2018年12月13日(木)

仏、燃料税上げ1年凍結 「富裕税」再導入も浮上

ヨーロッパ
2018/12/6 18:06
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【パリ=白石透冴】フランスのマクロン大統領が進めてきた財政再建に黄信号がともった。2019年1月に予定していた燃料税の引き上げを1年間は凍結する方針を表明し、同年の財政赤字が想定より拡大する可能性が出てきたためだ。目減りする歳入を穴埋めするため、政権内では18年1月に廃止したばかりの「富裕税」の再導入を模索する動きも浮上した。

仏財政の再建にブレーキがかかれば、欧州連合(EU)の財政ルールが揺らぐ可能性もある。拡張型の19年予算案を作成したイタリアのポピュリズム(大衆迎合主義)色が強い政権を勢いづかせかねないためだ。同国はこの予算案をEUの執行機関である欧州委員会に提出したが、赤字削減を強く求められている。

仏大統領府は5日、ガソリンと軽油に対する燃料税の引き上げを19年中は見送ると表明した。4日にフィリップ首相が増税の6カ月延期を発表していたが、これだけでは、痛みを伴う政権の構造改革に不満を持ち、11月中旬から仏各地で反政府デモを繰り返す市民らを抑えることができないと判断した。

仏メディアによると、燃料税の引き上げ凍結などで19年の歳入減は約40億ユーロ(約5100億円)にのぼるとみられる。これは仏国内総生産(GDP)の0.2%に相当するため、19年の財政赤字はこれまで見込んできたGDP比2.8%から膨らみかねない。

EUのルールは加盟国に財政赤字をGDP比で3%以内に収めるよう求めている。フィリップ氏は5日、仏国民議会(下院)での演説で「新しい税金は設けたくないが、次の世代に過剰な債務は残さない」と述べ、財政再建を諦めない姿勢を明確にした。仏国立統計経済研究所(INSEE)によると、同国の政府債務残高のGDP比は6月末現在で99%に達する。

燃料税の引き上げ凍結による税収不足の穴埋めとして浮上したのは、一定額を超える保有資産(有価証券など含む)に課税する富裕税の復活だ。仏政府のグリボー報道官(閣僚級)は5日の仏ラジオで、富裕税の再導入を検討すると表明した。シアパ男女平等問題担当副大臣も同日の声明でこれに同調した。

これに対し、マクロン氏は5日の閣議で「(17年5月の就任から)18カ月間でやってきたことは一切、逆行させない」と述べたと、仏メディアが報じた。現時点で富裕税の復活を否定した格好だ。改革の後退を食い止めようと懸命な様子だ。

富裕税はスイスなどにもあるが、マクロン氏は投資家が仏市場を敬遠する要因になると説明して廃止した。デモ参加者は富裕税の廃止を「金持ち優遇」と批判していた。

マクロン政権の構造改革は「小さな政府」を志向する。欠かせないのは財政再建だ。仏財政赤字のGDP比は16年まで9年連続で3%を超えた。だが、マクロン政権は各省庁に厳しい支出削減を求め、19年も2.8%に抑える方針だった。

さらに歳出を大幅に減らすのは難しそうだ。仏国民は公共サービスの悪化に敏感で、安易に省庁予算を削ればデモ沈静化には逆効果となる。22年までに公務員を12万人減らすのが歳出減に向けた目玉政策だったが、調整に手間取っている。

仏財政赤字が再び増加傾向を強めると、EUの財政ルールのあり方が問われかねない。マクロン氏はドイツとともにEU統合を主導してきたフランスの指導者として、財政面でも各国の手本になろうとしてきた。財政再建でつまずけば、仏国内のポピュリズム勢力が伸長する可能性がある。19年予算案を巡りEUと対立するイタリアのコンテ政権だけでなく、EUルールの緩和を求めるほかの加盟国の声が高まることも考えられる。

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