用者を特定できないようにしたいと考えている。

このシステムを使えば、フェイスブックのサーバーに保存されている利用者の個人情報は実際のIDと直接ひも付けされなくなる。目指しているのは、個人情報を完全に削除できる匿名システムだ。

これが実現すれば、第三者への個人情報の流通を厳しく規制する欧州連合(EU)の「一般データ保護規則(GDPR)」などの新たな規制を守りつつ、利用者の個人情報を広告主に共有できるようになる。データが流出しても、利用者の個人情報は守られる。

<アップル>

アップルは17年12月、「匿名IDによるメディアコンテンツのデータのリパッケージ」という特許を出願した。

これにより、アップルの端末の利用者は、広告キャンペーンの効果を測定しようとする広告主などの外部企業にIDを渡さずに、カスタマイズしたコンテンツを楽しめる。

アップルはコンテンツ連動型広告を増やす方針を示唆している。つまり、同社の広告技術では、フェイスブックやグーグルほど侵略的に個人を特定する手法は使わない。

アップルは6月に開いた世界開発者会議で、外部企業のクッキーと、ウェブサービスが個人を特定するために使う追跡手法「フィンガープリント」をウェブブラウザー「サファリ」では使えないようにする方針を発表した。これはネット上のプライバシーにとって大きな動きとなる。ネット上の至る所で利用者を追跡したり、ターゲットの対象にしたりしているフェイスブックを明らかにけん制する動きだ。

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