2018年12月10日(月)

ジャズ参戦 ホールに刺激 クラシック以外のファン誘う(もっと関西)
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2018/12/7 11:30
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クラシック向けの音楽ホールが、ジャズめいている。ピアニストの小曽根真が米国のチック・コリアとのデュオコンサートをいずみホール(大阪市)で開いたのに続き、12月には大西順子がピアノトリオでザ・フェニックスホール(同)に出演。“畑違いの客演"がにぎわう背景には、新たな客層を開拓しようというホール側の狙いもあるようだ。

アンコールで聴衆を「にわか合唱団」に仕立てた小曽根真(左)とチック・コリアのピアノデュオ(10月25日、大阪市のいずみホール)

アンコールで聴衆を「にわか合唱団」に仕立てた小曽根真(左)とチック・コリアのピアノデュオ(10月25日、大阪市のいずみホール)

「次は『スペイン』。大阪の合唱団との新バージョンでやります」

米国の大御所、チック・コリアがアンコールに応えてアナウンスすると、場内は沸いた。チックの代表曲のひとつで、終盤を盛り上げるのに欠かせない。

■小曽根真ら上演

それにしても合唱団? そんな隠し玉が待機していたのかと思ったら、チックの計略だった。曲のたけなわで、短いフレーズを弾き示しては聴衆に「ラララーララ」と反復スキャットを促す。押し問答のように客席を演奏に引きずり込み、ステージが一体化した。

10月25日、いずみホールでの一コマ。中堅の小曽根真とのピアノデュオによるコンサートだ。

クラシックの演奏会では交響曲、協奏曲など、最終楽章が終わるまで拍手は原則としてご法度。オペラで合唱の直後など、熱唱をたたえ拍手が湧くこともあるが、むしろ例外的だ。一方、盛り場で成長したジャズは、即興がよければ演奏中でも歓声や拍手が上がる。

小曽根真とチック・コリアのデュオコンサートは、いずみホールに普段と異なる空気をもたらしたようだ。とはいえ、ホール側はこれを、必ずしも好ましからざる情景とは見ていない。

「もちろん来館客の大半はジャズ愛好家でしょう。ただ、クラシック以外のファンにも、楽しさの記憶と重ねてこんなホールがあると認識してもらうことは、リピーターづくりに向けて大切」。いずみホールで制作を担当する梅垣香織・企画部課長代理は語る。

ジャズ畑出身の小曽根は大編成のフルバンドも率いるかと思えば、ピアノトリオで演奏することもある。近年はクラシックで交響楽団に客演することも増えており、活動領域は多彩だ。

ただ、2010年からほぼ毎年出演を重ねているいずみホールに限れば、音響特性を考慮し、たいていは2人どまりによる室内楽向きの編成で臨んでいる。

821席という中規模のいずみホールにとって、興行リスクと採算をにらみながらのプログラムづくりには神経を使う。ジャズの定評に加えてクラシックファンにも訴える小曽根の魅力は、ホールにとっても出演者リストの幅と層を広げる狙いにかなうようだ。

■「違う客層歓迎」

大阪市のザ・フェニックスホールで12日、ピアノトリオを組む大西順子は「クラシックホールとの意識は特段ない」と話す

大阪市のザ・フェニックスホールで12日、ピアノトリオを組む大西順子は「クラシックホールとの意識は特段ない」と話す

いずみホールと並んでクラシックが主流のザ・フェニックスホール(大阪市)には12月12日、ピアノの大西順子がドラムス(高橋信之助)、ベース(井上陽介)によるトリオで出演する。こちらはホールの自主公演ではないものの、やはり「いつもと違った客層が来場するのは歓迎」(広報担当)という。

米大物奏者の伴奏経験が豊富な大西には、ニューヨークのジャズクラブ、ビレッジ・バンガードで自身のトリオによるライブ録音作品がある。いわば大西は本流ジャズ文化の申し子。

客席数301のザ・フェニックスホールは大西にとって初出演だが「クラシックのホールだから、と特段意識して静かな曲編成にするつもりはない。300席はビルボードライブ大阪でも同規模ですし」と気負いを見せない。中低音にメリハリを利かせた大西らしいステージになりそうだ。

「CD不況と言われる今日、お客さんはどんな曲を聴きたがっているのか、手応えで確かめる意味でも、ライブは重要」(大西)。ジャズ奏者にとってライブの比重が高まるなか、定番のクラブにとどまらずホールの垣根を越え出演機会を広げる傾向は一段と強まりそうだ。

(編集委員 岡松卓也)

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