2018年12月19日(水)

米、関税に不安広がる 連銀報告「値上げ」「生産減速」

トランプ政権
貿易摩擦
経済
北米
2018/12/6 8:42
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【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)は5日発表した地区連銀経済報告(ベージュブック)で、トランプ政権の関税引き上げで「景気への楽観論が一部で後退している」と指摘した。各連銀からは「値上げが供給網で拡散している」「生産が減速している」など懸念の声が上がった。物価上昇と景気減速が同時進行で進めば、FRBにとって金融政策運営のハードルが高まる可能性がある。

同報告は全米の12地区連銀が最新の経済報告を取りまとめて提出したもので、18~19日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の討議資料となる。米経済全体に関しては「大半の地区で緩やかに拡大した」との判断を示す一方、「関税や金利上昇、人手不足によって景気への楽観論は弱まっている」と指摘した。

トランプ政権は2500億ドル分の中国製品に制裁関税を課し、鉄鋼やアルミニウムへの追加関税も解いていない。各地区からは「投入価格と販売価格がともに上昇している」(ニューヨーク地区)など、物価上昇を懸念する声が相次いだ。足元で消費者物価の顕著な上昇はみられないが、「19年中に消費者価格に転嫁する」(ボストン地区の小売業者)との指摘があった。

関税引き上げが企業業績を下押しする懸念も強まっている。「金属価格の上昇は製造業と建設業の痛手」(クリーブランド地区)との声があったほか、運輸業者からも「関税を課せられた中国製の部品が値上がりした」との指摘が寄せられた。

米経済は7~9月期に3%を超える成長率を記録し、各連銀からも「製造業の需要は力強い」(クリーブランド地区)との声が相次いだ。ただ、その要因として「関税引き上げ前の駆け込み需要がある」(リッチモンド地区の家具業者)との指摘も少なくない。「駆け込み需要で自動車輸入が増えているが、数カ月後には減退する」と警戒する声もあった。

人手不足も米景気の先行きに影を落としている。失業率は約48年ぶりの水準に下がり、「多くの企業が労働者を補充できていない」(フィラデルフィア地区)。セントルイス地区の製造業は「人手不足で受注を断った」という。トランプ政権が移民流入を制限し始めており「ビザが取得できず熟練労働者を失った」(ニューヨーク地区)との声もあった。

米経済は10~12月も3%前後の高い成長率が続くとの予想が大勢だ。ただ、ダラス連銀は「生産拡大が11月に入って顕著に鈍化した」と景気が転換点に達しつつあることをにじませる。

FRBは18~19日のFOMCで年内4回目となる利上げを検討する。フィラデルフィア地区の人材派遣会社が「賃上げ率は年6.5%まで高まった」と報告するなど、賃金と物価に上昇圧力がかかっているためだ。

ただ各地区からは利上げで住宅投資や自動車販売が鈍化したとの指摘も相次いでおり、FRBは物価上昇と景気悪化が同時に起きる「スタグフレーション」を警戒する必要も出てきた。

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