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今日も走ろう(鏑木毅)

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故障と向き合って生きる その先に心身の成長が…

2018/12/13 6:30
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大谷翔平選手が今年のメジャーリーグ新人王になるという快挙をなし遂げた。ただ、まばゆいばかりのはつらつとした活躍の裏で故障に悩まされ続けたシーズンでもあった。大選手には故障がつきものだ。マラソンでかつて無敵を誇った瀬古利彦さんも「けがのデパート」と呼ばれ、現役時代は故障が絶えなかった。愛弟子で逸材と呼ばれた渡辺康幸さんも引退の原因は度重なるアキレス腱(けん)の故障だった。

トップ選手と故障はある意味切り離せない宿命ともいえる。人よりも抜きんでるには己の限界点に近い、時にはそれを超える領域まで追い込まなければならない。例えば長距離走では1000メートルを10本走るというトップ選手定番の厳しいメニューがある。これも11本、12本と増やしてゆくと故障と表裏一体のゾーンに突入する。このリスクを冒さなければ現状を打破できないし、大きな成果も出せない。オリンピックのマラソン代表で過去に何人もの選手が欠場を余儀なくされたり、故障が原因で望んだような成績を残せなかったりしたのもそれゆえだ。

私も故障にはこれまで悩まされ続けてきた。特にサラリーマンを辞めてプロトレイルランナーになった40歳から足かけ4年続いたアキレス腱の故障は、職をなげうって背水の陣でのぞんだ世界最高峰の舞台で結果を出そうと厳しいトレーニングを積んだのが原因だ。結果は3位。その後は脚の痛み以上に心のつらさとの闘いにもがくことになった。

新たに体幹を鍛えるトレーニングを取り入れた

新たに体幹を鍛えるトレーニングを取り入れた

一方で故障を防ぐ方法もわかってきた。体幹部を中心に体全体の動きが連動するようトレーニングを積むと一点にかかる運動の衝撃を散らし、故障のリスクを抑えることができる。

トレーニング後のケアの時間もしっかりと確保するよう心がけた。20時間以上も野山を走るトレイルランニングではいくら走っても常に走り足りないという不安に駆られ、際限なく走り続けてしまいがちだ。こうした考え自体を改めた。大学駅伝で近年隆盛を誇る青山学院大学も同じような考え方で、まずは故障者を減らし、質の高いトレーニングを継続して積めているのが躍進の秘訣だろう。

人生を振り返ると故障がその後の人生を変える出来事になっていることに気付く。青春の全てを賭して取り組んだ箱根駅伝も座骨神経痛を発症して夢破れた。その挫折体験がのちにトレイルランニングにのめり込む原動力となったのは間違いない。40代のアキレス腱の故障にしてもこのけがを克服したことで、痛みなく走れる心からの喜びを感じられるようになり、50歳になった現在も現役にこだわるモチベーションとなっているともいえる。

スポーツ科学の進歩によって以前よりも故障のリスクは減じているとはいえ、良くも悪くも故障とどう向き合うかがアスリートを心身ともに一回り大きく成長させる。故障の効用とでもいえようか。故障を乗り越えた大谷選手のさらなる活躍を疑わないのはそんな理由からだ。

(プロトレイルランナー)

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