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茶粥 紀州のソウルフード、水多め 重税に耐える知恵(もっと関西)

とことんサーチ

和歌山に昨年、赴任して、驚いた。米をお茶で炊いた茶粥(ちゃがゆ)を味わえる店が和歌山県の全体で多いのだ。自宅で調理するためなのか、地元のスーパーでは茶粥用のティーバッグまで扱っている。奈良の郷土料理として知られる茶粥。和歌山でも親しまれている理由を探った。

県庁近くのホテルアバローム紀の国。和食の「割烹(かっぽう)六つ葵」のランチメニューにあるのが「紀州茶粥御膳」だ。

蓋を開けると、ほうじ茶がたっぷり入り、ご飯を覆っている。かむと、米の甘さと茶の香ばしさが絶妙に絡み合う。和歌山名物の金山寺味噌や梅干しなどと合わせると、アクセントになってさらに食が進む。

津田忠昭調理長は「1日6食限定だが、たいてい完売する。地元の年配の方の注文が多い」と話す。同店の茶粥のシャーベットは持ち帰り用にも人気だ。

カフェテリア方式の食堂チェーン「めし処いも膳」。和歌山県の5店と大阪府の4店で、茶粥を出している。運営する藤本食品(和歌山県岩出市)によると、1店あたり1日20~40食が売れるという。

スーパーのオークワ(和歌山市)では茶粥用ティーバッグを扱う。自宅で試してみた。鍋に湯を沸かし、この中に入れてみる。頃合いを見計らって取り出し、しばらく放置し、鍋を冷ます。冷えたら米を入れて30分ほどお茶につけ、後は炊くだけ。茶葉を取り除く手間を省くことができ、とても簡単にできた。

「和歌山では、地域によってごく普通に各家庭で食べられており、家庭ごとにレシピも違う」。食物栄養が専門の和歌山信愛女子短期大学(和歌山市)教授、堺みどりさんは説明する。使うお茶は番茶や、ほうじ茶。入れる具材は芋や豆。チャーハンにかける食べ方まであるらしい。

堺さんらは1997年に和歌山県内を調査。山間部では番茶が、平野部ではほうじ茶が使われている傾向が分かった。堺さんは「山間部では自家栽培したお茶の葉を使ったため番茶で炊き、平野部では商品流通が多かったため、(加工された茶葉である)ほうじ茶が使われた」と推測する。

なぜ、和歌山で茶粥がソウルフードと言えるほど愛されているのだろうか。堺さんは「江戸時代、紀州藩の庶民の貧しさがあった」と指摘する。

藩主が徳川御三家の紀州藩は石高55万5000石を誇ったが、年貢は重かった。茶粥の歴史を考察した「紀のくに文化考 茶がゆの風土」(千万卓丈著)によると、租税率が8割を超えた地域もあったという。

厳しい生活を強いられた農民が、少ない米で腹を満たすために編み出したのが茶粥だったようだ。だから「顔が映るくらいがちょうど良い」とされるほど、茶の量が多い。堺さんは「これも水分を多くして一時的にしろ満腹にした農民の工夫だった」と推測する。

一方、当時の農民はおいしく食べるかにも知恵を絞り、多彩なレシピを生み出した。「紀のくに文化考」の著者も「長い歳月をかけて、多くの人々が考え考えて、ようやくたどりついた結果だろう」と、その苦労をたたえている。

今年、茶粥を食べ比べるイベントが開かれた。企画したのが、和歌山市の会社員、長戸千紘さん(25)だ。友人と5~6種類を提供。来訪客からもレシピの情報提供があった。長戸さんは「冷や飯に茶粥をかける、という食べ方を教えてもらい驚いた」と話す。

貧しさゆえに庶民のソウルフードとなった紀州の茶粥。今や食文化の豊かさを示す象徴にも見える。(和歌山支局 細川博史)

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