/

遊撃手、ライバルが切磋琢磨するその先に

編集委員 篠山正幸

プロ野球のセ、パ両リーグで新しい受賞者が誕生した今年の三井ゴールデン・グラブ賞の遊撃手部門。パ・リーグの源田壮亮(西武)、セ・リーグの田中広輔(広島)が一時代を築いていくのか、前タイトルホルダーが巻き返すのか。高レベルでの切磋琢磨(せっさたくま)が、来季の戦いを早くも待ち遠しくさせる。

パの源田、大差の初受賞

パ・リーグは2年目の源田が219票を獲得、2位のオリックス・安達了一(18票)、3位のソフトバンク・今宮健太(8票)に大差をつけての初受賞となった。

リーグ優勝までのしびれる戦いのなかで、全143試合、フルイニングに出場し、守り抜いた。昨季はイージーなミスも散見され、21個の失策を記録したが、今季は11個のみ。遊撃方面にゴロが転がれば投手は安心、というレベルになってきた。

「ポジショニングを含め、昨年経験したことを生かすことができた」と話す。広島の二塁手、菊池涼介同様、見かけはファインプレーにみえなくても、相手や状況に応じての位置取りでアウトを稼ぐことができた、ということのようだ。

社会人のトヨタ自動車でベストナインにも選ばれ、守備にはもともと定評があった。プロ1年目の昨季のキャンプでは名手として鳴らした辻発彦監督に、足の運び方などの指導を受け「今まで聞いたこともなかった」と戸惑いをみせる場面もあった。だが、辻監督の思いきった登用で、もともと手薄だった西武の遊撃にすっぽりはまり、チームの躍進の立役者の一人となった。

パ・リーグの遊撃手といえば今宮。2013年から昨季まで5年連続でゴールデン・グラブ賞を受賞していた。その壁を破っての受賞だったが、源田は謙虚だった。「今年は今宮さんがけがをして、たまたまチャンスが巡ってきた。(来季)今宮さんも僕も1年けがなくプレーできて、また取れればうれしい」

パの遊撃手といえば今宮。今季は故障の影響で98試合の出場にとどまった=共同

右肘痛、左脚の故障に見舞われた今宮は98試合の出場にとどまった。お互いに元気で、百パーセントの力を出し合って、いざ勝負……。そんな源田の心意気が来季以降の好勝負を期待させる。

源田25歳、今宮27歳。これから数年間、ともに脂の乗ったなかでのバトルとなる。もちろん、そこに第3の存在がからんでくれば、なお面白い。

セは田中、大接戦で初受賞

セ・リーグの遊撃手の得票は大接戦だった。16、17年と連続受賞していた巨人・坂本勇人が96票。それを田中が6票上回り、5年目での初受賞となった。

「センターラインがしっかりしたチームは強いチームといわれるのでうれしい」。ともに6年連続受賞となった二塁の菊池、外野(中堅)の丸佳浩と常々、3人で取れたらいいな、という話をしていたといい、待望の同時受賞となった。

田中は今年も143試合、フルイニング出場を果たし、15年以来の連続出場を568試合に伸ばした。左脇腹痛で離脱するなどした坂本勇は107試合にとどまった。

僅差の勝負の明暗を分けた理由の一つには守備機会の数の差があったことだろう。死球や自打球を当てて、いったんベンチに下がって治療を受ける場面があったが、田中は必ずグラウンドに戻ってきた。

もちろん頑健さで稼いだアウトの数という「量」ばかりではない。守備の質も上がった。15年に22個あった失策が18個、16個と減り、今季は1ケタの7個。

積極的にチャージした結果の失策や、ギリギリのプレーのなかでの送球が走者に当たるといった、ほぼ不可抗力の失策もあるから、一概に個数で判断するわけにもいかないが、守備での落ち着きが年々増しているのは間違いない。

田中は三遊間の打球の処理のうまさも目立った=共同

三遊間の打球の処理のうまさも目立った。「(昨季まで)無理に回り込んで一塁に間に合わないこともあった。(今季は)逆シングルでさばくようにしたのがよかった」と話す。

だいぶ日本でも考え方が変わってきたが、アマチュア球界からプロまで、長らく正面で捕ることが大原則とされてきた。田中もその伝統に従って回り込んでいたのだろう。考えを改めた、と一口にいえば簡単なことだが、体に染みついたものを切り替えるのは並大抵のことではなかったに違いない。

坂本勇を破ったことについて、特段の意識はなく「僕は僕。坂本さんのプレーより、僕がミスをしないということが大事」と話した。

確かに選手としてはシーズン中、ゴールデン・グラブ賞のライバルを意識してプレーすることはないだろう。だが、見る側としてはその対決に興味を抱かずにはいられない。

3年連続受賞はならなかったが、坂本勇もハーフバウンドのグラブさばきや、二遊間にころころと転がった打球の処理などにうならせるものがあり、その動きはまだまだ進化している。

やがて松井さんの後継者に…

セ、パ両リーグの遊撃手部門の高いレベルでの対決が楽しみになる。

さらに、彼らの競争がやがてメジャーで通用する遊撃手を生み出すベースになる、とも期待したい。日本選手にとっての最難関ともいえるメジャーの遊撃というポジションに攻め入った唯一の選手、松井稼頭央さん(西武)が、今季限りで引退した。その後釜となる選手がそろそろ出てこないものだろうか。

初割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン