2018年12月12日(水)

慶大、人の腸「ミニ組織」で再現 新陳代謝で長期維持

ヘルスケア
科学&新技術
2018/12/7 1:00
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慶応義塾大学の佐藤俊朗教授らは人の腸管にある幹細胞を体の外で培養し、実物に近い立体的な「ミニ組織」を作る技術を開発した。人の腸管組織にあるたんぱく質から最適な組み合わせを見つけて、生体内に近い培養環境を再現した。細胞の新陳代謝が続いて組織を長く維持できた。培養皿上で、薬の候補物質の効き目などを長期にわたり調べられるようになる。

作製した腸管上皮のミニ組織(慶大の佐藤教授提供)

研究成果は7日、米科学誌セル・ステム・セル(電子版)に掲載される。

腸は食物の消化吸収などをする器官で、その働きの多くを腸の内壁の表面部分にある「腸管上皮」が担っている。腸管上皮には細菌のバリアーとなる粘液の分泌や、食欲や腸管の働きを調整するホルモンの分泌などさまざまな機能が備わっている。それぞれの役割を担う細胞があるが、長くて約3週間で死に、老廃物として排出される。

腸管上皮の幹細胞が増え、上皮のさまざまな細胞に育つことで新陳代謝を維持する。幹細胞は継続的に変化し、自身も枯渇を防ぐために複製する。研究チームはこれまでに人の腸管上皮細胞でミニ組織を作ることに成功していたが、新陳代謝を再現できないため1週間ほどで機能を失ってしまい、長く維持できなかった。

今回、幹細胞の働きを促すたんぱく質を見直すなどして培養条件を工夫した。従来の培養手法で使っていた特定のたんぱく質が細胞の変化を邪魔していることに着目。代わりに人の腸管組織にある10種類のたんぱく質の中から、生体内に近い環境を培養液で再現できる組み合わせを探した。

その結果、成長ホルモンの一種である「IGF―1」と、細胞の増殖を促す「FGF―2」の2つのたんぱく質が腸管の維持に深く関わっていることを突き止めた。

これまでの手法で使っていた特定のたんぱく質をこれら2つに置き換えたところ、幹細胞が増え続け上皮のさまざまな細胞に育った。作製した腸のミニ組織を電子顕微鏡や遺伝子解析で調べると、人の腸管上皮細胞のほとんどを再現できていた。

ミニ組織に既存薬をかけると人と同じように作用することを確認した。実験では最低でも1年以上、腸管上皮としての機能を維持できた。長く維持できるミニ組織を実験で使えば、薬の候補物質が体内で吸収される過程や、効き目などを長期間追跡できる。動物実験に頼らず、毒性確認や遺伝子解析などが簡単にできる可能性もある。

チームは今後、腸内細菌や線維芽細胞の再現も目指す。

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