2018年12月12日(水)

茶粥 紀州のソウルフード、水多め 重税に耐える知恵(もっと関西)
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関西
2018/12/6 11:30
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和歌山に昨年、赴任して、驚いた。米をお茶で炊いた茶粥(ちゃがゆ)を味わえる店が和歌山県の全体で多いのだ。自宅で調理するためなのか、地元のスーパーでは茶粥用のティーバッグまで扱っている。奈良の郷土料理として知られる茶粥。和歌山でも親しまれている理由を探った。

「ホテルアバローム紀の国」で提供している紀州茶粥御膳(和歌山市)。お米が隠れるぐらいお茶を入れるのがよいとされている

「ホテルアバローム紀の国」で提供している紀州茶粥御膳(和歌山市)。お米が隠れるぐらいお茶を入れるのがよいとされている

県庁近くのホテルアバローム紀の国。和食の「割烹(かっぽう)六つ葵」のランチメニューにあるのが「紀州茶粥御膳」だ。

蓋を開けると、ほうじ茶がたっぷり入り、ご飯を覆っている。かむと、米の甘さと茶の香ばしさが絶妙に絡み合う。和歌山名物の金山寺味噌や梅干しなどと合わせると、アクセントになってさらに食が進む。

津田忠昭調理長は「1日6食限定だが、たいてい完売する。地元の年配の方の注文が多い」と話す。同店の茶粥のシャーベットは持ち帰り用にも人気だ。

カフェテリア方式の食堂チェーン「めし処いも膳」。和歌山県の5店と大阪府の4店で、茶粥を出している。運営する藤本食品(和歌山県岩出市)によると、1店あたり1日20~40食が売れるという。

スーパーのオークワ(和歌山市)では茶粥用ティーバッグを扱う。自宅で試してみた。鍋に湯を沸かし、この中に入れてみる。頃合いを見計らって取り出し、しばらく放置し、鍋を冷ます。冷えたら米を入れて30分ほどお茶につけ、後は炊くだけ。茶葉を取り除く手間を省くことができ、とても簡単にできた。

「和歌山では、地域によってごく普通に各家庭で食べられており、家庭ごとにレシピも違う」。食物栄養が専門の和歌山信愛女子短期大学(和歌山市)教授、堺みどりさんは説明する。使うお茶は番茶や、ほうじ茶。入れる具材は芋や豆。チャーハンにかける食べ方まであるらしい。

堺さんらは1997年に和歌山県内を調査。山間部では番茶が、平野部ではほうじ茶が使われている傾向が分かった。堺さんは「山間部では自家栽培したお茶の葉を使ったため番茶で炊き、平野部では商品流通が多かったため、(加工された茶葉である)ほうじ茶が使われた」と推測する。

なぜ、和歌山で茶粥がソウルフードと言えるほど愛されているのだろうか。堺さんは「江戸時代、紀州藩の庶民の貧しさがあった」と指摘する。

藩主が徳川御三家の紀州藩は石高55万5000石を誇ったが、年貢は重かった。茶粥の歴史を考察した「紀のくに文化考 茶がゆの風土」(千万卓丈著)によると、租税率が8割を超えた地域もあったという。

厳しい生活を強いられた農民が、少ない米で腹を満たすために編み出したのが茶粥だったようだ。だから「顔が映るくらいがちょうど良い」とされるほど、茶の量が多い。堺さんは「これも水分を多くして一時的にしろ満腹にした農民の工夫だった」と推測する。

和歌山市内で開催された茶粥の食べ比べイベントで提供された付け合わせ

和歌山市内で開催された茶粥の食べ比べイベントで提供された付け合わせ

一方、当時の農民はおいしく食べるかにも知恵を絞り、多彩なレシピを生み出した。「紀のくに文化考」の著者も「長い歳月をかけて、多くの人々が考え考えて、ようやくたどりついた結果だろう」と、その苦労をたたえている。

今年、茶粥を食べ比べるイベントが開かれた。企画したのが、和歌山市の会社員、長戸千紘さん(25)だ。友人と5~6種類を提供。来訪客からもレシピの情報提供があった。長戸さんは「冷や飯に茶粥をかける、という食べ方を教えてもらい驚いた」と話す。

貧しさゆえに庶民のソウルフードとなった紀州の茶粥。今や食文化の豊かさを示す象徴にも見える。(和歌山支局 細川博史)

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