2019年5月25日(土)

バイオマス発電8割動かず 林業人手不足、燃料輸入頼み

2018/12/11 11:56
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植物などの生物資源を燃やして電気をつくるバイオマス発電がカベに突き当たっている。燃料の確保が難しく、政府の固定価格買い取り制度(FIT)の認定を受けた案件の8割以上が稼働していない。天候に左右されない安定した再生可能エネルギーとして期待がかかるバイオマス発電だが、人手不足もあって国内の森林資産を生かし切れず、燃料の輸入頼みに拍車がかかっている。

木質ペレットは資材を切り出す時などに出たおが粉などを圧縮して作る固形燃料。

イーレックスが出資するマレーシアのPKS集積所から、燃料を積んだ船が大分県佐伯市の発電所に向けて出港した。

国内のバイオマス発電で主に燃料とするのは、木くずなどを固めた木質ペレットとパームやしの実の殻(PKS)だ。光合成で二酸化炭素(CO2)を吸収する植物を使うことで、燃焼時のCO2排出を相殺するとされる。

政府が掲げる2030年度の電源構成の計画では、バイオマス発電は全体の4%程度を占める。同7%の太陽光よりも低いものの風力(同1.7%)を上回る。国内の林業や製材業で生じる木材を有効活用できる安定的なエネルギー源として期待されている。

■FIT認定のうち稼働2割弱

しかし現状はそのシナリオ通りに進んでいるとは言いがたい。18年3月時点で政府がFITで認定しているバイオマス発電の容量は約740万キロワット。当初、買い取り価格が1キロワット時当たり24円と高く設定されたため、地場企業から大手電力まで多くの企業が参入。ただそのうち稼働したのは約130万キロワットと2割弱にとどまっている。

「燃料の調達が難航している」。福島県にバイオマス発電所の建設を予定していたある再生エネ事業者の担当者はこう明かす。19年春の稼働を予定していたが、燃料の確保のメドが立たず大幅に遅れる見込みだという。

■輸入量は5年で6倍に

バイオマス発電の主な燃料となる木質ペレットの場合、国内生産量は過去5年間、ほぼ横ばいだ。日本は国土の3分の2を森林が占めるが、山が多いため木材を切って下ろす手間がかかる。林業の従事者は高齢化が進み年々減少しており、生産量を増やすことは簡単ではない。

一方、木質ペレットの輸入量は5年間で約6倍に増加しており、「自給率」は約2割に低下した。ただ輸入燃料を確保できている事業者は一部に限られると見られ、多くが稼働にたどり着けない状態が広がっている。

再生可能エネルギーのレノバが16年に稼働させた秋田県の発電所では、県内の未利用木材が燃料の80%を占めた。それでも21年に稼働する7万5000キロワットの大規模発電所では国産燃料の利用は数%程度にとどまる見込みだ。

燃料不足に目を付けた海外企業も攻勢をかけている。木質ペレット世界大手の米エンヴィーヴァは三菱商事丸紅と長期契約を結び、21年から年150万トンを米国から輸出する。豪アルタス・リニューアブルズも10月、木質ペレット10万トンを10年間供給する契約を三井物産と結んだ。

新電力大手のイーレックスは自ら燃料調達に乗り出した。東南アジアのPKS集積所に出資し、12月上旬にはマレーシアからPKSを積んだ船が日本に到着する。自社で使うだけでなく、外部のバイオマス発電事業者への販売も始める。

■安定調達にリスク

自然エネルギー財団の相川高信上級研究員は燃料の輸入依存が強まっていることについて、「長期的な調達のリスクが高まる」と警鐘を鳴らす。

例えばPKS。主産物であるパーム油の生産過程で熱帯雨林を伐採するため、環境破壊につながるとの声も多い。すでにパーム油の生産量は頭打ちで、副産物であるPKSの供給量は増えにくい状況だ。

間伐材からつくる木質ペレットについても、プラスチックの代わりに木材を使う動きが世界的に広がるなど、市場環境が一変する可能性がある。

11月末の自民党の再生エネを巡る議連では、国産材の活用を重要視する声が上がった。ただ木質ペレットの場合、国産の価格は海外メーカーの工場で生産される輸入品の2~3倍とされる。バイオマス発電ではコストの約7割を占めるとされるだけに、発電事業者が割高な国産燃料を使う動機が働きにくい。

FITでは買い取り価格の一部を電力価格に上乗せしており、家庭や企業が負担している。国民負担分が燃料を供給する海外企業に流れることを問題視する声もある。バイオマス発電を持続可能なエネルギー源とするためには、燃料のコスト低減を促す仕組みのほか林業の活性化が必要になりそうだ。(坂本佳乃子)

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