2018年12月19日(水)

英議会、「侮辱」動議可決 EU離脱案に猛反発
無秩序離脱に市場も警戒

Brexit
ヨーロッパ
2018/12/5 18:37 (2018/12/5 22:15更新)
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【ロンドン=中島裕介】英国と欧州連合(EU)で合意した離脱案の審議が、英議会で4日始まった。離脱交渉を巡る文書の情報公開を求める動議など2件で与党議員が造反し、メイ政権の意に反して可決された。メイ首相の求心力の低下は深刻で、離脱案自体にも与党から100人を超える造反が出るとみられ、離脱案の可決は難しくなってきた。金融市場でも無秩序離脱への警戒感が広がり始めた。

4日、英首相官邸を出発するメイ首相(ロンドン)=ロイター

「もし議会が否決すれば、我が党は内閣の不信任動議を提出する」。野党第1党・労働党のコービン党首は4日の下院の審議でメイ氏に予告した。メイ氏は「完璧な離脱を追求しすぎて良い離脱を妨げてはならない」と、妥協に理解を求めるのがやっとだった。

メイ氏は先週以降、地方も含めて国内での離脱案のPRを強化した。だが「EUの政策に関与できないのに、EUルールに縛られ続ける」との懸念は与野党に広がる。

離脱案の可決には、下院の実質過半数である320人をメイ氏が確保できるかが勝負になる。与党議員は324人だが、地元メディアは保守党90~100人、政権に閣外協力する民主統一党(DUP)10人が造反すると分析する。野党の一部が賛成しても可決は遠い。

審議初日の4日には、否決の予測を裏付ける事態が起きた。

議会はメイ首相が離脱交渉で参考にした法務長官からの法的助言の文書を全て公開するように要請した。しかし政権側が概要版しか出さなかったため、野党は「政府の議会への侮辱」とみなす動議を提出した。DUPや保守党の一部が造反して動議を可決し、「議会への侮辱」が認定された。英政府は5日、動議に基づいて助言の全面公開を迫られた。

さらに11日に離脱案が否決された場合、その後の手続きで議会の発言権を強めるよう求める動議も政権の意に反して可決された。この動議は保守党のEU残留派が野党を巻き込んで提案したもので、メイ政権が与党内を掌握できていないことが浮き彫りになった。

この動議可決で、離脱案の否決後に政府が示す代替案に、議会が修正案を出したり意見表明をしたりして影響力を行使できるようになった。「政府が合意を諦めて無秩序離脱に走ったときの歯止めになる」との前向きな評価もあるが、混乱が続く議会側の権限が強まるリスクも大きい。

離脱案が否決されたらどうなるのか。政府は否決後、21日間以内に代替案を示すルールだ。離脱案の修正や2回目の国民投票、離脱期限の延期など、様々な対案が予想される。反対派自体がEU残留派や強硬派などに割れており、過半数が賛同する代替案をつくるのは至難の業だ。

仮に代替案ができてもEUとの再交渉で折り合えるとは限らない。経済が混乱する「合意なし離脱」のリスクは高まる。

合意なし離脱を回避する手段はあるのか。EU司法裁判所の法務官は4日、他の加盟国の同意がなくても英国が一方的に離脱を撤回できるとの見解を示した。ただメイ氏は、離脱撤回のための国民投票の再実施は「国を悪い形で分断させる」と否定した。

離脱案採決後の道筋が見えないなか、金融市場は警戒感を強める。安全資産である国債に資金が流れ、英長期金利は10月前半から低下(国債価格は上昇)した。米国株・国債市場にも影響が広がり、世界のマーケットの波乱要因になっている。

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