2018年12月13日(木)

米賃金11月3.1%増 FRB、12月中の利上げ検討
雇用者数15.5万人増

トランプ政権
貿易摩擦
経済
北米
2018/12/7 22:43
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【ワシントン=河浪武史】米労働省が7日発表した11月の雇用統計(速報値、季節調整済み)は、平均時給が前年同月比3.1%伸び、高水準を保った。景気動向を敏感に映す非農業部門の雇用者数も前月比15万5千人増加。雇用環境は底堅く、米連邦準備理事会(FRB)は12月中の利上げを検討する。ただ、貿易戦争で景気不安も浮かび、先行きの金融政策運営には迷いもある。

11月の就業者の伸びは前月(23万7千人)から減速し、市場予想(19万人程度)も下回った。米労働市場は完全雇用に近づいており、人手不足で雇用者の伸びが徐々に鈍化する可能性がある。

物価上昇圧力につながる賃金は緩やかに上向いている。11月の平均時給は27.35ドルと前年同月比3.1%増え、2カ月連続で3%台を維持した。失業率は3.7%と前月と同じだが、1969年以来およそ半世紀ぶりという歴史的な低水準を維持している。

底堅い雇用情勢を受けて、FRBは18~19日に開く次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、年内4回目の利上げを検討する。前回会合の議事要旨には「政策金利の引き上げが近く正当化される」と明記した。そのため、先物市場は既に8割の確率で次回会合での利上げを織り込んでいる。

焦点は19年以降の利上げペースだ。米景気は7~9月期も3.5%という高い成長率を維持し、10~12月期も3%前後の伸びになるとの見方が大勢だ。雇用改善が個人消費を後押しし、序盤の年末商戦も底堅い。そのため、FRBは19年も年3回の利上げを見込み、20年まで金融引き締めを続けて政策金利を現在の2%強から3.5%まで引き上げるシナリオを描いてきた。

ただ、ドル高で輸出が停滞し、貿易戦争の影響で企業の設備投資も鈍化し始めた。米景気は企業部門の逆風と個人部門の追い風が相殺し合う微妙な局面になりつつある。そのため、パウエル議長は「世界経済には減速の兆しがある」などと述べ、ほぼ四半期おきに繰り返す定期的な利上げ路線を見直す考えを示す。FOMCは声明文で「段階的な利上げ」を政策シナリオとして明記してきたが、次回会合でこの文言を削除する可能性がある。

「物価に過熱の兆しはない」(パウエル議長)ことも利上げ路線の見直しにつながっている。FRBが重視する個人消費支出(PCE)物価指数は、食品とエネルギーを除くコアでみると、3カ月連続で目標の2%を下回った。トランプ大統領は「FRBは引き締めすぎだ」と批判を強めるが、FRBも明確に反論しにくくなっている。

もっとも、パウエル議長は利上げペースの減速を明言しない。歯切れの悪さが残るのは、雇用改善と貿易戦争がともに物価の上昇圧力となるからだ。ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は4日に「来年も利上げを続けることが合理的だ」と市場の楽観論を戒めた。

FRBの最悪のシナリオは物価上昇と景気悪化が同時に進行する「スタグフレーション」だ。5日公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)は「投入価格と販売価格がともに上昇している」(ニューヨーク地区)などと関税引き上げを不安視する声が相次いだ。物価上昇のリスクだけでなく、ダラス地区からは「生産の伸びが11月になって顕著に鈍化した」と景気全体の下振れを警戒する声も寄せられた。

パウエル氏は米経済がスタグフレーションに陥れば「金融政策は極めて難しい局面に置かれるだろう」と強く警戒する。貿易戦争が長引けば、金融政策は袋小路に入り込むリスクがある。

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