これぞ台の下の力持ち、三菱重など「H3」ロケット移動台

三菱重工業と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は5日、2020年から稼働させる次期基幹ロケット「H3」向けの新しい移動運搬台を公開した。全長約63メートルのH3ロケットを載せ、大型ロケット組み立て棟から発射点までの約500メートルを移動する。停止の精度は前後左右25ミリメートルといい、世界最高水準の打ち上げ成功率を支える「台の下の力持ち」ともいえる。
新しい移動運搬台は、三菱重工が詳細の仕様を設計し、日本車両製造が製造した。車体は全長25.4メートル、全幅は3.3メートル、高さは2.84~3.44メートル。2台の車体が並走してH3を運ぶ。2台並走時の積載能力は1460トンに達する。
車体のデザインは、国産初の民間ジェット機「MRJ」のデザインを手掛けた三菱重工先進デザインセンターが監修した。「強固感」や「安定感」を造形で演出し、基調色にはJAXAのコーポレートカラーであるブルー、宇宙空間を連想させるブラック、先進性や未来感を感じさせるホワイトの3色を採用した。
H3ロケットは種子島宇宙センター(鹿児島県南種子町)の大型ロケット組み立て棟内で、移動発射台の上で組み立てられて整備される。移動運搬台は整備を終えたロケットを移動発射台ごと持ち上げて、射点まで運ぶ。約500メートルの区間を約30分かけて移動する。最後に射点で燃料を充填し、打ち上げる流れだ。
現行の基幹ロケット「H2A」「H2B」は天候不順などがない限り、予定通りに打ち上げを行う「オンタイム打ち上げ」で世界最高水準の実績をもつ。オンタイム打ち上げの実現には、H3ロケットを安全かつ正確に射点に運ぶ必要があり、移動運搬台は重要な役割を担う。停車位置がずれると、燃料充填などの最終仕上げ作業遅れなどに直結するという。
新型の移動運搬台は移動の安全性を高めるため、ディーゼル発電機や油圧ポンプ、車体制御などの重要機能部品で予備ももたせた。運搬中に故障しても30分以内に復旧できるようにした。
2019年1月に種子島宇宙センターに出荷し、組み立て整備をした後、19年5~6月にも現地で試験を始める。H3ロケットの開発は20年の試験打ち上げに向けて開発が大詰めを迎えている。移動運搬台などH3に関する主要設備の新設・改修も佳境に入る。
(星正道)
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