伊藤忠、比でパイン発電 高騰の電気、一部供給
伊藤忠商事はフィリピンでパイナップルの残さを使った発電を始める。果物生産の傘下企業、ドール・フィリピン(南コタバト州)の果物加工工場で排出される残さから、燃料となるバイオガスを取り出す。現地企業が発電を請け負い、発電した電気を工場で利用する。電気代が高騰するフィリピンで電気を自給できればコスト削減につながる。
伊藤忠はドール・フィリピンがミンダナオ島に持つ2カ所のパイナップル加工工場の敷地で、2019年からバイオガス発電を始める。従来は飼料や堆肥、廃棄物としていたパイナップルの残さを燃料に変える。

パイナップルは成長過程で二酸化炭素(CO2)を吸収するため、バイオガスは再生可能エネルギーとみなされる。送電網から電気を購入する場合などと比べてCO2を年間10万トン削減できる。
設備の建設はインフラ大手のメトロ・パシフィック・インベストメンツ傘下のスララ・バイオガス・ベンチャーが担う。スララ社が自己資金で設備を建設し、ドール・フィリピンに大手電力よりも安い価格で電気を16年間にわたり供給する。
フィリピンでは中間層の増大などにより電力需要が拡大している。発電設備の供給が追いつかず電気代が年間7~9%高くなっている。

このためパイナップルの皮をむく工程や缶詰を作る設備で電気を使うドール・フィリピンでは電気代削減が課題のひとつだった。設備が稼働する21年度に年間電気使用量の2割強ほどをバイオガス発電の電気で賄える。
伊藤忠は13年に約1500億円をかけて米食品大手のドール・フード・カンパニーからアジアの青果物事業と、世界の果汁飲料などの加工食品事業を買収した。
そのうちパイナップルは日本向け生鮮品では5割、世界向け缶詰販売では2割弱のシェアを持ち、バナナと並ぶ主力製品の1つ。現在のパイナップルの生産規模は年間70万トンだが、生産性を向上し数年内に100万トンへと増強を目指す。ドール事業は年間で約2800億円を売り上げている。(大平祐嗣)