和平なお遠く イスラエル・パレスチナ溝深まる
米のエルサレム首都認定から1年

2018/12/6 19:00
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【ウィーン=飛田雅則、ワシントン=中村亮】米国のトランプ政権がエルサレムをイスラエルの首都と認定して6日で1年を迎えた。米国は新たな中東和平案の提案を目指しているが、パレスチナでは米国への不信感が募っている。イスラエルはテロや衝突でパレスチナへの強硬姿勢に拍車がかかる。米国のイスラエル寄りの姿勢を象徴する首都認定以降、双方の溝は一段と深まっている。先行きは見通せない状況だ。

「米国はイスラエルの絶対的な自衛権を強く支持している」。ポンペオ米国務長官は3日、ブリュッセルでイスラエルのネタニヤフ首相にこう語り、改めてイスラエル寄りの姿勢を示した。パレスチナ自治区ガザでのデモに銃撃して多数の死者が出てもイスラエルをかばう筋金入りの親イスラエル派だ。

米国の仲介で和平の話し合いを始めた1993年のオスロ合意(暫定自治宣言)で、エルサレムの帰属は当事者の交渉で決めることを原則としてきた。だが、トランプ政権は国際的な批判のなか、2017年12月にエルサレムをイスラエルの首都と認め、18年5月に大使館移転を強行した。

中立性に欠ける米国の姿勢でパレスチナは和平交渉を拒否したが、米国は和平交渉に引き出すため経済・外交での圧力をかけてきた。8月末に国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への資金拠出停止を決定。パレスチナ解放機構(PLO)のワシントン事務所(大使館に相当)の閉鎖を強行した。

首都認定などに憤るパレスチナ自治政府のアッバス議長は9月の国連演説で「米国単独での和平仲介を受け入れない。イスラエルに肩入れする米国に仲介の資格はない」と強調し、和平交渉を拒否する姿勢を示した。米政権中枢に親イスラエル派が多いことも不信感の原因となっている。

交渉の停滞を見越してトランプ氏は、9月末にイスラエルとパレスチナが共存する「2国家解決が望ましい」と発言。「2国家解決にこだわらない」とイスラエルに肩入れしてきた従来の方針を突然覆した。パレスチナに配慮し対話の糸口を探っているという。

ネタニヤフ首相は9月に米メディアに「イスラエルにとって脅威とならないように、非武装のパレスチナ国家を見てみたいと米国に伝えた」と語り、米国にくぎを刺した。「独立国家の治安権限はイスラエルが握る」と、パレスチナにとって受け入れが困難な主張を続ける。

テロやガザでの衝突で右傾化に拍車がかかっている。50代のユダヤ人の男性は「交渉などあり得ない」と語る。イスラエルはトランプ政権が来年初めに和平案を公表すると説明を受けたとするが、来年の選挙での勝利を狙うネタニヤフ氏にとってパレスチナに妥協することはできない。

イスラエル、パレスチナの溝は深まっており、「和平に向けた環境は1年前よりも悪化している」(ワシントンの外交筋)。米国が準備をする和平案は有力な内容になる可能性はゼロに近い。

再交渉のメドさえ立たないパレスチナ問題は、イランとサウジアラビアとの対立などに比べかすんでいるようにみえる。だが、イスラエルと平和条約を結んだエジプトでさえ「パレスチナへの暴力や占領は許せない」(40代男性)との声が聞かれるなど、アラブ諸国では批判は根強い。今後パレスチナが一段と追い込まれれば、怒りに火が付く恐れがある。民衆の心から離れないこの問題は、中東を大きく揺さぶるリスクをはらむ。

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