2018年12月12日(水)

中国、所得課税強化の皮算用(The Economist)

中国・台湾
The Economist
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2018/12/5 2:00
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The Economist

「もちろん払っていませんよ。私はバカじゃありませんから」。個人所得税を納めたことがあるかと聞かれて、北京の運転手リュウ・ヨンリ氏(仮名)はこう答えた。同氏の所得は納税が免除される水準を大きく超えているが、税逃れをしていてもとがめられたことはない、としゃあしゃあと語った。

中国で2015年に個人所得税を納めた国民は全人口の2%にすぎない=AP

中国で2015年に個人所得税を納めた国民は全人口の2%にすぎない=AP

中国の昨年の全税収に占める個人所得税収は、わずか8%にとどまった。彼のような強い思い込みをしている人が少なくないことがその一因かもしれない。ちなみに一定規模の経済国家のグループである経済協力開発機構(OECD)加盟国における個人所得税収の全税収に占める比率の平均は24%だ。

中国財政省の推計では、個人所得税を納めるべき国民は1億8700万人に上る。だが2015年に実際に個人所得税を納めたのは2800万人と全人口の2%にすぎないと財政省のある元職員は言う。中国政府は現在、中国共産党機関紙「人民日報」によれば歴史的に「最も抜本的」な個人所得税改革を進めている。だが、その抜本改革は理論的には税収基盤を拡大するのではなく、縮小するものだ。

10月1日から所得税の課税最低限を月収3500元(約5万7000円)から5000元に引き上げたのだ。この結果、財政省は課税対象者が6400万人に減ると見込んでいる。その一方で、財政省は、納税義務が生じる国民には確実に納税させる決意を固めているようだ。政府のこの方針転換は、政治的に極めて大きな意味を持つ可能性がある。

■范冰冰(ファン・ビンビン)さんの脱税も一因

今夏、有名女優の范冰冰(ファン・ビンビン)さんの脱税が判明したことも中国政府が個人所得税を見直す一因といわれる=Sipa USA・AP

今夏、有名女優の范冰冰(ファン・ビンビン)さんの脱税が判明したことも中国政府が個人所得税を見直す一因といわれる=Sipa USA・AP

中国政府は所得税改革に、数年前から取り組んできた。今夏、中国で最も有名な女優、范冰冰(ファン・ビンビン)さんが業界関係者に内部告発され、3億元近く脱税していることが判明したことも、所得税の早急な改革の必要性を高めた可能性がある(彼女は最終的に、追徴課税や罰金を合わせて8億8400万元の支払いを命じられた)。

所得税改革に対する一般国民の関心は非常に高い。中国政府が所得税改革について7月に「意見を募った」ところ、13万件を超えるコメントが寄せられた。全国人民代表大会(全人代、国会に相当)は、新たな法律を承認する前に国民から意見を公募することが法律で義務付けられている。今回の公募には、通常の平均の約100倍に上るコメントが集まった。

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