2019年2月23日(土)

米中 危うい戦線拡大
米 安保たてに譲歩迫る 中 友好国にも矛先

トランプ政権
貿易摩擦
経済
中国・台湾
北米
2018/12/13 1:30
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【ワシントン=河浪武史、北京=永井央紀】米中対立の戦線が拡大してきた。中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)の幹部がカナダで逮捕された事件を巡り、トランプ米大統領が中国側との取引カードに使うと明言。サイバー攻撃に追加制裁を科す検討にも入り「ハイテク摩擦」に一気に切り込む。融和ムードを演出してきた中国もカナダの元外交官を拘束するなど、米国の友好国も巻き込んで緊張が高まっている。

「中国との貿易面でのディール(取引)に効果があって、安全保障面でもプラスになるなら必ず介入するだろう」。トランプ氏は11日の米メディアとのインタビューで、ファーウェイの孟晩舟・副会長兼最高財務責任者(CFO)が米当局の要請で逮捕された事件について強調した。

米政権は表向きは米中協議とファーウェイの逮捕事件は関係ないとの立場だった。司法省の捜査をホワイトハウスの裁量でゆがめれば、法治国家としての姿が著しく損なわれる。トランプ氏はそうしたタブーを完全に度外視して対中圧力を強めるとした。

トランプ政権は今年4月、同業の中興通訊(ZTE)にイラン問題で制裁を科し、半導体などの調達網を断って経営危機に追い込んだ。ファーウェイは売り上げ規模でZTEの5倍。米国製部品を年100億ドル規模で購入しているとされ、経済制裁を科せば瞬く間に経営危機に陥りかねない。中国揺さぶりの「最大のカード」となる。

米国の要請で孟副会長を逮捕したカナダ当局は11日、ひとまず同氏の保釈を決定した。米国への身柄引き渡しの可否は来年2月以降に判断するとしており、米中に刺さったファーウェイ問題は長期化が必至。2月末を期限とした貿易協議で譲歩を迫る材料になると見るのは自然でもあった。

米メディアは11日、米当局が中国政府系のハッカー集団を週内にも刑事訴追すると相次いで報じた。米企業や政府機関へのサイバー攻撃に関与した関係者らへの経済制裁も検討する。11月に発覚した世界最大手ホテルチェーンのマリオット・インターナショナルでの最大5億人の顧客情報流出も中国当局が関与していたという。

トランプ氏の対中強硬姿勢は巨額の貿易赤字への不満から始まった。それが中国の国家産業育成策「中国製造2025」の打破に焦点が移り、2500億ドルもの中国製品に関税を課す貿易戦争に突入した。しかし米国は報復関税を課されて対中貿易赤字が逆に拡大している。中国の譲歩を引き出すため、関税カードに加え、ファーウェイ幹部の身柄問題やサイバー攻撃への追加制裁などでより直接的な手法に傾きつつある。

中国は米国に孟氏の逮捕状撤回を求めつつも、米中首脳会談で合意した貿易協議は「協力関係ができている」と進める構えを見せている。カナダの元外交官の拘束についても、中国外務省の陸慷報道局長が12日の記者会見で、確認は避けつつ「関係部門が法に基づいて処理するだろう」と強調した。

しかし北京の外交筋の間ではカナダの元外交官の拘束は中国による報復措置との受け止めが大勢だ。陸氏は拘束された元外交官が所属するシンクタンクが中国国内での登録がないと説明しており、中国で活動する外国人への統制強化の姿勢を鮮明にした。

中国は14年に今回と同様にカナダが米国の要請に基づいて中国人を逮捕した際、遼寧省に住んでいたカナダ人夫婦をスパイ活動の疑いで拘束した。外交問題に直面すると、経済規模や軍事力とは関係ない非対称な手法で圧力をかけることが少なくない。

米中の対立が先鋭化すれば日本も無傷ではいられない。日本は米国と歩調をあわせ、ファーウェイなどを政府調達から事実上排除すると決めた。中国は「中国企業が差別的な対応を受ける筋合いはない」と不快感を表明している。

日本企業にはファーウェイ問題が飛び火することへの懸念が浮上。拘束されていた2人の日本人に対する実刑判決がこの1週間で立て続けに出たことも「間接的な圧力では」との不安を増幅させている。米国は中国への渡航に「リスクがある」と勧告する検討に入った。中国も一部の国有企業に「不要不急の米国出張はするな」と通知した。

米中は知財問題やサイバー攻撃など貿易・投資問題を議論する「90日協議」を始めたばかり。10日には米通商代表部のライトハイザー代表と中国の劉鶴副首相が電話会談し、中国が米国車に課す報復関税(25%)を撤回する意向を示した。雪解けムードが一瞬ちらつくが、米中は一転して一触即発だ。ライトハイザー氏や劉氏ら米中実務者の直接会談は「いまだに日程がセットされていない」(米中交渉筋)という。

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