ソフトバンク株のイロハ 投資の注意点は?
ソフトバンクグループの通信子会社ソフトバンク(SB)が19日に東京証券取引所に上場する。新規株式公開(IPO)に伴って売り出される株式の金額は、最大2兆6000億円強と日本では過去最大。このうち9割は国内で売り出され、その中心を担うのが個人投資家だ。ソフトバンク上場のテレビCMも頻繁に流れ、上場を機に投資を始めてみようという投資未経験の個人も少なくないとみられる。ソフトバンク株のイロハを改めて整理してみよう。
上場のニュースに触れて、「ソフトバンクはすでに上場しているのでは」と疑問に思った人もいるだろう。今回上場するソフトバンク(SB)は、東証1部に上場しているソフトバンクグループ(SBG)の100%子会社だ。グループの国内における中心的な事業会社で、携帯電話「ソフトバンク」など通信事業を主に手がけている。
今回の上場で、SBGは保有するSB株のうち最大で約17億6400万株(37%弱)を売り出す。売り出し額は最大で約2兆6000億円と、1980年代後半のNTT(約2兆3000億円)を上回り国内最大になる見通しだ。
SBGは上場で通信子会社の経営を独立させると同時に投資会社としての性格を強める。これまで投資家はSBGの孫正義会長兼社長が世界の有力なIT(情報技術)企業に次々と資金を投じる投資事業と、国内通信の安定性を一緒に評価するしかなかったが、今後はこれをわけて投資の判断をすることが可能になる。
SB株の投資の基本的なポイントは?
では実際にSB株への投資を検討する個人はどうしたらいいのか。上場前の株式を購入するには、まずは販売を担当する証券会社に口座を持つ必要がある。
取引所のホームページに掲載される「新規上場会社概要」で、該当する証券会社をチェックできる。国内最大となるSB株は、野村証券や大和証券など大手証券のほか、ネット証券や中堅証券など多くの証券会社が取り扱う。
個人投資家は最低いくらから投資できるのか。IPO株は100株単位で購入できる。SB株は1株1500円で売り出されることがほぼ確実だ。つまり最低の投資額は15万円からということになる。
ただ今回はさらに小口の販路も用意されている。みずほ証券は販売の一部をスマートフォン専業証券ワンタップバイ(東京・港)に委託し、最低1株1500円から購入できるようにする。もっとも1単元(100株)には満たないため、株主総会で取締役の選任を決める際に必要な議決権を得ることができない点は注意したい。
企業は取引所から上場承認を受けると「目論見書」を出す。事業モデルや各種のリスクも記載してあるので、購入を検討する際にはきちんと目を通しておこう。
SBの2019年3月期の連結売上高は前期比3%増の3兆7000億円、純利益は5%増の4200億円の見込み。目論見書では事業のリスクとして「市場環境の変化」や「他業界からの新規参入」などが挙げられている。主力の通信事業では値下げ圧力が強まっており、楽天参入による競争激化も懸念される。
SB株の購入スケジュールは?
SB株の購入を希望する投資家は、12月3~7日までの需要申告(ブックビルディング)期間中に証券会社に申し出る必要がある。知名度の高い企業のIPOは人気が高く、抽選になるケースも多い。日本郵政グループ3社の上場では売り出し株数の5~10倍。今年6月に上場したメルカリは個人の倍率が50倍を超えた。
SB株については過去最大規模の売り出しだけに「倍率は1桁前半にとどまるのではないか」との声もある。今後の需要次第だが、単純な当選確率は過去の人気銘柄に比べて高くなる可能性もある。
この投資家の申し込み状況にもとづき、来週10日に最終的な売り出し価格が決定する。その後、抽選に当選した投資家は11~14日の申込期間中に購入代金を証券会社に入金。19日の上場日にSB株を受け取って株主となる。
SB株は成長株?
市場ではSB株について、成長株というよりは「安定配当株」として注目する向きが強い。販売を担当する証券各社は「配当利回り5%」をうたい文句に、顧客に営業をかけているようだ。
配当利回りは1株を買ったときに何%が年間の配当で戻ってくるかという指標。売り出し価格1500円をベースにするとSBの予想配当利回りは5%程度となりそうで、NTTドコモ(4.3%)やKDDI(3.8%)を上回る。もっとも株を配当利回りだけで評価するのは危険だ。仮に配当額が安定していても、株価が急落してしまえば投資で損失が出る。金利収入が得られ、満期まで保有していれば全額が償還される債券投資とはリスクがまったく異なることにも注意したい。
上場初日の注目点は?
いよいよ上場当日。最初につく株価が「初値」だ。知名度が高いIPO銘柄は高い需要から、初値が公開価格(売り出し価格)を上回ることが多い。SB株の場合、売り出し価格として想定される1500円を超えるかどうかが注目点になる。
IPOでは初値が高騰するケースが少なくなく、これを狙って上場前に購入した株をすぐに売却して利益を得ようとする短期志向の個人も多い。ただSB株は規模が大きいだけに、新興企業のIPOなどに比べて、短期的に株価が大きく変動する可能性はやや低いかもしれない。配当を重視するなら、日々の値動きだけに目を奪われず、長期保有を前提にした方がいいだろう。
SBの宮内謙社長は「成長戦略と株主還元を両立していく」と強調する。安定配当はもちろん、「成長戦略」の面で投資家の期待を高めることができるかが、上場後の株価を占うポイントとなりそうだ。