豪州で女性専用フィットネス 多民族国家、ムスリムに需要

2018/12/11 19:30
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オーストラリアはフィットネスが盛んだ。町の至る所にジムがあり、ランナーを見かけることも多い。その豪州で独特の進化を遂げているのが女性専用のジムや運動グループだ。男性の目を気にせずにトレーニングに励みたいという女性心理に加え、世界から移民が集まる多民族国家ならではの事情もあるようだ。

女性向けのトレーニングを行うダラル・カラ・ハサンさん(シドニー)

12月、夏を迎えたシドニーの公園では、黒い長袖のシャツと長ズボンに身を包んだ約20人の女性がスクワットや腕立て伏せに励んでいた。「もっとできる、頑張って!」。トレーナーとして声を張り上げるのはダラル・カラ・ハサンさん(29)。女性のための運動グループ「ドリーズ・ブートキャンプ」の主宰者だ。

レバノン系移民の家に生まれ、厳格なイスラム教徒の父親からジムに行くことを禁じられた。21歳で初めてジムに足を踏み入れ、運動の楽しさを知った。

「ムスリムの女性は『異性の視線を集めること』はできない。それなら女性だけでやればいい」と考え、2013年にトレーナーとして独立した。現在160人の顧客を抱える。会費は月200豪ドル(約1万6千円)で、9割がイスラム教徒の女性だ。

オーストラリアで女性専用ジムを約70店舗展開する「ファーンウッド」はダンスプログラムからパーソナルトレーナーが付く筋力トレーニングまで提供する本格派だ。ここでもイスラム教徒の女性の姿が増えている。バングラデシュ系移民のアイシャさんは「女性専用ジムなら(男性の視線を避ける)ヒジャブをかぶらず運動できる」と話す。

豪統計局によると、イスラム教徒の人口は16年に約60万人で、豪州全体の2.6%にあたる。その数は5年前から27%増えた。スポーツ好きの女性も多く、ムスリム向けの商品開発にもつながっている。

フランスの自治体が禁止して話題となったイスラム女性向けの水着「ブルキニ」が開発されたのも実は豪州だ。レバノンから幼少時に移住した女性アヒーダ・ザネッティ氏が、全身を覆うデザインを考案した。100豪ドル前後の商品をそろえる店舗の店員は「紫外線を防ぎ、体のラインも隠すので、イスラム教徒以外の購入者も多い」と話す。

調査会社IBISワールドによると豪州のフィットネスジム市場は18年に25億豪ドル(約2050億円)となる見込み。人口が豪州の約5倍の日本が4610億円(17年、日本生産性本部まとめ)であることを考えれば、1人当たりの支出が大きいことが分かる。

運動好きの多さと多様な文化的背景から来る需要を掛け合わせれば、さらに新しい市場が生まれそうだ。(シドニー=松本史)

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