あなたに似合うスーツ 体形×身長の8モデルから選ぶ
あなたの「骨格体形」に合うスーツを探す(下)
先日、ある男性から「自分の体形ってあまり人から指摘されないから、わからないんですよね」とのお話がありました。「お!グッドタイミング♪」と思いながらお聞きしていると、その方は同僚と洋服を見る機会があって、同僚から「○○さんって『なで肩だから』こういう方がいいんじゃない?」といわれ、「あぁ、だからスーツのときと違って、プライベートでセーターを着ていると、なんだか決まらない感じになっていたのだと改めて納得しました」とのこと。
学生時代や30歳代前半くらいだと上司や友人からはっきり欠点を指摘される機会はあるけれど、40歳代になると多少の体形の変化も伴い、「失礼になるから」とか「傷つけてはいけない」などと周りから気遣いされるようになり、なかなか自身の体形を客観的に見ることができないというのです。特に昨今、様々なハラスメントが存在しているから、うっかり変なことを言えないご時世になってきていますので、この傾向は、いいような悪いような……。
「見せたい自分」になるためにはまず、自身の骨格体形を、客観的に把握することが不可欠です。前回掲載「『なんとなく』スーツを選ぶな 自分の骨格を把握せよ」でご紹介したように、骨格体形は主に以下の4つに分類できます。
改めて、それぞれの特徴と周囲の人に与える印象をおさらいしましょう。
代表的な4体形
(1)マッスル
筋肉質でがっしりした体形。
「頼りがいのある」「重厚感」「むさ苦しい」

(2)オーバル
ふっくらした体形で、肥満度をあらわすBMI(体格指数*)が25以上。
「おおらか」「安心感」「包容力のある」「暑苦しい印象」
※身長に対し望ましい体重を判定する指数 BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

(3)ストレート
太ってもいない、痩せてもいない、すらりとした体形。
「精悍(せいかん)」「スマート」「軽快」「個性的でない」

(4)スリム
やせ形で、ひょろっとした体形。
「中性的」「若々しい」「頼りない」

いかがでしょう。ご自分の体形はどのタイプだったでしょうか。つぎに、それぞれの体形に合うスーツ(ジャケット)のタイプをご説明します。以下のポイントについて、それぞれご提案いたします。
(a) シングルブレスト(ボタンの配置が1列)かダブルブレスト(ボタンが2列)か
(b) ボタンの数
(c) 着丈
(d) 色
(e) ストライプ柄
(f) ラペル幅(ジャケットの下襟)
(g) ゴージラインの位置(上襟とラペルを縫い合わせたライン)
(h) ベント(ジャケットの裾に入っている切れ目)のタイプ
具体的な着こなしのお薦めについては、体形別に4つ、さらに身長の高低で、計8つに分類してご提案しましょう。
※身長175センチメートル以上を「背が高い人」、160センチ以下を「背が低い人」とするのが一般的ですが、ここでは170センチを基準として171センチ以上を背が高い人、171センチ未満を背の低い人といたします。
(1)マッスルで背が高い人
シングル 2つボタン 普通丈
濃紺、チャコールグレーなど ストライプ広め
ラペル太め ゴージライン高め センターベント
(2)マッスルで背が低い人
シングル 2つボタン 着丈短め
濃紺、チャコールグレーなど ストライプ広め
ラペル太め ゴージライン高め サイドベンツ
(3)オーバルで背が高い人
ダブル 2つボタン 着丈やや長め
濃紺、チャコールグレーなど ストライプ広め
ラペル太め ゴージライン普通 ノーベント(切れ目なし)
(4)オーバルで背が低い人
シングル 2つボタン 着丈短め
濃紺、チャコールグレーなど ストライプ広め
ラペル太め ゴージライン普通 サイドベンツ
(5)ストレートで背が高い人
シングル/ダブル 3つボタン/6つボタン 着丈普通
ミディアムグレーなどの薄めの色、チャコールグレーなど ストライプ狭め
ラペル細め ゴージライン高め センターベント
(6)ストレートで背が低い人
シングル 2つボタン 着丈短め
ミディアムグレーなどの薄めの色、チャコールグレーなど ストライプ狭め
ラペル細め ゴージライン普通 サイドベンツ
(7)スリムで背が高い人
シングル/ダブル 3つボタン/6つボタン 着丈やや短め
ミディアムグレーなどの薄めの色、チャコールグレーなど ストライプ狭め
ラペル細め ゴージライン普通 サイドベンツ
(8)スリムで背が低い人
シングル/ダブル 2つボタン/4つボタン 着丈短め
ミディアムグレーなどの薄めの色、チャコールグレーなど ストライプ狭め
ラペル細め ゴージライン普通 サイドベンツ
◇ ◇ ◇
ご自身の体形が、いまひとつわからないという方は、全身が映る鏡を用意して、自分で確認してみてください。体形がよくわかるように薄着がよいでしょう。
(1)真っすぐ正面を向く
(2)前髪は上げるか、耳に掛けるなどし、顔の形がはっきりわかるようにする
(3)顎を上げない、下げない
(4)笑顔ではなく、真顔で
(5)自撮りする際は、床とカメラが水平になるように注意
※ポーズを取ったり、斜に構えたり、上から俯瞰(ふかん)したり下からあおったりしない。
それでは実際の事例を見てみましょう。モデルを務めてくださるのは五藤良将さん(40)です。医師という仕事柄、普段はもっぱら白衣とのことですが、最近はスーツを着用する機会も増えてきたそうです。

まず顔形から見てみましょう。ベース型でやや面長(顔幅が狭く、下唇から顎までの長さが長い)といえます。身長は175センチで体形はスリム。なで肩が特徴です。
先にご紹介した8分類の(7)スリムで背の高い人 にあたりますので、ジャケットはシングルでもダブルでも、どちらでもお似合いになります。
ジャケットはやや短めの着丈がお薦めです。3つボタンで、色はミディアムグレーなどの薄めの色、チャコールグレーなど。ストライプ柄の幅は狭め、ラペル幅は細めで、ゴージラインは普通、ベントは、サイドベンツがいいでしょう。ワイシャツの襟は、レギュラータイプ。ネクタイはあまり濃い色ではなく、中間色で、結び方はシングルノットがお薦めです。
ということで、最終的には写真のとおりのコーディネートをご提案しました。
2つボタンですが、ベストの合わせの位置が高いため、視線を上の方に誘導して、すらりとした精悍な印象を演出します。ワイシャツは細いストライプ。襟の部分が浮かないようにストラップがついた「タブカラーシャツ」なので、首回りもすっきりしています。ネクタイもスーツと同色にしてシックな印象に仕上げました。

番外編として、もう1つコーデをご提案。カジュアルなシーンにもしゃれた印象で臨める同色のタートルネックを合わせました。一般に、なで肩の方にはタートルはお薦めできないのですが、色を合わせて、スーツと全体感を醸すことで、欠点が気にならないようにしました。

協力:リングヂャケットマイスター 銀座シックス店

スタイルファクトリー社長、パーソナルスタイリスト協会代表理事。武蔵野美術大学短期大学部卒、全日本空輸で国際線客室乗務員として勤務した後、独立。エグゼクティブを中心にしたスタイリングやファッションプロデュース、研修などを手がける。著書に「桁外れの結果を導く 一流の男の演出力」など。
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