2019年7月22日(月)

仏反政府デモ続く 改革固執のマクロン政権、窮地に

2018/12/10 16:44
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【パリ=白石透冴】フランスで11月中旬、燃料税引き上げに反対して始まったデモはマクロン政権の構造改革全体への抗議に発展した。パリを含む主要都市での破壊活動は観光や投資に打撃を与え、仏政府が目標とする2018年の実質成長率1.7%の達成が揺らいできた。政権はすでに燃料増税の1年凍結を打ち出し、財政は黄信号。デモ参加者は最低賃金の引き上げを求めるが、安易な譲歩は難しい状況だ。

ルメール仏経済・財務相は10日のラジオ番組で「デモにより10~12月の経済成長が0.1ポイント失われた」と述べた。仏政府は10~12月期に7~9月期比で0.8%の成長を目指しており、これが0.1ポイント低下すると示唆した可能性がある。フランス銀行(中央銀行)は同日、0.4%としていた10~12月期の成長率を0.2%に引き下げた。

蛍光の黄色いベストを着て集まるため「黄色いベスト」と呼ばれる反政府運動は8日もパリのほか南西部ボルドー、南部トゥールーズをはじめとする仏各地の主要都市でデモを展開。パリでは一部が暴徒化し、複数の高級ブランド店などで商品を略奪した。仏内務省によると、全国で約2000人が拘束された。

パリで治安部隊はルーヴル美術館、エッフェル塔など多くの観光名所にデモ参加者が入れないよう封鎖。多くのホテルで予約のキャンセルが相次ぐなど、観光業に大きな影響が出ている。

マクロン氏は10日にパリの大統領府で、労働組合や仏経団連(MEDEF)の代表、上下両院議長らと面会した。実際のデモ参加者の代表は含まれなかったもようだ。事態収拾に向け何らかの案を示し、意見を聞いたとみられる。10日夜(日本時間11日未明)にはテレビを通じ、国民向けに演説する予定だ。

現状でマクロン政権ができる譲歩は限られそうだ。すでに19年1月に予定していた燃料税引き上げは先送りしたため、同年の財政赤字を国内総生産(GDP)比2.8%内に収める目標の達成が微妙になってきた。

デモ参加者は「小さな政府」を目指すマクロン政権の改革そのものに不満を持っている。政権が譲歩するには所得税、社会保障税などの減税や年金支給額の拡充などに踏み切る必要がある。いずれもマクロン氏の改革の軸である財政再建の遅れにつながる。仏の改革が揺らげば、拡張型の19年予算案を作成し欧州委員会に修正を命じられるイタリアなど欧州連合(EU)のルール緩和を求める「欧州懐疑派」を勢いづかせかねない。

「最低賃金の引き上げは雇用を減らす。賢明な対策と思えない」。ペニコ労相は9日、仏テレビで現在約1498ユーロ(約19万円)の最低賃金の上乗せを否定した。

仏国立統計経済研究所(INSEE)によると、17年の同国の実質成長率は2.3%。仏政府は18年の成長率を1.7%と低めに予想するが、それでも一連のデモが起きる前から見込みが甘いと指摘されてきた。デモが今後も続くようだと実現は難しくなりそうだ。

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